シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

シリーズ3作目! 『仁義なき戦い 代理戦争』(1973年)

番外編であるニ作目『広島死闘篇』を挟んだ三作目。一作目の実質的な続編となり、四作目『頂上作戦』とセットの作品でもあります。

ますます人間関係は複雑怪奇、抗争の規模も呉だけではなく広島市、そして神戸の大組織が絡んでくるなど波乱に満ちた展開が描かれます。

 

村岡組跡目争い、そして代理戦争へ

大友勝利らの逮捕などにより、大友組との抗争を切り抜けた村岡組。広島市最大のやくざ組織の座を磐石のものにしますが、組長村岡常夫は体調不良により病床に伏すことに。彼の舎弟であり組内でも実力者であった杉原が跡目を継ぐことが予想されていましたが、広能、打本らといた時にチンピラに銃撃されあえなく死亡。

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杉原の兄弟分である打本が組長候補に躍り出ましたがその兄弟分の弔い合戦を避ける消極的な態度を見せてしまい、周囲に不信感を抱かせてしまいます。

あせる打本は盃外交を開始。村岡組内外の実力者と次々と兄弟になっていき、果ては神戸の大組織である明石組との繋がりを求めて、幹部と盃を交わします。

しかし、そのような態度が「広島を外に売り渡した」と村岡組長に嫌われ、呉の山守組長に跡目を譲ることになります。

山守は打本に対抗し、明石組の敵対組織である神戸の神和会の神代会長と五分の盃を交わします。

広島は「打本組・明石組派」と「村岡組・神和会派」に二分され、神戸の二大やくざの代理戦争へと突入します。打本に明石組を紹介した広能もその争いに巻き込まれていきます。

広島ヤクザ抗争全史 (幻冬舎アウトロー文庫)

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蠢くやくざたち

・ 広能昌三(菅原文太

呉にて広能組を営む(シノギがスクラップ工場の番)。まだ刑期が残っている身で自由に動くことができないらしい。呉の長老・大久保のすすめにより、反目していた山守組に復帰する。

しかし相変わらず意見のあわない山守よりも村岡組後継者候補である打本につき、彼を明石組幹部岩井に紹介する。

そんな打本とも対立しながらも、村岡組組長に納まった山守に対抗する必要があるため、大久保を使い、打本と関係の悪くなった村岡組幹部連中を和解させる。明石組・神和会(村岡組側についた)との抗争に山守を巻き込み、引退に追い込むつもりであったがついに武田に破門されたため、村岡組を抜けることとなる。 

 

・山守義雄(金子信雄

呉・山守組組長。広島・村岡組後継者争いの情報を引き出す目的で広能の身元引受人を大久保から引き継ぐ。さらに村岡組長の病気による引退で、二代目村岡組長の座が転がりこんでくる。明石組を背後に大きな顔をする打本との間に抗争が発生。その明石組のライバル組織である神戸・神和会会長と五分の盃を交わす。広能にカタギになることを要求。

 

・村岡常夫(名和宏)

村岡組組長。二作目『広島死闘篇』では大活躍(?)であったが今回は病気療養中であり、ついに引退することを決める。打本ら幹部連中が決め手に欠けたため山守組長を二代目に据えてしまい、それが混乱の元に。

 

・打本昇(加藤武

打本組組長。杉原の死により村岡組後継者の有力候補に踊りでる。広能、武田らに兄弟分の杉原の仇を討つことを提案されるも、煮えきらぬ態度を取り失望させてしまう。それでも広能や村岡組幹部と兄弟盃を交わし、若手の広島やくざでトップの立場になる。彼のいうところの「国際外交」により明石組幹部の相原と盃を交わす。しかし、村岡組後継争いに敗れ、山守と対立。

その山守との争いが岩国における浜崎(槇原の兄弟分)・小森(打本の舎弟)の代理戦争となる。そんな中、広能、武田らに愛想をつかされ盃を返される。彼らの襲撃を恐れ、子分の早川らをほっぽりだして神戸へ逃走。山守に詫びとして指を詰める。

