夜桜銀次、死神を背負う男 『山口組外伝 九州進行作戦』(1974年)
大変、お久しぶりです。ニャロ目です。
今回は菅原文太主演、山下耕作監督の1974年の東映実録路線の傑作である『山口組外伝 九州進行作戦』を取り上げたいと思います。
長らくソフト化が待たれていましたが、山口組の最近の騒動を知ってかしらずか、2015年にDVDがリリースされた作品です!
高倉健主演『山口組三代目』などもそうですが、このごろは、ソフト化されていなかった映画やソフト化が難しいとされていた映画が次々とリリースされたり、動画配信サービスで視聴できるようになったりと、名画座が近くにない自分のような映画ファンにとっては嬉しい状況となっています(ホントは映画館で観たい…)。
夜桜を背負う男
さて、本作ですが主役は夜桜銀次(菅原文太)。
本名、平尾国人。
大分県出身、背中に桜の刺青を背負う超攻撃型ヤクザ。
群れること、媚びることを嫌い、殺しは一人でやるものだと豪語する男。
女を抱くときも拳銃を手放さない。
石野組組長の石野一郎(梅宮辰夫)とは愚連隊時代からの兄弟分であり、石野をアニキと呼ぶ。
彼は実在した人物です。
本作では昭和32年(1957年)から昭和37年(1962年)の間に彼が関わった別府抗争、明友会事件、博多事件が、山口組の九州進出の野望を絡めて描かれています。
死神を背負う男と恐れられながら、自分自身もまたその死神の鎌で首元を狙われている男。
それが夜桜銀次です。
実録山口組抗争史 夜桜銀次と博多戦争編 (バンブー・コミックス)
- 作者: 二条凛,武喜仁
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2009/01/15
- メディア: コミック
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別府抗争
別府温泉観光産業大博覧会の利権を巡り、地元のヤクザで新興勢力の石野組と旧勢力の坂口組が対立。温泉観光会の建設現場を視察しにきた石野組長を、作業員に化けていた坂口組員が銃撃、石野は重傷を負い、別府抗争の火蓋がきって落とされます。
坂口組長やその幹部は別府市議会議員のため、警察も坂口のほうに協力的という噂。
石野の舎弟である銀次は、白スーツにブルーストライプのシャツ、グレーのネクタイにピン、茶色の靴というスタイリッシュな姿で遠山(川谷拓三)らとともに坂口組を襲撃します。冒頭にでてくる、このオシャレ襲撃はみどころなのでぜひご覧下さい!
組長は取り逃がしてしまいますが、銀次は組員を射殺。指名手配される身分となります。
石野は銀次と密会し、大阪へ隠れろと指示します。
その会話の中で銀次は、
「殺しは一人ばい…一人でやらにゃあいけんもんじゃのう」
「九州で男をはるには博多ばい」
と語ります。
彼が人一倍肝が据わっていることがよくわかります。
また、九州で石野とともに名をあげることを望んでいることも伝わります。
その後も抗争は続きましたが、九州の大物博徒である大浦(志村喬)の仲立ちにより和解が成立します。
この別府抗争は、凶器準備集合罪が新設される契機となり、後の山口組(映画内では兵藤組)の九州進出に大きな影響を与えることとなるのです。
大阪~銀次と憲一
さて、銀次は内縁の妻である安藤ふさ子(渚まゆみ)とともに、大阪天満を本拠とする「マテンの黒ヒョウ」こと大東(室田日出男)のもとに身を隠します。大東は黒スーツに黒シャツ、黒ハットに黒手袋、白ネクタイという素敵すぎる出で立ちをしております。兵藤組傘下の新興ヤクザです。
彼は「近頃の極道で本気で喧嘩できるやつはいない」と銀二に豪語し、その言葉を証明するために、銃を構えた対立組織のヤクザに「撃てるなら撃ってみい!」と胸を突き出します。
