シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

松方弘樹出演のヤクザ映画を振り返る

近年、映画関係の大御所たちが鬼籍に入ることが多くなっています。

私が好きな任侠・ヤクザ映画でも高倉健菅原文太安藤昇、曽根晴美・・・。

 

ヤクザ映画の黄金期がすでに40年前ですので亡くなる方が多いのも仕方ないことです。 しかし、実際に訃報を耳にするとやはり寂しい気分になるものです。

 

上記の名優に続いて、松方弘樹も亡くなりました(享年74歳)。 

これまでも度々病状が伝えられていましたが「ついに来てしまったか」というのが一映画ファンの素直な反応です。

 

本稿では日本映画史にその名を刻んだスター・松方弘樹の軌跡をヤクザ映画を中心とした視点で振り返って行きたいと思います。

 

仁義なき戦い』シリーズ(1973年~)

松方×ヤクザといえば『仁義なき戦い』シリーズ(無印のほう)。5作中、3作に出演、その全てで非業の死を遂げる役回りです。

本シリーズは見た目や演技力に秀でた幾人もの俳優が出演していたため、各人工夫を凝らして出演していました。

一作目の『仁義なき戦い』では、10歳近く年上の菅原文太とほぼ対等のキャラクターを演じるために冷たい水とお湯に顔突っ込んで無理矢理顔にシワを作ってみたり、サングラスを印象づけて顔の若さを隠したりしていました。

その甲斐あってか、演じた坂井役は非常に印象深く、作品中盤から後半を引っ張っていく重要なキャラクターとなりました。名台詞を多く、松方弘樹といえば自分はこの役を思い出します。

『頂上作戦』の義西会の藤田は病弱で度々咳き込むという役回りでした。そのため顔を黒くメイクしていました。会長の仇討ちを悲願としつつ、病状が悪化していくなか、意外な人物に殺されるという無念さを見事に演じきっていました。

『完結編』では好戦的な市岡を演じました。目の中に朱の色を入れて、充血させなんとも不気味な顔面を作り上げています。刑務所内の菅原文太を焚きつけるなどまさにイケイケでしたが路上にて撃ち殺されてしまいます。

 

それぞれ印象の異なるヤクザを演じわける松方弘樹。当然、彼を語るには外せないシリーズです。

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松方弘樹脱獄三部作』シリーズ(1974年)

松方弘樹が主演した作品群としてぜひ見ておきたいのが、東映の「脱獄三部作」。これは正式なシリーズではないものの、似たようなテイストを持つ三作品をまとめてこう呼ぶそうです。

『脱獄広島殺人囚』、『暴動島根刑務所』、『強盗放火殺人囚』という東映テイスト溢れるタイトルで観なくてもなんとなく内容が把握できそうな感じですが、観てみたら予想以上に面白い。

初めて見る方には『脱獄広島殺人囚』がオススメ。脱獄する度にしょうもないことで見つかり連れ戻されてしまうズッコケ感が理屈抜きで笑えますよ。

『暴動島根刑務所』はそのタイトル通り暴動に焦点があてられており、シリアス成分が増しています。北大路欣也との共演もみものです。

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 『強盗放火殺人囚』では若山富三郎と共演。人間の「情」の部分がピックアップされており、『まむしの兄弟』や『トラック野郎』がお好きな方も楽しく観られますよ。

このシリーズでは松方弘樹東映の理屈抜きの肉体性を感じられて、見応えあります。

ぜひ三作まとめて観て、それぞれの色の違いを感じてみましょう!

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『まむしの兄弟 恐喝三億円』(1973年)

松方アニキは菅原文太・川地民夫主演の『まむしの兄弟』シリーズにも出演しています。

鈴木則文監督作品『まむしの兄弟 恐喝三億円』です。

マオという日本人でも中国人でもない「どこにもいない男」を演じている松方弘樹

則文演出もあいまって名作に仕上がっています。

松方もクールかつ気概のある役を見事に演じています。

わりとレンタルショップでも置かれている作品ですので手に取りやすいのではないでしょうか。

詳しくはこちらのレビューをごらん下さい! けっこう詳しく書いてます!

