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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

慕情は国を越えて   鈴木則文『まむしの兄弟 恐喝三億円』(1973年)

邦画 ニャロ目 菅原文太 鈴木則文 任侠・やくざ映画

本日は『まむしの兄弟』シリーズから6作目の『恐喝三億円』を取り上げたいと思います! ちなみに『恐喝』と書いて『かつあげ』と読むみたいです。

 

かつあげで三億円なんて景気がいいったらありゃしないですね!(どうやら映画公開の5年前にいわゆる三億円事件があったらしい)

 

『トラック野郎』シリーズでおなじみの鈴木則文が監督したこの一本、はたしてどんな話なんでしょうか?

 

 

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まずは簡単に登場人物をご紹介!

 

・政(菅原文太)・・・まむしの兄弟。

・勝(川地民夫)・・・まむしの兄弟。当たりや稼業で一儲けしようとするも…。

・マオ(松方弘樹)・・・楊徳の下僕。幼少時、母親にわずかな金で楊徳に売られた。

・李麗花(堀越光恵)・・・本作のヒロイン。楊徳の愛娘。マオの魅力にゾッコン。

・李楊徳(河津清三郎)・・・神洋交易社長。ヘロインを安武に卸し、財を成す。

・安武弥一郎(渡辺文雄)・・・ヤクザ。安武組組長。表向きは多角経営の実業家。

 

 

恐喝はゴルフのあとで

 

政の出所シーンからスタート。

ところが勝が迎えにこない。どうしたものかと神戸に帰ると、勝は政が豪遊する金を作るために当たりやに挑戦、大怪我を負っていたのだった。

 

勝に車をぶつけたのは神洋交易の社長・李楊徳の愛娘、李麗花であった(政の命名:ラーメンのねえちゃん)。政と(ケガの癒えた)勝は李を強請るため彼らが滞在しているゴルフ場に向かう。

実は中国人である李楊徳はゴルフボールに麻薬を入れて輸入し、神戸のヤクザである安武組の運営するゴルフ場で取引していたのだった。

 

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まむしたちは300万円の小切手と麻薬とは知らずにゴルフボールを奪ってしまう。

 

楊徳は用心棒であるマオに小切手と麻薬の奪還命じ、マオはまむしたちを送ると言い、車で港に連れて行く。

その場で二人をのしてマオは小切手と麻薬の入ったゴルフボールを奪取。

 

その帰り、様子を見にきた麗花に「このままどこかに行かない?」と誘われる。マオはその誘いには乗らず李家に帰宅する。

 しかし、マオはただ単に楊徳の命に従ったわけではなかった。

 

マオは楊徳に麻薬を渡し、小切手はまむしたちを海に叩き込んだので奪えなかったと釈明する。

そのマオの部屋に麗花がやってくる。300万の小切手を見て、「パパを騙したのね。どれくらい溜め込んだの?」と笑う麗花。

マオの財布から落ちた写真と新聞記事に目を留める。それは母と息子の写真と健という息子を探す母親の新聞記事だった。

「これはあなたのママ…?」

マオを麗花を殴り写真と記事を奪い取る。

「何よ、5円で私のパパに売られた癖に! 自分を捨てたママでも会いたいのね!」

と罵る麗花であったがマオ(本名は広津健というらしい)に 押し倒されて手篭めにされてしまう…。

 

翌朝、まむしの兄弟たちが復讐しにくる。マオはなすすべもなく倒され、財布ごと300万の小切手を奪われそうになるが、麗花の懇願により財布は死守し、まむしたちは小切手のみを手に入れる。

麗花のマオに対する態度に違和感を覚えた楊徳はマオに言い含める。

「お前は中国人でもなければ日本人でもない。ただの野良犬だ。私に見捨てられたら生きていく術がないのだ」

マオは跪いて許しを請う。心配そうに聞き耳をたてる麗花。彼女の心はマオにすっかり惹きつけられてしまったようだ。

 