相手は大東の威勢と「撃ったら(刑期を)10年はくらう」という言葉に腰を抜かし、ほうほうのていで逃げ出します。
この肝の据わった男、大東は「マテンの黒シャツ」とよばれた柳川組組長である柳川次郎をモデルにしています。
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銀次の妻ふさ子は妊娠中ですがパチンコ屋で働いております。
久しぶりに顔を見せた銀二は、店内でゴト行為をする古田憲一という若いチンピラと知り合います。同じ九州の生まれであることや、複数人に囲まれても怯まず向かっていく暴れぶりを見込んで銀次は彼を家に引き取ります。
憲一は熊本の特殊少年院を出たのち、神戸を経て大阪にたどり着いたと話します。
ふさ子も憲一を気に入り、三人ですき焼きを食べ、つかの間の平穏な時間が流れます。
その夜、久しぶりに抱き合う夫婦を憲一がそっと覗きます。暗闇の中で、銀次の背中の桜の刺青が浮かび上がる、といういい演出があります。
ある日、金を盗もうとした憲一は、その場にいた徐甲竜(今井健二)というヤクザに左の手のひらにナイフを突き立てられ負傷します。
その無軌道ぶりに見込みがあると徐にいわれた憲一は、徐の下で働くことになります。つくづく威勢のいい男ですね憲一は。
そのことを知った銀次は徐の所属する双竜会の本拠地に乗り込み憲一を連れ戻そうとしますが、徐にとめられてしまいます。一歩も引かない銀次は憲一のお返しとばかりに徐の左の手のひらを銃で撃ち抜きます。
憲一は覚せい剤をやっていたことを反省し、銀次とともにペー屋(覚せい剤の売人)を襲い、売り上げを根こそぎ奪っていきます。
負傷から復活した別府の石野は昭和33年3月に神戸の兵藤組組長と盃をかわし、若衆になります。九州進出を狙う兵藤組にとっても石野の存在は都合がよかったのでしょう。
久しぶりに再会した銀次でしたが、兵藤組の吉村(津川雅彦)に仕事を世話してもらえ、俺も別府で新しい仕事をはじめようと思う、などと石野に言われます(ちなみに吉村はのちの一和会会長の山本広がモデルです)。
銀次は、兄貴は変わってしまった、九州にいつ帰してくれるんだ、と詰めますが九州には兵藤組に値するような大きな組が2つも3つもある、もうハジキではどうすることもできないんじゃ、と諭されます。
そんな中、ささいなトラブルから繁華街で憲一が兵藤組系列の新庄組のチンピラを撃ち殺してしまい、新庄組長らに監禁されます。
銀次は身柄を引き受けに単身乗り込みます。
若いもののしでかしたことは自分でケリをつけると言い放った銀次は、憲一の腹を撃ちます。
新庄組長もこれには言葉を失い、銀次は瀕死の憲一を抱えてその場を立ち去ります。
双竜会事件
その後、銀次は東京などを彷徨う旅にでます。
一年半後、ふさ子の待つ大阪の家に帰ると、国子という銀次の赤ん坊が生まれており、ふさ子は再会に涙を流します。
大阪の繁華街で暴れる双竜会幹部の徐と金(曽根晴美)が兵藤組組長に絡み、負傷させる事件が発生します。兵藤組と双竜会の抗争が勃発します。これが史実でいうところの「明友会事件」(映画では双竜会事件)です。
双竜連合会会長は元達文(天津敏)、配下1000人を数えますが、さすがに関西の大組織兵藤組との争いは避けたいので和解を目指すものの、兵藤組の好戦的なメンツが大阪に集まりつつあり、血の雨が降ることは確実となります。
銀次は石野、吉村と久しぶりに再会します。双竜会の徐と金を的にかけると聞いた銀次は自らも殺しに参加したいと志願します。
「殺しなら一人がよか」と単独での双竜会狩り参加を望みますが、石野に説得され、桑田組の郡司(松方弘樹)らとチームを組むことになります。
