シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

父は待っている/クリストファー・ノーラン「インターステラー」感想&解説

インターステラー(字幕版)

 

かつての世界は、宇宙開発競争を征することこそが世界を先駆けることにつながると信じていました。

宇宙に飛び出し、月に到達した人類は、その副産物として様々な恩恵を得た。

そして、そらを見上げる少年・少女たちの心に、輝かしい未来を想像させたものです。

 

現在、宇宙飛行士になりたい、という人は、どれくらいの人数いるでしょうか。

宇宙へのあこがれが多く物語を生みだしましたが、正直、近年においては宇宙への思いというのは、いまひとつといった印象がぬぐえません。

クリストファー・ノーランが監督した「インター・ステラー」は、宇宙進出をあきらめた人類が、再び、宇宙を目指す、という物語です。

インターステラーは、ちょっとだけ小難しい物語ですが、SF的な設定を押さえておけば、存分に楽しむことができる物語ですので、ちょこっと解説しつつ、楽しんでみたいと思います。

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話のプロットは、宇宙戦艦ヤマト


日本におけるSFものの王道の中に、宇宙戦艦ヤマトをいれても大きく異論はでてこないのではないでしょう。

 

宇宙を舞台にした物語という点では、まさにSFです(大雑把なくくりですが)。

宇宙戦艦ヤマトは、みなさんご存じの通り、放射能の影響によって地球の環境が悪化してしまった時代の物語です。

 

本来は地球全体が一丸となって地球を守ろうとするべきなのでしょうが、人類はお互いの足を引っ張り合いながら、ゆるやかに自滅に向かっています。

しかし、かつての戦艦ヤマトを宇宙戦艦につくりかえ、人類を救済するアイテムである、コスモクリーナーを手に入れるため、仲間であるはずの地球の軍隊に追われ、デスラー総統率いるまるまる軍団と戦いながら、戦艦ヤマトは、艦長や乗組員が己の信念を貫こうとする漢(おとこ)の物語です。

 

宇宙戦艦ヤマト DVD MEMORIAL BOX

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さて、インターステラーも、話の内容としては同じようなものです。

異常気象の影響等により、農作物がとれなくなった世界。このままでは人類は飢えてしまう中で、宇宙開発はストップし、飛行機を飛ぶということすら10年前になくなってしまった世界です。

そんな中、食糧危機から人類を救うため、謎の高次元生物(?)に導かれ、宇宙に移住可能な星をもとめて、旅立つ、という物語です。

信念によって、救う価値がないかもしれないものを、なんとかして救おうとすることが、ヤマトにしても、インターステラーにしても重要なのがわかってきます。

人類は、衰退しました。

主人公のニックは、優秀な農業者です。

食料が枯渇しようとしている人類にとってすれば、機械に詳しく、知識もある人間が必要であり、まわりの人間は彼に農業者としての優秀さを求めています。

 

10年前に空軍が廃止された世界の中ではありますが、現在のテクノロジーよりはるかに優れた時代があったことが暗示されています。

それは、インド製による無人機の存在です。

太陽光によって半永久的に跳び続ける飛行機を、主人公は子供たちをひきつれて追いつき、操作を乗っ取ってしまいます。

その無軌道さは、ハラハラさせられます。

「この飛行機は、このままにしちゃだめなの?」

と、娘は聞きますが、彼は

「新しい世界に順応させるのさ。俺たちみたいにな」

といって、飛行機を車に乗せます。

 

この時点で、宇宙はおろか、空を飛ぶことすら認められない世界になり、かつての技術はすべて農業技術につかわれる、ということがわかる場面になっています。

確実に人類は終焉に向かっているのです。

これは、親子の物語。

彼には子供が二人います。

息子と、非常に優秀な娘です。

彼の家庭は、非常に知的です。

勉強が好きな二人の子供に恵まれていますが、娘のほうが、主人公と精神的には近い存在となっています。


娘の部屋で発生するポルダーガイストの原因をつきとめる過程で、彼はとあるメッセージを発見します。

そこに行くと、すでに解体されたはずのNASAアメリカ航空宇宙局)が極秘で、宇宙開発を進めていたことがあきらかになります。

滅び行く地球を捨て、外宇宙への脱出が計画されていた、というところから、物語は本格的なはじまりを告げます。


この物語のポイントは、宇宙に興味を失ってしまった人類が、宇宙に救いを求める、という点です。

主人公は、人類の命運を背負って、はるか宇宙へと旅にでるのです。

 

ウラシマ効果? 