その後、明石組の威光を背に、浜崎・小森の抗争の仲裁人となり、その席で広能や松永たちとも表面的に和解。明石組長とも念願の親子の盃を交わし、明石組中国支部打本組として山守に対し優位に立つ。神和会と山守が手を結び、広能が村岡組から破門されたことを受け武田らに絶縁状をだす。作中では臆病かつ尊大な態度を取る小物として描かれる。

 

・岩井信一(梅宮辰夫)

明石組幹部。モデルは山口組山本健一。広能とは「しょうちゃん」「しんちゃん」の仲。

広能の放免祝いのプロレス興行に顔を出すが、博多事件で明石組組員を大量動員したため警察に逮捕されたため、作中ではしばらく出番がない。保釈された後、広能を山守組のトップにしようと目論むが当の本人が乗り気ではなかった。この頃、明石組は中国地方進出の思惑があったため広能を担ぎ出そうとしていたのだ。

 

・武田明(小林旭

村岡組幹部。病気がちなこともあり、後継者レースで自ら候補を外れる。その後、病気が再発し入院。神戸・明石組と関係が深い広能を目障りに思う山守により、村岡組若頭に任命される。早速、明石組のライバルである神和会との縁組を成功させる。

その後、明石組幹部たちの説得により、広能、松永らとともに打本と元通り手打ちするものの最後には広能を組から追い出すこととなる。

 

・松永弘(成田三樹夫

村岡組若頭。江田に遠慮して後継候補から外れる。ピンチヒッター的人事として山守に二代目組長の座を渡し、その後広能含めた村岡組内外の候補から改めて三代目を出すことを提案するも、山村・村岡組、広能組・打本会どちらに加担するかを武田に迫られ、どちらにもつくつもりはないとしてやくざ稼業から足を洗う。クールで知的なキャラクターで『広島死闘篇』にも登場していたが本作を持って舞台から去る。

 

・江田省一(山城新伍

村岡組幹部。武闘派。現在の村岡組を築いた功労者でもある。長年の服役をした苦労が評価され、跡目の候補でもあったが女狂いが災いし、外される。画面にでてくるたびにだいたい何かをパクついている食いしん坊。

 

・早川英男(室田日出男

打本組幹部。しかし打本に愛想をつかし組長を批判、山守のもとへ。舌の根も乾かぬうちに打本の側に神戸・明石組がついていたため再び打本のもとへ舞い戻る。が、村岡組幹部連中との盃直しに反対したため明石組の意向を受けた打本に破門される。

改めて村岡組へ舞い戻るための手土産として打本組を襲撃する。

 

・相原重雄(遠藤辰雄

明石組幹部。モデルは山口組の安原政雄。明石組組長に近づきたい打本の兄貴分となる。全国制覇の一環としての中国地方進出に打本を利用したかったのだが彼の優柔不断な態度を嫌う。

 

・宮地輝男(山本麟一)

明石組幹部。モデルは山口組、地道行雄。相原らとともに明石組を代表して度々広島を訪れる。

 

・槇原政吉(田中邦衛

山守組幹部、槇原組組長。山口県岩国・浜崎組組長の兄貴分でもある。その浜崎が小森組と揉めたことにより、抗争に直接介入して戦果をあげようとするも、広能や松永らにハシゴを外されアタフタ。報復として広能にヒットマンを飛ばすも失敗。逆に広能の子分に命を狙われるも西条の密告により未然に防ぐことに成功する。

 

・西条勝治(川谷拓三)

広能組組員。自らの不始末のため、ナタで手首から上を切断し詫びる。広能が命を狙われたため、倉元に槇原を殺れとそそのかし、自分の女を抱かせる。その女は倉元にすっかり惚れてしまったため、槇原に倉元の行動を知らせて自分は東京へと逃亡する。

 

・上田利男(曽根晴美)

上田組組長。広能と山守の関係修復を目論む呉の長老・大久保に頼まれ兄貴分の広能に話を持っていく。冒頭と終盤以外、あまり出番がない。第一部で殺害されたほうの上田は実の兄。

 

・倉元猛(渡瀬恒彦)