兵藤組の山地(佐藤慶)のアイデアで、狩りは各地から集まった初対面の50数人の精鋭を10数組のチームにわけ決行されます。その目的は二つで、互いの競争心を煽ることと、組織的な襲撃であることを警察に隠すことでした。なかなかの策士です。ちなみにこの山地は、山口組の地道行雄をモデルとしております。
双竜会は胸に特徴的な刺青を入れており、それを目印に銀次らは次々と組員を襲い、幹部連中を追い詰め、ついに徐が清風荘というアパートにいるところを襲撃、郡司が討ち取ります。
双竜会会長の元は全面降伏し、石野を仲介人として、兵藤会と双竜会との抗争は終結します。
再び警察に追われる身となった銀次。
兵藤組若衆でもある博多の海津組組長(渡辺文雄)が銀次の身を預かりたいと吉村を通じて石野に伝えます。
昭和35年10月、銀次はついに九州へ帰還することとなりました。
博多事件~銀次、散る
海津のもと、福岡市内のマンションに潜伏する銀次。
単身で白スーツ、白ネクタイ、黒シャツ。白いコートというイカしたファッションで、炭鉱経営の杉山(内田朝雄)の邸宅に赴きます。
2年前、木下商事が世話した7000万の口利き料である700万を受け取るためです。
杉山は銃口を突きつけられてすっかり萎縮し、支払わざるをえない状況に追い込まれます。
繁華街でのイザコザから事務所にまたまた単身で乗り込んだ銀次は高須組長(葉山良二)と知り合います。高須の度量で、その場では大きな争いには発展しませんでした。
その後、高須と海津は、組員に鉄砲を向けられてもまったく平気な様子だった銀次について話し込みます。
生きている人間じゃない。
まるで死神を背負っている。
九州ヤクザの組長クラスの人間も銀次の底知れない狂気には目をみはる様子です。
さらに海津は神戸(兵藤組)のひも付き(鉄砲玉)ではないか? 博多を死に場所と思っているのではないかと疑います。
一方、熊本の刑務所に入っていた憲一のもとにふさ子が面会に訪れます。
銀次の娘である国子が、二つになったばかりですが見よう見まねで、銀次が植えたバラの花の絵を描いたと告げます。これが伏線(というかシナリオ上の目配せといいますか)となります。
銀次に脅された杉山は久留米市の米田組組長に相談します。
銀次の住所を書いた紙と50万を渡された米田は二人の組員に銀次暗殺を命じます。
昭和37年1月、鹿谷組長(戸裏六広)の賭場で鹿谷と銀二がトラブルになります。海津と高須はこれ以上大きな騒ぎにならないよう内々で処理しようと決めますが、鹿谷は兄貴分の河島に助けを求めます。逆にどやされる始末の鹿谷。海津、石野はオレ(河島)が消す、お前(鹿谷)は銀次を殺せと命じられます。
二つの異なる組の長により、銀次抹殺命令が下されたのです。
海津は河島が博多にあらわれたことを知り、このまま秘密裏に処理できる状況ではなくなったと判断し、石野に一連の流れを報告します。
一方、自らを取り巻く陰謀を知らない銀次は、杉山を脅して受け取る予定の100万円で
情婦と旅にでるつもりで、自宅で寛いでいました。
そこを米田組員に襲撃され、あっけなく銀次は殺されます。
銀次死亡を知った石野は河島の差し金に違いないと決め付けます。
吉村はあらぶる石野に、警察は兵藤組を標的にしていて九州にはヘタに手がだせないと告げます。しかし石野は、この手で河島の首をとっちゃる、と銀次の仇を討つことを誓う。
先の別府抗争でも仲介人となった九州の大物博徒である大浦が博多へ向かい、河島から話を聞きます。
大浦は続けて石野の側とも接触し、河島は銀次の件には関わっていない、チンピラ一人のせいで九州と関西の戦争になっていいのか? と詰めますが、石野はそれも仕方ないと突っぱね、会談は決裂してしまいます。