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『沖縄やくざ戦争』(1976年)

松方弘樹主演のやくざ映画といえば、この『沖縄やくざ戦争』も忘れてはなりません。

汗の似合う松方と沖縄。素晴らしい組み合わせです。

中島貞夫監督、千葉真一出演など当時のイケイケな制作陣が結集しております。

都合により沖縄ロケが出来なかったようですが、架空の「沖縄」がきちんとそこに映し出されています。

千葉真一が死ぬまでが前半、その後の松方パートが後半といった作りになっており、『仁義なき戦い』しかヤクザ映画を観たことがない人でも熱中できるクオリティの作品です。

ちなみに似たようなタイトルの『沖縄10年戦争』という映画にも松方アニキは主演しています!

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『恐喝こそわが人生』(1968年)

松竹にて深作欣二が監督した『恐喝こそわが人生』。松方弘樹主演の、ゆすり・恐喝組織の暴れっぷりを描いた傑作です。

松方アニキの見た目も若々しく、『仁義なき戦い』以前の映画ということもあり、そこまで知名度はないかもしれませんが、また違った魅力を観られます。モダンな音楽もおしゃれですよ。

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『暴力金脈』(1975年)

松方弘樹主演映画のなかで自分が最も好きな一本がこちら『暴力金脈』。

若手総会屋の成り上がりを描いた作品で、次々でてくるライバルとの戦いは問答無用で面白いです。

映画のプレビューを観てみればその面白さは一目瞭然。

雰囲気的に『恐喝こそわが人生』と似たようなものを感じとれます。

盟友・梅宮辰夫も非常にいい味を出しています。笑いあり涙ありの傑作です。

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県警対組織暴力』(1975年) 

相性のいい菅原文太とのW主演作品である『県警対組織暴力』。

松方弘樹はヤクザを演じ、菅原文太演じる警察官と内通しています。その二人の男の友情が次第に軋んでいく、その過程が見事に描かれています。

こちらもヤクザ映画では有名な一本で、割とどこのレンタルショップでも見かけますので未見の方にはぜひ見てほしいです。

ちなみに近年、続編の企画もあったことが本人インタビューで発覚しております。

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『北陸代理戦争』(1977年)

仁義なき戦い』から始まった東映実録ヤクザ映画ブームの全盛期はわずか5年で終わったといわれています。

そのブームの最後の作品といわれているのが松方弘樹主演の『北陸代理戦争』です。

その名の通り、北陸・福井のヤクザの抗争を描いた本作はその凄まじい内容もさることながら、上映終了後に松方演じた主役のモデルとなった組長が映画と似たような状況で殺されてしまうという事件も起きたという曰くつき作品です。

リアルを娯楽作品へと昇華させた東映実録路線でしたが、その映画に再度リアルが絡んできてしまったというわけです。

雪の舞い散る寒さの中、恫喝する松方、血まみれになる松方、雄叫びをあげる松方。

大暴れする松方アニキの姿を見ることができます!

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松方弘樹出演のヤクザ映画を振り返る』まとめ

非常に駆け足での紹介になり、恐縮ですが、いかがでしたでしょうか。各作品の詳細はリンク先を参照していただければと思います。

ここで取り上げた作品以外にも『現代やくざ 盃返します』(1971年)での演技も素晴らしいですし、『広島仁義 人質奪回作戦』(1976年)の小林旭との熱い共演もよかった。80年代に入っても、『修羅の群れ』、『最後の博徒』で実録ヤクザ路線に起用されています。松方弘樹アニキについては簡単に語りつくすことが出来ません。

かつて日本中が熱狂したヤクザ映画。その中でも菅原文太らの活躍に刺激を受けつつ、独特のキャラクターを作り出した名優、松方弘樹

日本映画史に刻まれた彼はこれからも、DVDやブルーレイ、PC画面や映画館、タブレットスマートフォンの画面など様々な「スクリーン」で観客を楽しませることでしょう。

 

無冠の男  松方弘樹伝

無冠の男 松方弘樹伝

 

 

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