工員、のち広能組組員。屋台でプロレスラーと喧嘩になり、相手の耳を包丁でそぎ落とす。父親も極道だったが喧嘩で死んだとのこと。広能のそばで極道の修行をする。「かあちゃん」とのエピソードは少ないながらも涙なしではみれない(泣)。

広能の謀殺しようとした槇原を襲撃するも討ちきれず、勝手な行動をしたとして広能に折檻される。

早川組による打本組の襲撃を聞き、反撃だと湧き上がる広能組の中でたまたま槇原の居場所を知り、改めて襲撃に行くも西条の密告により待ち構えていた槇原組員に射殺される。

 

・杉原文雄(鈴木康弘

村岡組組長の舎弟。療養中の組長に代わって実権を握っており、次期組長最有力候補だったが白昼堂々、賭場でのトラブルで恨みを買っていた九州やくざの送り込んだヒットマンにより射殺される。広能とも仲が良かった様子。

 

・神代巳之吉(和田真士)

 神戸・神和会会長。モデルは本多仁介。地元のライバル組織である明石組が広島に進出したため、対抗馬としての山守と五分の兄弟盃を交わし、広島抗争を代理戦争とする。

・豊田良平(堀正夫)

山口・豊田会会長。岩国での浜崎・小森の抗争の仲裁に入る。また、村岡組・山守と神戸・神和会との盃を取り持つなど随所で活躍。

仁義なき戦い 浪漫アルバム

仁義なき戦い 浪漫アルバム

 

 

そしてまだ争いは続く… 

アメリカとソ連イデオロギー対立による世界各地での闘争。それを広島抗争にも当てはめるというオープニング。地球規模であれ広島での抗争であれ、構造は同じだと示唆しています。そして、戦いの犠牲になるのは何も知らず、力もない若者であるということもエンディングで明かされるのです。

なんと素晴らしい構成でしょうか。

中身では複雑な人間関係を描いて、最初と最後はピシっと締める。さすが脚本家・笠原和夫です。

第一部とは異なり、広能は自ら手を下すことはなく(組員には指導のため折檻しますが…)、山村ー打本との抗争に神戸を介入させるなど暗躍します。

そういうわけで必然的に本作は、顔を見合わせて会談する場面が非常に多く、そこでの言葉のやりとりが実質的な「戦い」となるわけですね。

自分の好きな場面は、村岡組長の引退表明を受けて、広能、松永、武田が喫茶店で会談するシーン。途中に偶然、打本も入ってくるのですが言い争いから広能と仲違い。結果的に山守に二代目組長の座を渡すことになる部分です。この場面で、後の山守ー打本抗争の火種が発生し、しかも打本にも全幅の信頼をおけず、かといって山守を推すことになるのも、と煩悶する広能にグッときます。まるで誰を知事にしたらいいのだろうと悩む東京都民みたいです(時事ネタ)。

その直前の、母親に洋モクを差し出す倉元の演技もいいし、思い出に残る場面でございます。

 

で、その倉元ですが彼が「抗争の犠牲者」であるところの「若い命」を代表しております。チンピラを演じさせたら日本一の渡瀬恒彦。本作でも素晴らしい表情を見せてくれます。骨になってまで母親を泣かせる親不孝者。彼を見ていると下っ端やくざの悲哀がビンビン伝わってくるのです。

仁義なき戦い 代理戦争』感想・評価 まとめ

というわけで『代理戦争』は次作の『頂上作戦』へと繋がっていきます。広島抗争は終結する気配を見せず、むしろ過激化していくのです。

本作は会議中心で、抗争シーンはたまにしかでてこないため、一般的なやくざ映画のイメージとは異なる印象を与えるかもしれませんが、その話し合いのバチバチ感溢れるやりとりを好む方も多いようです。派手な抗争が好きな方は一作目、叙情的な物語が好きな方は二作目というふうに分かれるように思います。ちなみに自分はどの作品も好きですが、一番観ているのはファーストかセカンドですね。

仁義なき戦い 代理戦争 [DVD]

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 一作目の感想はこちら!

cinematoblog.hatenablog.com

 

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