ただちに関西各地の兵藤組が九州に集結し、武器が兵藤組の女たちによって運びこまれていきます。
大きな抗争への発展を警戒した警察も取り締まりを強化しましたが、組員が凶器を持っていないので凶器準備集合罪を適用できませんでした。
石野たちは待機している援軍に各地の組を襲撃命令をだそうとしますが、偶然の停電で動きを封じられ、警察に包囲されてしまいます。
結局、武器を持って準備していたところを凶器準備集合罪で逮捕されることになるのです。
少し時間が経過した後、刑務所からした出所した憲一が呆然とした表情で銀次の墓を見つめます。
そこにはバラが植えられています。バラを一輪取り、胸にさす憲一。
墓に隠されていた拳銃を掘り出し(ふさ子が隠したのでしょうか)、銀次の意思を継ぐ決意をします。
兵藤組と九州勢は、結局手打ちをすることとなり、話し合いのため福岡に多数の兵藤組組員が乗り込みます。
警察の取調べに吉村は「夜桜銀次っちゅう、ええ極道がおりましてな…」ときり出し、映画は終わります。
他作品との比較
実在したヤクザの半生を描いたという部分に関しては深作欣二監督『仁義の墓場』と似ているとも言えます。
『仁義の墓場』はあくまで石川力夫という狂犬にスポットをあてた作品であり、彼の死とともに物語は終わりますが、本作は銀次の半生を描くとともに山口組の九州進出の目論見をも盛り込んでいます。
さらに本作は『仁義なき戦い 代理戦争』で省略された部分を映画化したものであり、当時のヤクザ史に残る一エピソードとして見ごたえのある内容です。
さて、全編を通してシリアスなこの作品ですが、ユーモア溢れるシーンも幾つかあります。その一つが憲一と女を買って淋病になり、ペニシリンを打つシーンです。
銀次にとっては憲一という、自分と似たような匂いを持つ、ある意味では「もう一人の自分」といえる人間と出会ったことによって荒んだ生活にほんの少し光がさしこんだのかもしれません。
銀次亡き後の憲一の悲壮な表情を見ると、二人(+ふさ子)で過ごしたわずかな時間を描写したシーンを思い出されて、心を打たれます。
今作のカメラワークに関してですが、深作監督『仁義なき戦い』シリーズのように抗争シーンにおいてもカメラを振り回すというような撮り方はされておらず、全体的にヤクザ映画の中ではしっかりカットをつなげ、ストーリーをつなげていくという印象を受けました。
九州や大阪の方言が飛び交いますが、むしろ全体を通して静的な印象すら受けるのは、おそらく丁寧な画面構成の影響でしょう。
エピソードの積み上げに関しても、銀次を中心にしつつ、数々の抗争をある程度俯瞰しながら描写しているためか、余韻を残しながらも大きな綻びもなく、非常に観やすい作品ではないでしょうか。
三つの弾痕
仁侠映画と実録ヤクザ映画の大きな違いは銃によって受けたダメージの扱い方にあるといえます。
非常に簡単に説明すると、高倉健らが登場するような任侠映画は、上からの圧政に耐えて耐えて耐えて耐えた主人公が、終盤に敵の本拠地に乗り込んで何人もばっさばっさと切り捨てていきます。もちろん主人公側も無傷ではなく、仲間がやられたり、本人も銃で傷つけられます。
ポイントはここです。
何発も銃弾を受けても主人公は決して倒れません。うめき声をあげたり、ふらふらと足元がおぼつかなくなっても最後は敵の大将を必ず討ち取ります。まるで、受けた銃弾をも自らの怒りにエネルギー変換し、標的に向かっていくのです。
一方、実録ヤクザ映画では、任侠映画における「大仰な死」に対して、「あっけない死」「唐突な死」が描写されます。簡単にいうと、一発一発の弾の威力が絶大なのです。
一発撃たれればそれはほぼ死を意味します(もちろん、残虐さを表現するために何発も何発も撃ち込まれて苦悶する様子を描写することもあります)。