SF的な知識がない状態でこの映画をみた場合に、どうしても意味がわからない部分がでてくると思います。


それは、重力の強い星にいくと、地球よりも時間がたつのが遅い、という事柄です。

詳しい説明は省きますが、俗にいわれるウラシマ効果とよばれるものがこの映画の悲哀を強めている部分になっています。

ウラシマ効果をはじめて本格的に扱ったアニメとして有名なのは、岡田としお率いるガイナックッスがつくりあげたオリジナルビデオアニメ「トップをねらえ」です。

宇宙怪獣の侵略に備え、バスターマシンに乗る少女たちの壮絶な訓練と戦いを描いた物語です。

 

トップをねらえ! Blu-ray Box

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その中で特に重要な要素というのが、光の速度を超えた早さの中では、まわりの世界に比べてゆっくりと時間が流れる、というものです。

トップをねらえでは、主人公にとっては1時間にも満たない時間ですが、戦闘が行われます。

ですが、帰ってきたときには数年の月日が流れてしまうというSF的悲劇を取り扱っています。

そのため、バスターマシンの操縦者である女性が、命が短い教官に恋しているにも関わらず、宇宙怪獣を倒しにいって戻ってきたときには、教官は死んでいるかもしれない。

同い年だった友人が、戻ってきたときには、結婚して子供までいる。

浦島太郎の物語のように、竜宮城から戻ってきたときには、まわりの人間はとっくに死んでいて、たった一人になってしまうという悲劇。

それになぞらえて、俗にウラシマ効果と呼ばれる現象がありますが、その他人と自分との時間がずれていく、という恐怖が「インターステラー」を見るときにも重要な事柄になっているので、それだけ念頭においていただければ、主人公がなぜあんなにも焦るのかがわかるのです。

 

インターステラーにおいても、その原理が働いていて、重力の強いところにいくと、その星の流れはゆっくりしている、遅いため、周りが早く。

相対的に、地球にいる人間は早く年が過ぎ、主人公たちにとっては、数十分にもみたない時間になってしまう。

そのため、

「1時間この星にいると、地球では7年の時間がすぎる」

という、わけのわからないことになってしまうのです。


この映画では、主人公と娘は仲違いしたまま宇宙に旅だってしまいます。
9歳だった娘。

主人公が1時間過ごす間に、娘は16歳になってしまうのです。

そんな光の速度を超えたり、重力によって引き起こされるSF的な設定を知った上でみることで、インターステラーの物事がわかってくるようになってきます。

あっと言う間に大人になる子供

主人公が宇宙船から戻ってくると、27年の月日が流れていました。

その間に、子供からのメッセージが届くのですが、あっと言う間に時は過ぎ、そして、父は死んだものだとしてあきらめてしまうというメッセージが届きます。

宇宙というものすごい距離が離れた状態が生み出す悲劇です。

このような、距離が離れることでメッセージが伝わらなくなり、同じ時間を過ごせなくなるというのを恋愛要素をメインにとりあげたもので有名なアニメ映画は、深海誠監督「ほしのこえ」だったりします。

 

ほしのこえ [DVD]

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愛は時空を超える。

さらに、SF的がアイテムがでてきます。

それは、5次元の考えです。

映画の中で説明されているので、詳しい説明はしませんが、人類の進化した存在だと考えていただければいいかと思います。

3次元は、我々が生きている世界。
4次元は、そこに時間という概念がある世界。
5次元は、さらにその上です。

次元と言う考え方も、何を基点にして考えるかで異なりますので、とりあえず、そんなものだと考えていただければと思います。

また、その進化だなんだということを考えていたらわけがわからなくなりますので、別の映画の引用をしてみたいと思います。

このあたりの考えは、スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」をみている方は、想像に難しくないと思います。

2001年宇宙の旅は、宇宙船のプログラムHALが暴走し、人類に反乱をおこす、というのが大枠の物語です。

 

2001年宇宙の旅 (字幕版)
 

 

映画の中では、映画の冒頭で、サルだった人類が、モノリスとよばれる黒い板のような存在の力で、道具を覚え、それがやがて、宇宙へ進出する道具へと発展してくのをわずかな場面で一気に説明します。

この物語では、モノリスという存在が人類の成長を助けた、のだというところで終わるのですが、インターステラーの中ででてくる、人間を補助するロボットは、そのモノリスそっくりの機械なのです。

遙かに進化した人類は、やがて、時空を超えた存在になっている、というのが、インターステラーでも引き継がれているのです。

娘のもとで起こったぽるダーガイストの正体もまた、物語の最期にあきらかになりますが、それは映画をご覧頂くとして、この物語は、宇宙進出や、未知の存在への好奇心こそが、人類を進化させるカギだと、言っているのです。

 

現代の我々が生きる世界でも、宇宙開発というのは存在感が薄くなってしまっているのが実情です。

宇宙ものの漫画でいえば、宇宙兄弟などがヒットしましたが、内向きに進化していしまっている人類を、再び外に向けるのは、宇宙への憧れなのかも、しれません。

 

宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス)

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以上、『父は待っている/クリストファー・ノーランインターステラー」感想&解説』でした!

 

当ブログで扱っている、別の宇宙を舞台にした映画の記事は以下となっています。

 

cinematoblog.hatenablog.com

  

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