まむしたちは小切手をもとに豪遊する。支払いに小切手を使おうと試みるも当然受け付けてくれない。それならばタダでいいのか! とばかりに無銭飲食や窃盗を繰り返す暴れっぷり。

 

たまには情婦以外の女も抱きたいということで、女学生をナンパし、乱○パーティに突入しようとするもシンナーを吸わされ、いい気持ちになったところで300万円の小切手を奪われる。なんともトホホなまむしたち。

 

楊徳は娘に、もう少しで香港に帰り、静かな生活に入る。マオという番犬もいらない、二人だけの生活をしようと話す。

さらに楊徳は安武と三億円の大きな取引をしようと持ちかける。これを最後の取引として香港にて悠々自適の老後をすごそうという考えのようだ。

 安武も裏稼業は今回までとしてこれからは多角経営の実業家として仕事を大きくしていきたいとのこと。

 

さて、そんな安武はまむしの兄弟を捕まえ、小切手のありかを聞き出すためにリンチする。そこにマオが現れ、密室で安武に「明日、夕方五時」という取引時間を伝える。さらに小切手も無効届けをだしたのであまり事を荒立てないようにと進言。まむしたちはボロボロになりながらも釈放される。

 

仕返しとばかりにまむしたちは安武の経営するクラブで大暴れ、そこにいた麗花に止められ、彼女に一目ぼれしている政は素直に従う。

 

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翌日、楊徳は夕方に安武の事務所で行われる取引に備え、マオにショットガンを手渡す。社長室をでるとそこには麗花が。彼女はそこで初めて自分の父親の本当の稼業を知る。二人は麗花の車に乗り込む。その中で、マオは楊徳を裏切り今回の取引に絡む三億円を強奪することを告げる、三億あればどんな上等な血統書も買える、とお嬢様に話すマオ。惚れている麗花はマオについていくことを決意。

 

麗花はこの大仕事に備え、まむしの兄弟と協力してはどうかとアイデアをだす。

 

マオはまむしの兄弟にヘロイン10キロの取引について話す。儲けは半分ずつ。最初は乗り気ではなかった政だったが、マオの母親の話を聞いて、意見をかえる。それぞれ立場の違いはあれども、母親への慕情を持つことで共通するまむしとマオ。

「5円で売られたにいちゃんが3億円を奪う、おもしろいやんけ!」

「俺は中国にも日本にも国籍のない男。そんな俺でも組んでくれるのか?」

「国籍もヘチマも関係あるかい!」

こうしてまむしの兄弟とマオ・麗花は神洋交易と安武組に対して一泡吹かせることで合意する。

 

襲撃場所と落ち合う場所の打ち合わせを済ませ、ゴルフボール(中身はヘロイン)を積んだトラックを追跡する。

パパの命令だ、と偽って麗花がトラックを止め、まむしたちがトラックを奪い、走り出す。

マオは神洋交易の社員をボコボコにして麗花とともに逃げ出す。

 

強奪されたことを知った楊徳は安武に電話する。娘はマオに騙されている、娘だけは無事に捕まえてくれ、と頼む。

 

マオはまむしをオトリをする作戦を麗花に伝える。一方、勝もヘロインをこのまま自分たちのものにしようと政に伝える。しかし政はマオの身の上を考えて裏切ってはいかんと怒鳴る。

 

先に待ち合わせ場所に着いたマオたち。なかなか来ないまむしの兄弟、やはり日本人は信用してはいけない、騙されたんだ、とマオは思うものの、安武組の襲撃でボロボロになりながらもまむしたちは約束どおり到着する。

 マオは正直に、俺はお前さんたちを裏切りそうになったと告白するが、政は取り合わず、はよゴルフボールをトラックからそっちの車に移せと指示をする。

中国へ行っても仲良くするんやでと政は言葉をかけ、二組はそこで別れる。

 

