シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

おかめ横丁戦争   中島貞夫『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』(1972年)

今日は中島貞夫監督作品『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』を取り上げます。『まむしの兄弟』シリーズの4作目となります。

 

主な登場人物

 

政太郎菅原文太)・・・「まむしの兄弟」。政太郎。

勝次(川地民夫)・・・「まむしの兄弟」。不死身の勝。政をアニキと慕う。

・リキ(渡瀬恒彦)・・・兄と慕う人物を殺されたことから山崎を狙う

 

おかめ横丁の人々

・お藤(北林早苗)・・・「おかめ横丁」でバー「藤」を経営。今作のヒロイン。

・辰(北村英三)・・・もう一つの「まむしの兄弟」の一人。

・鉄(殿山泰司)・・・もう一つの「まむしの兄弟」の一人。実は藤の父親。

 

今作の敵

・山崎(待田京介)・・・神戸のヤクザ、矢東会の大物。

・東(遠藤辰雄)・・・東栄建設の社長。矢東会と深いつながりがある。

・片岡(菅貫太郎)・・・悪徳弁護士。山崎や東と手を組む。

 

イ○ポをなおそう!

 

今回も政の出所シーンから始まります。たまたま同時に出所した神戸矢東会の山崎がスナイパー(じつはリキ)に狙われます。飯の種、とばかりにゴロ政たちは追いかけますがスナイパーはバイクで逃げ去ってしまいます。

 

トラックの荷台で今後の方針を考える政と勝。

刑務所暮らしで女性との接触がしばし絶たれていた政は「子宮にこむらがえしをおこさせちゃる」というかなりお下劣な言葉をはいて息巻きます。今回も冒頭からゲスの極みです。

 

勝はアニキのために女性を用意しようと画策しますが、うまい具合に見つからず、アニキに目隠しをさせて老婆を抱かせようとしますが目隠しがズレてアニキはイ○ポテンツに陥ってしまいます。素晴らしきアホアホな展開です。

 

そんな中たまたま訪れた「おかめ横丁」というバラックの並ぶ歓楽通りのホルモン焼き屋からストーリーが展開しはじめます。

どうやらこの歓楽街は、アミューズメントセンターを建てようとしている東栄建設の持っている土地であり、住民は立ち退きを迫られている模様。その手段が穏やかならば問題ないのですが、白紙委任状に無理やり判を捺させるという強引なもの。三ヶ月ほど前にこの通りに住み着いたという辰と鉄という血気さかんなおじいちゃん二人が中心となって、立ち退き料を出すと口にはするものの、その実まったく出す気のない東栄建設の暴力社員に対抗します。

 

東栄建設は神戸のヤクザ・矢東会と深い繋がりがあります(どうやら元組員が立ち上げた会社らしい)。社長の東は、矢東会の山崎と結託して、「おかめ横丁」の地上げを進めようとします。

 

政と勝は東栄建設とひと悶着起こしますが、金でうまく言いくるめられて東に雇われます。

 

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昼食時にバキュームカーで乗りつけ、おかめ横丁の営業を妨害する政と勝。辰と鉄という、かなり昔から同じように「まむしの兄弟」を名乗っているという二人と乱闘しますが、お藤にとめられます。政はお藤に一目ぼれ。きっとこんな優しい人が自分の「おかあやん」に違いないと得意の妄想をします。

 

今度はおかめ横丁側についた政と勝。お藤の店の二階に住み着いている辰と鉄とともに憎まれ口を叩きあいながらも東栄建設+矢東会と戦うこととなります。お藤からも横丁を守るために体をはる辰と鉄の面倒を見るように頼まれます。

 

おかめ横丁戦争

工事が遅れることにいらだつ東。山崎は、東栄建設をカタギの会社だと思わせるために矢東会から派遣されており、暴力や金のバラマキで住人を追い出すとマスコミや警察がうるさいため悪徳弁護士・片岡とともに新しい作戦を始めます。

 

