これは『NARUTO―ナルト―』である 北野武『座頭市』
ニャロ目でござんす。
今回は北野武監督の通算11本目の作品『座頭市』(2003年、115分)を取り上げて批評していきたいと思います。
現在のところ、北野映画最大のヒット作であるこの作品。
登場人物
市(ビートたけし)
服部源之助(浅野忠信)
おしの(夏川結衣)
おうめ(大楠道代)
おきぬ(大家由祐子)
おせい(橘大五郎)
新吉(ガダルカナル・タカ)
銀蔵(岸辺一徳)
扇屋(石倉三郎)
居酒屋の主人(柄本明)
注目ポイント
この映画を観終わったあとに、印象に残ったシーンを振り返るとさまざまな場面が浮かび上がると思います。
CGを使った座頭市のテンポのいい殺陣。
シリアスな場面にもお構いなしに挿入されるギャグ。
市の金髪(まるで異世界の住人のように目立ちます)。
家族を殺された姉と弟の復讐。
病身の妻と脱藩した武士。
ラストに明かされる黒幕。
石につまづく市。
祭りにおけるタップダンス(そういえば『菊次郎の夏』でもタップダンスでてきましたね)。
などなど。
北野武作品屈指の娯楽作品にして王道を行く作品なので観て楽しめばそれでいいわけですが、自分なりのお気に入りシーンを紹介してみます。
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まずは映画の冒頭。
休憩している市をやくざ者が襲いますが、市はなんなく返り討ちにします。
市の手際のよさと映画のスタンスをわかりやすく見せるオープニング。
視聴者の気持ちをとらえるいい導入部ですよね。
次は銀蔵一家の用心棒となった源之助が、指令を受けて夜間に籠を襲うシーン。
銀蔵らの肩越しに、手前に向かってくる標的とそれに近づく源之助をカメラが写します。
テンポよく3人を葬った源之助とそこらに転がる死体を、再び銀蔵らの肩越しに画面にとらえます。
この構図はけっこう好きですね。
一連の襲撃における静と動、始と末をパッとみせています。
最後に、源之助と妻がそれぞれ同じタイミングで命を落とすシーン。
源之助は市と水辺での戦いにおいて(水辺好きですねー、北野監督)。
妻は、自分のために人斬りを続ける夫を慮って自決(うるっときちゃいますねー)。
死の瞬間までも二人の強い連帯を感じるシーンです。
勝新太郎『座頭市』シリーズと北野武『座頭市』
『座頭市』シリーズといえば勝新ですね(まあ『ICHI』とか『座頭市 THE LAST』とかありますけどね…)。
北野武自身は勝新に敬意を示した結果、真っ向勝負というよりは少しひねった作品を作り上げました(金髪、ダンスなど)。
とはいえ、単に突飛なアイデアというわけではなく、娯楽作の王道からそれていないのが、北野監督の才能を感じさせますし、最大のヒット作というのも頷けます。
今作は(も)海外での評価も高いようですしね。
『NARUTO』と北野版『座頭市』
では北野版『座頭市』はどんな作品と関連付けて考えたほうがいいのでしょうか。
そこで今回のコラムのタイトル、『NARUTO』(作・岸本斉史)がでてくるわけです。
『NARUTO』は忍によるバトル漫画で、大ヒットした作品です。
海外での人気も非常に高く、連載が終わってもスピンオフで映画が作られるなどファンに愛されている作品です。
さて、ポイントは海外で人気が高い、という部分です。
もちろん北野映画もその芸術性で海外、とりわけヨーロッパで人気があります。
『NARUTO』も北野版『座頭市』も、いわば海外の方にもわかりやすくアレンジされた「和の世界」が描かれています。
「海外の人がなんとなく妄想しそうな和の世界」にするアレンジ能力とエンターテインメント性が岸本先生にも北野監督にも共通しているのです。クールジャパンでございます。
内容が似てるとかそういうことではありませんよ。
お二方とも、うまく作ったな! という感じです。
というわけで
いささか強引ながら北野版『座頭市』を振り返ってみました。
やはり北野作品は構図・カメラワークが美しいですね。
彼が脚本を(あまり)重要視せず、頭の中にある「絵・イメージ」を画面上に表現しようと考えているのがよく伝わります。
ある意味、映画は「ハッタリ」なのです。
勝新版との真っ向勝負をうまく受け流す、その北野流「ハッタリ」の頂点に『座頭市』は位置しているわけです。
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