仁侠映画の討ち入りが、反抗心を劇的に描いたものに対して、実録ヤクザ映画の抗争シーンはヤクザ稼業の儚さ、報われなさを表現しているともいえます。
それを踏まえて、この『山口組外伝 九州進行作戦』における印象的な銃撃シーンを三つ取り上げたいと思います。
一つめは、銀次が徐の左手を撃ち抜いたシーン。
ここは弟分の憲一が徐に左手を刺されたことの報復ともとれる場面です。
銃を取り出そうとする銀次ですが、その前に徐に銃を突きつけられる銀次。
しかし、別の銃をこっそり取り出して、逆に徐の拳銃を取り上げます。非常に手馴れた様子です。
撃たれる徐を背中から映す構図。響く銃声。
苦悶の声をあげながらのた打ち回る徐。
暗めの室内がこの場面の不気味さを強調しています。
他人に対して一歩も引くことのない銀次の鼻っ柱の強い様子がわかります。
二つめは 憲一の腹を撃ちぬくシーン。
新庄組組員にリンチされすでに重傷の憲一。
銀次は、憲一の不祥事をチャラにするんなら石野の指でも持って来い新庄にいわれ騒動の落とし前をつけることを決意します。
憲一に向かって銃を構える銀次。
それを見ておびえる憲一の背中。
撃たれた憲一は壁まで吹き飛ぶ。
銀次は「これでよかな」と呟く。
これにはうるさ型の新庄組長も何も言えず。
他人に貸しをつくることを好まず、目をかけていた弟分すらも銃撃する信念の強さを感じますね。
そして最後は銀次暗殺のシーン。
室内の時計の音。
ベッドに横たわる銀次。
ノックが2回。
杉山の会社の者と勘違いする銀次。
組員が二人堂々と玄関から入り込む。
この段階では銀次と殺し屋は目を合わせていない。
殺し屋側からとらえた構図でも、銀次の顔は遮蔽物で見えない。
時計の音が大きくなる。
銀次が体を起こし、ようやく銃を認識する。
無音。
銀次の顔のアップ。
銃口。
さらに銀次の顔のアップ。
そしていくつかの銃声。
ほんのわずかなうめき声を漏らす銀次。
壁、白いベッド、白いシーツが赤く染まる。
そばに置いていた銃をつかむこともなく銀次は事切れるのでした。
派手な血しぶきが印象的な場面です。
死神を背負う男
今作に登場する三つの大きな事件・抗争の舞台は九州(別府抗争)→大阪(双竜会事件)→九州(博多事件)となります。
九州、大阪で大暴れして指名手配され、警察の目をかいくぐりながら再び九州に戻り、最期は命を散らすという流れです。
博多事件の前に、海津と高須が銀次について語り合ってた場面がすべてをあらわしています。
生きているのか死んでいるか分からない。
死神を背負った男。
行く先々で争いごとを起こし、九州で男をあげるという夢をついに果たすことはできなかった銀次。
本作の脚本を執筆した高田宏治は、「取材で夜桜銀次を知っている人に何人か会ったが、銀次を褒める人は誰もいなかった。伝説になった銀次も、実際には賭場での行儀の悪いヤクネタ(暴れ者)で、理性なく向かってくるので、やくざたちでさえ当たらず障らずにしていた」(『東映実録路線 最後の真実』より)と語っていました。
本来ならばこのようなただの暴れん坊は、ヤクザの世界で人知れず死んでいくのが関の山ですが、銀次の場合は、その名前の美しさと暴れっぷり、様々な抗争に影響を与えているという点で映画の題材にもなるほどの存在になったのです。
物語の最後で吉村が「夜桜銀次っちゅう、ええ極道がおりましてな…」と語りだすシーンは、自らの欲望・野望に忠実に生きた銀次を称える場面であり(銀次は死に花を咲かせたと作中では評価された)、あくまで映画上の美化であったことがわかります。このラストで多数のヤクザを映し出して映画は終わるのですが、非常にキレイな終わり方ですね。
夜桜銀次という一人の男が辿った血塗られた道を106分にまとめた今作、興味のある方はぜひご覧下さい!