そんな中、例のスナイパー、リキと偶然知り合う政。リキが復讐のために山崎を狙っていることを知ります。リキは一人で山崎を撃とうとしますが捕まってしまい、東栄建設内で凄惨なリンチを受けてしまいます。

 

「殺しは一人でやるもんや」と政に呟いていたリキ。『山口組外伝 九州進行作戦』(1974年)でも似たようなセリフを今度は菅原文太が口にする場面があり、観ているとニヤリとできます。

 

 

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山崎の作戦は、土地を明け渡さない住人に対し、弁護士立会いのもと強制執行を行うというもの。

 

ショベルカーや水攻めで次々と家屋を破壊していく東栄建設。政と勝はボロボロになりながらも粘りに粘りますが、住居侵入及び威力業務妨害により捕まってしまいます。暴力追放宣言をしているらしいこの都市。山崎と東は警察や新聞を結果的に味方につけることに成功したのです。

 

辰と鉄、お藤たちはそれでも横丁に居座ります。その間に、お藤が鉄の父親であるということを辰から知らされます。鉄は、自分からはいいだせなかったのですが、娘の姿を見たいと思い、やっとのことで居場所を突き止めたのです。母と二人で苦労した人生を思い返してお藤は複雑な様子です。

 

その鉄が一人で山崎たちに会いに行きます。娘のことを考えて、東栄建設から金をひきだすためです。しかし、あっけなく刺し殺される鉄。

 

その鉄の葬式に、山崎たちが現れます。警察の調べでは通りがかりのチンピラと喧嘩になった末に殺されたということでしたが、もちろん辰やお藤はそう考えていません。

「本当にチンピラはこわい。 人を殺すことを屁とも思っていないんだから」と山崎。

そのあまりの態度に怒りを隠せない一同でしたが、面と向かって反抗することもできません。山崎も大変にゲスの極みでございます。

 

さてまむしたちは片岡弁護士が身元引受人となり、警察から出てきます。片岡はまむしたちに金を渡して、これでおかめ横丁の件から身を引けと言われます。

 

政はそのまま神戸・新開地に帰ろうとする勝を引きとめ、おかめ横丁の様子を見に行きます。そこにはすっかり変わり果てた横丁の姿が。

 

お藤と再会し、鉄が殺されたこと、鉄がお藤の父親であることを知ります。また、全てが東栄建設と矢東会・山崎の仕組んだことだと気づき、政と勝は事務所に乗り込みます。

 

バッサバッサとヤクザたちを殺していくまむしの兄弟。監禁されていたリキはその騒ぎに乗じて逃げ出します。リキはダイナマイトに火をつけて、山崎と東に飛び掛りますがとどめをさすには至らず。爆死するリキ。

 

政と勝は山崎と東にそれぞれ刀をぶちこみ、鉄やリキの仇を討ちます。

 

「お藤はん、よろこぶで!」という勝の言葉で、ムクムクとイ○ポの治る政。ですが彼らには19回目の懲役が待っているのでした。

 

 

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びしょ濡れ文太

 

映像としての見どころは、おかめ横丁への強制執行シーン。これが思いのほか迫力があるのです!

 

建物も体もびしょびしょになりながら演技する文太アニキたちの生き生きした様子が素晴らしい! カメラワークも滑らかで、いい場面です。

 

今作でも「母親への思慕」がキーポイントとなります。政にはなんとなく母親の記憶があるようですが、清楚で優しいお藤のような女性が母親だと思い込んでいます。その思いと、父親を失ったお藤、娘を思って命果てた鉄の無念と絡んで、ラストの討ち入りシーンにつながって行くのです。

 

そして注目人物はリキ。アニキを殺されたことから山崎を狙う孤高の復讐者。なんといっても革ジャンが似合います。渡瀬恒彦は今作に限らず、めっちゃ革ジャンが似合うと思うのです! ダイナマイトでむなしくも自分一人だけ爆死するという壮絶な最期も自分好みであります!

 

あいかわらず頭をカラッポにして楽しめる『まむしの兄弟』シリーズ。

人生に疲れ気味のそんなあなたにオススメです!

 

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