シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

邦画

赤飯と菅原文太   深作欣二『現代やくざ 人斬り与太』(1972年)

『現代やくざ』シリーズは菅原文太が主演していることをのぞけば、各作品に時系列的なつながりはありません。監督もころころ変わります。 本作はシリーズ第5弾で、『仁義なき戦い』でおなじみの深作欣二がメガホンをとっております。 深作監督作品を筆頭とす…

岡本喜八特集!!

本日は邦画史に名を残す名監督・岡本喜八を紹介したいと思います! 名前はなんとなく聞いたことがあるけど…という方でも安心。 代表作は観たことある、という方は素晴らしい。 全部観たよ! という方はもっと素晴らしい。 皆様この機会に、クリエイターにもフ…

野坂昭如の歌が響いて・・・  『現代やくざ 血桜三兄弟』(1971年)

本日は菅原文太主演『現代やくざ』シリーズの4作目、中島貞夫監督の『現代やくざ 血桜三兄弟』を取り上げたいと思います! 血桜三兄弟とはこれまた素敵なタイトルでございまするが、これは菅原文太、伊吹吾郎、渡瀬恒彦の三人を意味しております。文太と吾郎…

慕情は国を越えて   鈴木則文『まむしの兄弟 恐喝三億円』(1973年)

本日は『まむしの兄弟』シリーズから6作目の『恐喝三億円』を取り上げたいと思います! ちなみに『恐喝』と書いて『かつあげ』と読むみたいです。 かつあげで三億円なんて景気がいいったらありゃしないですね!(どうやら映画公開の5年前にいわゆる三億円事…

鈴木則文の演出術   菅原文太主演『関東テキヤ一家』(1969年)

今回はこの後に『トラック野郎』シリーズを生み出すことになる、菅原文太と鈴木則文監督のコンビによる『関東テキヤ一家』シリーズの1作目をご紹介! 関東テキヤ一家 [DVD] 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 発売日: 2009/07/21 メディア: DVD ク…

昭和十年、東京にて。  中島貞夫『まむしの兄弟 懲役十三回』(1972年)

『まむしの兄弟』シリーズの3作目。監督は中島貞夫。なぜか舞台を昭和十年に移し製作された作品です! 主な登場人物 政(菅原文太)・・・まむしの兄弟。 勝(川地民夫)・・・まむしの兄弟、弟分。 弥之助(天知茂)・・・浅草菊村一家の代貸(だいがし)。…

おかめ横丁戦争   中島貞夫『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』(1972年)

今日は中島貞夫監督作品『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』を取り上げます。『まむしの兄弟』シリーズの4作目となります。 主な登場人物 ・政太郎(菅原文太)・・・「まむしの兄弟」。政太郎。 ・勝次(川地民夫)・・・「まむしの兄弟」。不死身の勝。政をア…

解釈しても藪の中?/黒澤明「羅生門」

果たして真実は何だったのか。 芥川龍之介による「藪の中」を原作にした澤明の傑作映画の一つ「羅生門」は、人間の業を見事に描いている作品です。 一人の男が殺され、現場にあったはずの高価な短刀が失われた。 その変えられない客観的な事実があるものの、…

おかあやんとヤサグレのジュン  『まむしの兄弟 二人合わせて30犯』(1974年)

今日は菅原文太・川地民夫主演の人気シリーズ『まむしの兄弟』の7作目『二人合わせて30犯』(1974年公開)を取り上げてみたいと思います! 監督は大物監督の工藤栄一。脚本は鴨井達比古が担当しています。 まむしの兄弟 二人合わせて30犯 [DVD] 出版社/メー…

文太と由美子、その悲恋のゆくえ  佐伯清『現代やくざ 盃返します』(1971年)

今回は菅原文太主演、佐伯清監督『現代やくざ 盃返します』(1971年)を取り上げます。 『現代やくざ』シリーズは菅原文太の代表作の一つです。とはいえ、あまりヤクザ映画に興味のない方、あまり観たことない方は聞きなじみのないシリーズだと思われます。…