マオと麗花の乗る車の前に、安武組が立ちはだかる。なす術もなく二人は銃弾の雨を受けて血まみれになり、息絶える。

その惨状を全てが終わってから見つけるまむしたち。

マオが放つことのできなかったショットガンを手に取り、安武組との弔い合戦へ向かう。

 

安武たちは事務所で奪ったヘロインの品定めをしていた。そこに楊徳があらわれ娘の居場所を聞くが、マオとともに始末したことを知り、さらに安武組組員に刺殺される。

 

遅れてまむしたちが現れ、激しい銃撃戦となる。最後は安武をショットガンで葬り、計27人を射殺し、物語は終わる。

 

鈴木則文の演出力

 

 マオと麗花が白昼の路上で射殺されるシーンはアメリカンニューシネマの『俺たちに明日はない』のラストのパロディなのですが、その銃撃を行う横一列に並んだ組員のシーンは、映画の冒頭にでてくる横一列にならんだばあさんたちの立ちションのシーンと似たような構図になっていて非常によかったです。

死と下ネタを同列に扱い、重ねあわせるような鈴木則文監督の演出に思わず拍手を送りたくなりました。

さ観客が見たいと思う映像をサービス精神満点でみせてくれる、ソクブン監督の面目躍如といったところでしょうか。

 

他にも幾つかポイントを挙げていきましょう。

作中にニセ夜間金庫が出てきますが、これは映画の公開の半年ほどまえ実際に起きた大阪のニセ夜間金庫事件をそっくりそのままネタとして使ったものと思われます。このようなフットワークの軽さというかお遊びもまた楽しいものです。

 

麗花のキャラクター形成もなかなか見事でした。

お嬢様で何不自由なく育てられていますが、用心棒兼使用人のマオの底知れない魅力にハマっていきます。父親を愛してはいるものの反発新も持ちあわせており、父親がヘロインの取引で大きな財産を気づいていることを知ると、全てを捨ててマオとの逃避行に身を委ねる無鉄砲さ、思い切りのよさもあります。

またマオに一度抱かれたことでより好きになってしまうという世間知らずさ、純情さも萌えポイントであります。

実はこの麗花も母親を早くに亡くしている模様。

母を思う気持ちは麗花もマオもまむしたちも実は共通していたのではないでしょうか。

また父の下僕として無表情で従う機械のようなマオという男にも、血の通った側面があることを知り、より惹かれていくようになったのでしょう。

麗花は大胆なチャイナ服を着ており、それもGOOD! なのでした。

 

さて、鈴木則文監督といえば個人的に小道具を使うことが巧みだなと常々感じているのですが、本作でもそれは発揮されていました。

それはカーネーションの花を使った演出です。

 

新開地で母の日のためのカーネーションを売っている子供たちから花を買う政。母親がいる人は赤いカーネーションを、亡くなられた人は白いカーネーションをということで政は白を買います。売っている当人に聞くと、その子は母親を亡くしたとのこと。お釣り分でみつ豆でも食べや、とお金を渡す政。自分と似たような境遇を持つ人間にはとても同情的だということがわかります(それはシリーズ全体でも共通しています)。

 

そしてマオが自分を捨てた母親に会いたがっていることを知る場面では、政はトラックに飾られていた赤いカーネーションをマオに渡します。マオが無事母親と再会できることを祈ってのことです。

 

しかし、そのマオは安武組の雨のような銃弾に無念にも倒れます。その血だまりの中でカーネーションの花びらも散ります。

その散ったカーネーションをマオの胸元にそっと戻してやる政。

やるせなさ・悲しさを見事に表現した素晴らしいシーンです。

 

その他にもさすがソクブン監督といいたくなるような丁寧なカメラワーク・画面づくりがなされていて、見ごたえのある作品に仕上がっております!

 

新しい明日のために最後の賭けに出て負けてしまった男とその無念を晴らした男。下ネタでデコレーションされていますが、民族関係までも組み入れた実にストレートな反抗/反逆の物語なのです!

 

 

そのほかの鈴木則文監督作品のレビュー↓

 

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