シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

菅原文太の五大シリーズを振り返ってみる

今回は映画俳優・菅原文太東映にて遺した五つのシリーズもののを振り返ってまとめてみたいと思います。

 

どれも見ごたえがあり人気のあったシリーズですので興味がある方はどんどん掘り進めていって下さい!(ちなみに自分は今回とりあげた作品のうち、まだ9割しか観ていません…。文太アニイ、すんません)

『現代やくざ』シリーズ(1969年~)

・『現代やくざ 与太者の掟』1969年 降旗康男監督

・『現代やくざ 与太者仁義1969年 降旗康男監督

・『現代やくざ 盃返します』1971年 村上和彦監督

・『現代やくざ 血桜三兄弟1971年 中島貞夫監督

・『現代やくざ 人斬り与太1972年 深作欣二監督

 

記念すべき文太アニキの東映初主演映画『現代やくざ 与太者の掟』から始まるシリーズ。「現代やくざ」ということで着流しの仁侠映画から脱却しようとする製作陣の意気を感じます。

個人的には後半の『血桜三兄弟』や『人斬り与太』がお気に入り。

とくに『人斬り与太』は深作欣二監督『人斬り与太 狂犬三兄弟』(1972年)に発展し、それが翌年からはじまる『仁義なき戦い』を生み出すわけなので大変重要な作品です。主人公の性格がメチャクチャですし。

 

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『関東テキヤ一家』シリーズ(1969年~)

・『関東テキヤ一家』1969年 鈴木則文監督

・『関東テキヤ一家 喧嘩仁義』1970年 鈴木則文監督

・『関東テキヤ一家 天王寺の決斗』1970年 鈴木則文監督

・『関東テキヤ一家 喧嘩火祭り』1971年 鈴木則文監督

・『関東テキヤ一家 浅草の代紋』1971年 原田隆司監督

 

浅草のテキヤ一家の若衆頭を演じる文太アニキ。一作目では恋と友情の狭間で揺れる様子を熱演。鈴木則文監督の上品な構図も堪能出来ます。でもあまり知名度ありません。なんででしょうか。あまりレンタル屋にないから?

テキヤ稼業の様子も知れるし、男気溢れる演技も堪能できるし、オススメですよ!(特に一作目のラストバトルが好き)

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『まむしの兄弟』シリーズ(1971年~)

・『懲役太郎 まむしの兄弟』1971年 中島貞夫監督

『まむしの兄弟 お礼参り』1971年 本田達男監督

『まむしの兄弟 懲役十三回』1972年 中島貞夫監督

『まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯』1972年 中島貞夫監督

『まむしの兄弟 刑務所暮らし四年半』1973年 山下耕作監督

『まむしの兄弟 恐喝三億円』1973年 鈴木則文監督

『まむしの兄弟 二人合わせて30犯』1974年 工藤栄一監督

『極道VSまむし』1974年 中島貞夫監督

『まむしと青大将』1975年 中島貞夫監督

 

ギャグとエロスと暴力と。三点揃ったこの『まむしの兄弟』シリーズ。ストーリーが定型であること、コンビであること、母親への思慕など、後の『トラック野郎』とも通じる部分があります。とりあえず最後は敵役を皆殺しにしてスッキリ。ある意味、最もふり幅のあるシリーズといえましょう。

『極道VSまむし』は若山富三郎主演の『極道』シリーズ(1968年~)とのスピンオフ作品。『エイリアンVSプレデター』も真っ青でございます。

 私的には松方弘樹の登場する『恐喝三億円』が切なくて好きですね。

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仁義なき戦い』シリーズ(1973年~)

・『仁義なき戦い』1973年 深作欣二監督

仁義なき戦い 広島死闘篇』1973年 深作欣二監督

仁義なき戦い 代理戦争』1973年 深作欣二監督

仁義なき戦い 頂上作戦』1974年 深作欣二監督

仁義なき戦い 完結篇』1974年 深作欣二監督

 

いわずとしれた文太アニキの代表作にして日本映画の(一種の)到達点。

今振り返ってもやはり菅原文太以外に広能を演じられる役者はいなかったでしょう。

文太をはじめとする役者、深作演出、笠原和夫(完結篇は高田宏治)の脚本、津島利章の音楽などなどのピースが全てうまくはまり、国民の心をガッチリ掴みました。 

あまりに話題になったたますぐさま『新 仁義なき戦い』が作られました。

・『新 仁義なき戦い』1974年 深作欣二監督

・『新 仁義なき戦い 組長の首』1975年 深作欣二監督

・『新 仁義なき戦い 組長最後の日』1976年 深作欣二監督

 こちらは『仁義なき戦い』とは少し毛色が違うので、同シリーズを期待する人は面食らうかもしれません。

いずれにせよ、この成功で東映は実録やくざ路線を突き進んでいくわけです(実質、わずか5年でその路線は終結するのですが…)。

 

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『トラック野郎』シリーズ(1975年~)

・『トラック野郎 御意見無用』1975年  鈴木則文監督

『トラック野郎 爆走一番星』1975年 鈴木則文監督

『トラック野郎 望郷一番星』1976年 鈴木則文監督

『トラック野郎 天下御免』1976年 鈴木則文監督

『トラック野郎 度胸一番星』1977年 鈴木則文監督

『トラック野郎 男一匹桃次郎』1977年 鈴木則文監督

『トラック野郎 突撃一番星』1978年 鈴木則文監督

『トラック野郎 一番星北へ帰る』1978年 鈴木則文監督

『トラック野郎 熱風5000キロ』1979年 鈴木則文監督

『トラック野郎 故郷特急便』1979年 鈴木則文監督

 

任侠映画から離れて、今度はコメディ映画に進出。渥美清主演『男はつらいよ』シリーズと人気を二分した(らしい)文太アニキのもう一つの代表作。新たな魅力を見せつける文太アニイ、『仁義なき戦い』からわずか二年でこの転身ぶり。さすがです。

とはいえ、『まむしの兄弟』で見せたコミカルな演技、『関東テキヤ一家』などで組んだ鈴木則文監督が本シリーズを担当するなど、これまでの経験がバッチリいかされています。

どれも基本的な話の流れは同じではありますが後半にいくにしたがって「望郷」に関するエピソードが増えていきます。

監督も、文太アニイも相棒の愛川欽也ももうこの世にはいないのですが、作品は永遠に残ります。

最近元気がでない、という方もこのシリーズを観てバカ笑いしつつホロリとしましょう。

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菅原文太の五大シリーズを振り返ってみる まとめ

約10年の間にこれだけのシリーズに出演(もちろんこれ以外の作品でも多数主演)していることに驚きです。

残念なことはここで取り上げた全ての作品がおそらく民放でノーカットで放送されることはもうないだろうということです。

日本を代表する映画俳優でありながらその代表作がテレビで放送できない。不思議な国ですよね。

映画とテレビの役割の違いや時代の違いはもちろんありますので仕方ないでしょうが、どうでもいい「テレビ映画」を流すくらいだったらやくざ映画でも放送したほうがマシだよな、と思わないでもないです。

そんなわけで1970年代の東映に、そして邦画全体に新しい風を吹き込んだ文太アニキ。

その勇姿を私は今日も見つめ続けるのであります。

 

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