夜桜銀次、死神を背負う男  『山口組外伝 九州進行作戦』(1974年)

大変、お久しぶりです。ニャロ目です。 今回は菅原文太主演、山下耕作監督の1974年の東映実録路線の傑作である『山口組外伝 九州進行作戦』を取り上げたいと思います。 長らくソフト化が待たれていましたが、山口組の最近の騒動を知ってかしらずか、2015年に…

犯罪映画!貴方の隣の瀧とリリー/白石和彌監督 映画「凶悪」

実際の事件を元にした映画というものは、映画界に数多く存在します。 有名どころでいえば、緒形拳主演の「復讐するは我にあり」は、あまりに知られた作品ではないでしょうか。 西口彰事件をもとに作られた小説「復讐するは我にあり」の映画化であり、カトリ…

「古典名作入門 立場の異なる男たち/黒澤明「七人の侍」

世界のクロサワを代表する作品の一つといえば、「七人の侍」をあげない人はいないことでしょう。 3時間を20分にも及ぶ上映時間ながら、その長尺を感じさせないつくりは、何十年経っても古びることはありません。 そんな、歴史的傑作である「七人の侍」で…

悲しんだ後にみる映画 お葬式映画3選/おくりびと・お葬式・東京物語

photo by Hyougushi 「映画は人生の予行練習」という見方があります。 映像と音、ストーリーが渾然一体となって語られる中には、人間が体験するであろう様々なことがつくりだされ、また、決して体験できないであろうことも映画では語られます。 その中で、人…

あなたも稲塚を食べている/NORINTEN 稲塚権次郎物語

稲塚権次郎という人物を知っている人はどれほどいるでしょうか。 知っている人は知っているけれど、知らない人は聞いたこともない。 稲塚権次郎氏は、米で言えばかつて高級な米の代名詞ともいわれた「コシヒカリ」のもと「水稲1号」をつくりだし、小麦にい…

現代風にアレンジされた「正統な」ヤクザ映画  北野武『龍三と七人の子分たち』

2015年現在、北野武最新作である『龍三と七人の子分たち』をDVDで観賞しました。『アウトレイジ』前後からエンターテインメントを志して映画製作を続けてきた北野監督。本作品の見どころを紹介します。 龍三と七人の子分たち [DVD] 出版社/メーカー: バンダ…

増毛駅よ、永遠に  高倉健『駅 STATION』

2016年度の廃止が予定されている北海道の増毛駅。 その増毛が主要な舞台となっている映画『駅 STATION』(1981年、132分)を取り上げたいと思います。 降旗康男監督、主演は高倉健の一本でございます。 この夏に実際に増毛駅を訪れてみたので、映画をもう一…

悪臭ふんぷんたるレジスタンス  深作欣二『狼と豚と人間』

今回は深作欣二監督のギャング映画『狼と豚と人間』(1964年、95分)を取り上げます。 出演は高倉健(黒木次郎=次男)、三國連太郎(黒木市郎=長男)、北大路欣也(黒木三郎=三男)というそうそうたるメンツでございます。もう50年前の作品なんですね~。…

映画はエロスなり  鈴木則文『エロ将軍と二十一人の愛妾』

今回は日本映画の誇る名監督、鈴木則文のアダルティーな作品『エロ将軍と二十一人の愛妾』(1972年、91分)を取り上げたいと思います。 けっこうTSUTAYAさんなんかにも置いてありますので、手に取りやすい作品ですが、インパクトのあるタイトルを持つ本作、…

この男もまた、凶暴につき…  深作欣二監督『やくざの墓場 くちなしの花』

今回は前回に続き、深作欣二監督である『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年、96分)を取り上げます。 この作品は同じく渡哲也主演『仁義の墓場』の内容のつながりはないものの続編的な位置にあり、同じく深作監督の『県警対組織暴力』などにも通じる「ヤ…

