岡本喜八特集!!
本日は邦画史に名を残す名監督・岡本喜八を紹介したいと思います!
名前はなんとなく聞いたことがあるけど…という方でも安心。
代表作は観たことある、という方は素晴らしい。
全部観たよ! という方はもっと素晴らしい。
皆様この機会に、クリエイターにもファンが多いといわれる岡本喜八を予習/復習してみませんか?
まず監督自身について簡単に説明していきます!
岡本喜八って?
岡本喜八は非常に息の長い映画監督です。
1958年『結婚のすべて』から2002年『助太刀屋助六』まで実に44年のキャリアを誇ります。
彼を語るときによく引き合いに出される黒澤明は50年の監督人生を歩みましたからまさに日本映画界を代表する、息の長い監督といえます(同様に40年以上のキャリアを持つ監督としてマキノ雅弘、深作欣二、新藤兼人などが挙げられます)。
岡本監督には39本の映画作品があり、だいたいの作品は今日でも視聴できます。アクションをはじめとした娯楽作品を撮り続けてました。肩の力をいれずに気楽に観賞することができるので、映画初心者の方でもわりと入りやすいのではないでしょうか。
岡本喜八本人は温厚で真面目、非常にテンポにこだわりを持っていたといわれます。なんと役者の歩く歩数まで計算していたという逸話も。
幼いころから映画好きで、とくにジョン・フォード監督の『駅馬車』に夢中で、兵役中に布団の中でカット割を思い出していたそうです。
青春を第二次世界大戦とともに過ごしたことが彼の創作姿勢に大きな影響を与えています。
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では年代順に岡本喜八の作品を取り上げながら、簡単に解説していきたいと思います。
1950年代の岡本喜八
1958年にデビューした喜八ですが2年間で5本の作品を完成させます。
その中でも最も有名なのが『独立愚連隊』(1959年)です。
西部劇的なリズム、戦争を皮肉るようなコメディな味付け、佐藤允をはじめとする俳優陣の名演技もあいまり、岡本喜八作品の中で最も有名な作品といえるでしょう。
1960年には岡本自身による続編も作られました。
おそらくどこのレンタルショップでも置かれていると思います!
この作品から岡本喜八体験をはじめるのもいいですね!
1960年代の岡本喜八
この年代は岡本喜八の創意が見事に成果をあげた、充実した期間といえます。約20本の作品を10年間で送り出しました。
おすすめしたいのは、『江分利満氏の優雅な生活』(1963年)、『日本のいちばん長い日』(1967年)の二本。
『江分利満氏の優雅な生活』は、原作者山口瞳のデビュー作であるエッセイを元に作られたユーモアタッチの映画。いわゆる戦中派のどこにでもいる青年サラリーマンの日常を描きます。どこにでもいる、とは書きましたが作中、主人公は作家としてデビューしますし、生活ぶりを考えると割りと裕福なほうではないかなと今となっては思えます。ちなみに岡本喜八自身も主人公と同じ戦中に青春時代を過ごしています。
特に初期のアクション映画とは全く違ったテイストで、実験作でもあるので観る人を選ぶと思われますが(なんせ、おっさんの一人語りの映画ですからね…)、主人公役の小林桂樹のなんだかトボけた演技がクセになる作品です。
『日本のいちばん長い日』は2015年に原田眞人監督によりリメイクされたことから聞き覚えの方もいらっしゃるかもしれません。
ポツダム宣言受諾の最終決定から玉音放送までの24時間を、陸軍将校らによる宮城事件をメインとして描いています。
敗戦を受け入れられための動揺、それにより蜂起に至る心理のダイナミズムは圧巻です。
『江分利満氏の優雅な生活』とは異なり、骨太な状況劇であり、今でもファンの多い大作です。これも大抵のレンタルショップには置いてあると思われます。
1970年代の岡本喜八
さてこの10年間は製作のペースは落ちたものの10本の作品を発表しています。勝新太郎の代表作である「座頭市」と三船敏郎の代表作「用心棒」が刃を交える豪華な『座頭市と用心棒』(1970年)やエヴァンゲリオンでおなじみ庵野秀明監督が100回以上観たという戦争映画『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)など話題作、大作がある中で、自分が特に推したい二本を紹介します。
一つめは『ブルークリスマス』(1978年)。
倉本聰脚本のSF作品。ただし大掛かりな特撮は出てきません。
青い血を恐れる指導者たちとその思惑により迫害される人々を描いた傑作です。
この映画の公開数ヶ月前に日本で『スター・ウォーズ』が公開され、SFブームの中にありながら派手な演出が一切ない異色作。当然というか、非常に残念ながら大ヒットはしなかったようですが、SF映画であり、政治劇でもあり、恋愛映画でもあるという、今でもファンの多い名作です。
ある出来事をきっかけに突如血が青く変化した人々。彼らは人間なのか、それとも…。
青い血と赤い血がクリスマスを迎える雪の世界で悲しく混じりあう、そこに至るまでを壮大なスケールと丁寧な画面構成で見事築き上げています。
もう一つのオススメ映画は『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(1979年)。
戦争に翻弄された若者の姿を、野球という共通の趣味を通しながら描いた傑作。しかしながら野球をしているシーンがほとんどないというのが特徴。ラストシーンが印象に残ります。『永遠の0』に感動した方はこちらも観てバランスをとりましょう。
1980年代の岡本喜八
この時代、ぐっと製作数が減って2本。
『近頃なぜかチャールストン』(1981年)。たまーにレンタルショップにも置いてあります。戦争を生き延びた老人たちが築いたヤマタイ国での、コメディ映画。脇役が豪華で彼らのコミカルな演技を見ているだけでも楽しい。皮肉の人でもある岡本喜八の持ち味がよくでてる一作です。
『ジャズ大名』(1986年)は筒井康隆原作(彼も岡本喜八ファン)。江戸時代を舞台にした、タイトル通りジャズと藩主の運命的な出会いを描いています。山下洋輔やタモリも出演しています(ジャズだからね)。この作品はわりとレンタル店でもよく見ますね。
1990年代の岡本喜八
『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991年)と『EAST MEETS WEST』(1995年)の二本のみの製作。
どちらかというと『大誘拐 RAINBOW KIDS』がオススメ。テンポもよく、誰が見ても楽しめます。お金持ちのおばあちゃんが誘拐されるという事件が発生するが、その真相はじつは…。といったかんじの展開で非常に有名な作品です。『EAST MEETS WEST』がちょっと観るものを選ぶ映画なので、岡本喜八初心者はまず『大誘拐』から!
2000年代の岡本喜八
『助太刀屋助六』(2002年)のみ。つまるところこれが岡本監督最後の作品です。
90分足らずの短い作品ですが、監督の持つ独特なリズム・テンポと主演の真田広之の演技がマッチしています。岡本作品のラストを飾るにはやや寂しいか、という評価もありますが最後まで気持ちのいいコメディ(とそれに付随する泣き)を貫いた創作の姿勢を感じ取ることができます。
さて、駆け足で岡本喜八作品を紹介しました。
今後、このブログで各作品をレビューすることも増えると思います。
あらゆる時代、ジャンルを取り扱いながら反戦、皮肉を込めた強い思いが根底にある岡本作品。
39作中、あなたは何本観たことがあるでしょうか?
じつはまだ観たことないという方、それは幸せです。
彼の遺した数々の名作をまっさらな状態で味わうことができるのですから!