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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

映画はエロスなり  鈴木則文『エロ将軍と二十一人の愛妾』

今回は日本映画の誇る名監督、鈴木則文のアダルティーな作品『エロ将軍と二十一人の愛妾』(1972年、91分)を取り上げたいと思います。

 

けっこうTSUTAYAさんなんかにも置いてありますので、手に取りやすい作品ですが、インパクトのあるタイトルを持つ本作、一体どんな作品なんでしょうか。

 

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将軍と百姓

簡単にいってしまうと、百姓の角助が将軍である徳川家斉とひょんなことから入れかわって色事に耽り、やがては命を落とすという話です。

 

ひょんなことからと書きましたが、具体的にいうと、読書が好きで頭の切れる家斉(豊千代)は先代により(というより田沼意次の意向により)指名され、将軍になります。ですが、色事にうとく、案じた家来たちの計らいにより、事前に吉原で筆おろしを済ますことになりますが、それが大変、将軍と花魁の体は性器を軸としてくっつき離れない、世に言う膣痙攣に見舞われてしまいます。

 

義賊・女鼠小僧の一計により、田舎からでてきた角助という家斉にクリソツな男を将軍として替え玉にしてしまいます。

 

この角助という男、生まれた時に手に避妊具を握っていたというから、根っからの女好き。故郷に残してきたお菊に、出世したら江戸に呼び寄せるとは誓いますが、将軍に成り代わってからは、大奥で好き勝手に女性を抱きまくります。また好き者だけあって、精力も有り余っており、二人、三人と続けざまに平らげていきます。女性を賛美しつつ、己の欲望を解き放つ。美しい映像が続いていきます。

 

一方、田沼としてはそろそろ角助にお役ごめんと言いたいところでしたが、失敗してしまいます。

 

色欲に狂い、自分の立場が危うくなりつつあった角助は理性を失い、女鼠小僧(=お吉)と情を交わした後に命果ててしまいます。

 

お吉は金との引き換えで、豊千代を再び家斉として秘密裏に復帰させます。しかしながら、女性恐怖に陥った影響なのか家斉は子宝に恵まれず、角助が大奥の女性たちとのあいだに残した子種が人知れず徳川家を継いでいくことになる…という徳川三百年の闇に隠されてしまった真実を描くお話なのです(もちろん史実じゃありませんよ!)

 

 

鈴木則文の演出術1  情欲

池玲子(女鼠小僧、お吉)や杉本美樹(茂子)といった東映ポルノ路線のスター女優たちの濡れ場が繰り広げられる映画であります。

 

ちなみにポルノという言葉は池玲子を売り出すために鈴木監督とプロデューサーの天尾完次が発明したそうですよ。

 

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この映画は鈴木監督らしく、物語の終盤に派手な「お祭り」シーンが登場します。同監督の『トラック野郎』シリーズでもいろいろな形で「お祭り」が描かれてますが、この作品も負けてはいません。

 

自らの正体が露見しかけてたことから精神を病んだ角助。髪も乱れ、憔悴しきった彼は、罪人たちに対し、大奥の女と交われ、交わった者は無罪放免とするというお達しを出します。

 

大奥の畳の上を罪人たちが歓喜の声とともに画面奥から手前に向かい躍動するさまは、まさしく性のほとばしり=エクスタシーを覚えるような素晴らしいシーンです。

 

やがて大奥は乱交状態となり、その中を異常をきたした角助がとぼとぼと歩く場面も見事であります。

 

その後、角助は座敷に飾られている三つ葉葵の紋をめちゃくちゃに切りつけたあと、憧れの女性でもあったお吉に救いを求めるように抱きつき、二人を情を交わし、前述したとおり角助は息絶えます。

 

その死に様とともにカメラは紋の中心につき立てられた刀を写します。

 

お上の政争に利用されたことに対する怒り(まあ、その分いい思いも十分したのではないかと思いますが…)と最後に屹立した角助の男性自身を模していることは明らかです。このショットを観た時、さすが鈴木則文、やるなー! と感服しました。

 

そのほかには工夫をこらしたエロティックなシーンがいくつもあり、構図の勉強にもなりつつ、ちゃんと話も面白い、下ネタも最高! な文句なしの映画です。

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鈴木則文の演出術2  人情

さて、下ネタの中にも人情ネタをぶちこんでくるのが得意技の鈴木則文監督。常々、映画は下品なものだし、娯楽映画なんだから観て面白ければそれでいい、という大変潔い監督なのです。

 

で、この映画における人情ネタといえば、主人公角助とお菊の関係。

 

元々、将来は祝言をあげる予定だったのですが、角助が江戸にでて将軍に仕立て上げられたことから変化します。

 

自分が出世したことを見せるために村からお菊を呼び寄せた角助。

 

お菊はそんな角助が心配で、こんなあぶくみたいな生活はとっととやめて村に戻れと諭します。

 

もちろん、角助は断ります。性欲は満たされるし、政治にも関心がでてきた様子。お菊はそれならと女中でもなんでもいいので自分を城に残してくれ、心配だからそばで様子を見たいといい、角助も認めます。なんて、健気な女性なのでしょう。

 

角助の夢のような生活はそのうち破綻することは誰の目にも明らかです。しかし、角助は欲に目がくらんで引き際というものを理解できないのです。そんなどうしようもない男のために、大奥の女性の身のまわりの世話をするお菊。泣けますねー。

 

そんな二人を象徴する小道具として登場するのが、おはぎ

 

村で角助がお菊の寝込みを襲おうとしたときにでてきます。角助はお菊が作ったおはぎが好きで見つけるとすぐ口に入れるんですよね。まあ、大変直情的ですよね。江戸でもお菊はちゃんとおはぎを作ってもっていくのです。うれしそうに食べる角助。微笑ましくも、二人の関係性がよくわかる素朴なものをポッと画面にいれてくるセンス。さすが鈴木則文(2回目)という感じです。大変素晴らしい。

 

また、女鼠小僧がこの映画では色々と画策しているのですが、その目的は金です。義賊であるので、庶民のためにお上から金を引き出すために体を張っているのです。この庶民とお上という権力構造・貧富の関係性を組み込みのも鈴木監督らしいですね。

 

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鈴木則文の演出術3  セット

自分はあまり時代劇を見ないのでちょっと驚いたのですが、この映画、一応アダルト映画ということになっているのですが、セットのこだわりがすごいです。

 

普通に時代劇としても見れるようなレベルで城内が作られています。

 

角助が家斉に成りすまして、家来(大名?)たちの前に初登場するシーンも、セットを活かして、かなり大きいスケールで描写されています。

 

鈴木則文ならではの丁寧で上品なカメラワークとともに、「時代劇の東映」のしっかりした世界観設定(たとえそれが史実と違ってもいいのです。それらしく見えれば…)が作品に「作品は嘘だけど嘘をきちんと保証するリアリティ」を感じます。

 

ただのエロ映画と侮るなかれ、なかなか力が入っていて、それなりのお金もかかってるんじゃないか? と思わされますよ。

 

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そんなわけで今回は鈴木監督の『エロ将軍と二十一人の愛妾』を取り上げてみました。今後も鈴木監督は度々レビューしていきたいと思いますので、ご期待下さい。

 

女性も男性もお偉いさんも貧乏人も、ぜひぜひこの素晴らしい映画を観てみてくださいね!

 

性とともに、映画は誰の前でも「平等」なのですから…。

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