なぜ彼は「仁義」という言葉を墓石に彫ったのか?  渡哲也主演 『仁義の墓場』

今日は渡哲也主演のヤクザ映画『仁義の墓場』(1975年、94分)を取り上げたいと思います。 この映画は『仁義なき戦い』の深作監督が担当しています。 『仁義なき戦い』と『仁義の墓場』。 なんだかタイトルが似ていますね。 しかし、タイトルで扱われている…

芸術における才能とは?  北野武『監督・ばんざい!』/『アキレスと亀』

ニャロ目でございます。 今回は北野武監督の13本目『監督・ばんざい!』(2007、104分)と14本目の『アキレスと亀』(2008年、119分)を取り上げたいと思います。 珍妙なコメディ映画である『監督・ばんざい!』、芸術に生涯を捧げたものの、ついぞ振り向か…

映画版「進撃の巨人」後編 エンドオブザワールドの果てに/進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド

各所から非難の嵐にあっている「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド」について、果たして町山智浩氏は何をしたかったのか。 どんな壁が我々に立ちふさがったのかを考察・解説していきたいと思います。 前編がある映画の後編を語る時点で、ネバ…

引き裂かれたタケシ、夢の残滓。  北野武『TAKESHIS`』

今日は北野武監督作品、『TAKESHIS`』(2005、107分)を取り上げてみたいと思います。 ファンのあいだでも非常に評価の分かれる本作品ですが、みなさんはどのように感じたでしょうか? 評価さえも「引き裂かれている」 北野作品としては12作目、前作『座頭市…

汗をかかないヤクザたち 北野武『アウトレイジ』、『アウトレイジ ビヨンド』

ニャロ目でごじゃる。 今回はみんな大好き、北野武の『アウトレイジ』(2010年、109分)、そして続編にあたる『アウトレイジ ビヨンド』(2012年、112分)を取り上げたいと思います。 過去のヤクザ映画や北野作品と比較しながらみてみましょう。 『仁義なき…

「進撃の巨人エンドオブザワールド」を見る前に/進撃の巨人 ATTACK ON TITAN

前回、1万2千文字にわたる感想・考察を述べたわけですが、9月19日に公開が迫った「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド」の予習として、ネタバレを存分にしながら解説や、後編がどうなるのかということを妄想していこうと思っています。 …

原色のボディ・性をむきだして  神代辰巳『一条さゆり・濡れた欲情』

ニャロ目でありやす。 今回は神代辰巳監督作品『一条さゆり・濡れた欲情』(1962、69分)を取り上げたいと思います。 一条さゆり 濡れた欲情 [DVD] 出版社/メーカー: 日活 発売日: 2006/12/22 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 123回 この商品を含むブログ…

美しい物は目には見えない・男の友情 『座頭市物語』

ニャロ目でござんす。 今回は名監督三隅研次の『座頭市物語』(1962年、96分)を取り上げたいと思います。 主演はもちろん、勝新太郎。 誕生から半世紀すぎてもなおファンが絶えない『座頭市』シリーズ。 その原点に迫りたいと思います。 予告と本編は結構違…

これは『NARUTO―ナルト―』である 北野武『座頭市』

ニャロ目でござんす。 今回は北野武監督の通算11本目の作品『座頭市』(2003年、115分)を取り上げて批評していきたいと思います。 現在のところ、北野映画最大のヒット作であるこの作品。 勝新太郎の『座頭市』シリーズにどう挑んだのでしょうか。 登場人物…

「境界線」をテーマに名作を読み解く  相米慎二監督『お引越し』

ニャロ目でございやす。 今回は『台風クラブ』に続いて、相米慎二監督の『お引越し』(1993年、124分)をとりあげたいと思います。 最近、レンタルでもDVDの取り扱いが始まった(?)ようですので、観賞しやすくなりましたね。 漆場家の人々 ・漆場レンコ(…

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