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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

映画は暴力なり 深作欣二『仁義なき戦い』(1973年)

あまりに有名すぎる本作品。

作監督語るところによれば、この作品のテーマは一貫して「暴力」。

その後の映画そのものに大きな影響を与えることになった、このビッグシリーズの一作目は、「暴力」が最もストレートに生き生きと観客の前に提示されます。

 

それは世代を超えて、現代の我々にも強く訴えかける力を持っています。

 

心の中に渦巻く暴力性。画面を覆うその発露。

偶然にも巻き込まれた男・広能の一発の弾丸から全ては始まったのです。

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主人公・広能の辿った道筋

 

本作は広能(菅原文太)を中心に、広島ヤクザの抗争を描いた群像劇です。

分かりやすいように広能の行動から物語全体をまとめてみたいと思います。

 

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広能は戦後の闇市でチンピラとの喧嘩に巻き込まれます。

本来は自身は関係なかったのですが成り行きで、酒に酔って暴れまわるやくざ者を撃ち殺します。

 

刑務所の中で若杉という土居組の若頭と知り合います。お互いの血を啜り兄弟分となる二人。

 

出所した広能は山守義雄らに迎えられ山守組の組員となりました。その後、賭場での喧嘩の責任を取り、指をつめるなど数奇なやくざ人生を歩み始めます。

 

呉の市議会議員選挙をめぐり、山守組は土居組と対立。若杉が土居組を見限って山守組へうつるなどするうち、土居組組長を広能が暗殺。逃走するものの警察に逮捕されてしまいます。

面会にきた若杉が、山守組長が全てを仕組んでいるのではないかと広能に告げます。その若杉も警察官との交戦中に死亡。彼の隠れ家を知っている人物は数少ないはずなのですが…。

 そして再び出所した広能。久しぶりの呉では若頭・坂井と山守組組長派の激しい内部抗争が繰り返されていました。

次々に散っていく若者の命。

 

広能は盟友の坂井殺害を山守に命じられ、坂井に会いに行きます。

坂井は新しい会社を興すなどし、山守の元を離れ再び自分たちの自由にできる組織を作ろうとしていました。

広能は崩壊しつつある山守組に秩序を取り戻すため、今一度やり直すべきと主張します。

ですが歩み寄りきれず、結局対立の構図を変化させることはできませんでした。

広能も坂井もお互いに討ちきれずにいたところを別の組員が坂井を襲撃。

無念のうちにまたも死んでいくかつての仲間。

その葬式の席で広能は山守に拳銃を向けるのでした。

輝かしい脇役たち

 広能以外の登場人物を簡単にまとめてみます。

 

 ・山守義雄(金子信雄

全ての抗争の原因といえる山守組組長。五部作を通してそれでも誰も彼を討つことはできませんでした。実業家として成功し、自分の地位を守ることにも熱心。元々は事業費用目的で土居と対立したことから広島やくざの血の歴史が始まった。非常に秀逸な悪役で、涙を流しながら、口先で若者を死に向かわせる様子は観る前を笑わせるほど。妻・山守利香とのコンビ芸はお見事。組内での抗争を勝ち抜いた坂井が力をつけたため、広能を使って排除を目論むなど若者を人間と思わぬ、まさに外道

金子はこの役柄が受けたのか、他の実録やくざ映画でも観たような演技をしてます。

 

・若杉寛(梅宮辰夫)

広能の兄弟分。土居組の若頭だったものの、組同士の喧嘩はどちらの利益にもならないとして組長を説得しようとするも聞き入れられなかったため、山守組の客分になります。神原を殺害しますが、山守派の密告により警察に追い詰められ、結局は死亡してしまいます。刑務所からでるためにカミソリで自分の腹をかっさばいて自殺を装うなど豪快な一面を持っていました。

 

・坂井鉄也(松方弘樹

山守組若頭で実力者、かつ山守より男気に溢れていたため、その山守のやり方についていけず対立。幹部たちとの内部抗争でも次々と相手を撃破していきます。一時的に山守を引退に追い込みますが、子供のおもちゃを買うために立ち寄った店で殺されてしまいます。

 

・槙原政吉(田中邦衛

山守組幹部。坂井のもとで動くが、次第に山守組長のもとで暗躍する役回りに。土居組殺害実行犯の選別の席では泣いて家族の心配をしてその役目を免除されるというまさにポスト山守という感じでしたが山守自体は槙原にも自分の席を譲る気はなかったでしょうね。本作五作目まで生き残る数少ないキャラクター。

 

・土居清(名和宏)

呉を山守組と二分する土居組組長。山守組設立時の見届け人でもあります。若頭の若杉を破門した後、訪れた海渡組の前で広能に射殺されてしまいます。面白いことに名和宏は次作から村岡組組長(海渡組とモデルが同じ)を演じています。

 

・山方新一(高宮敬二)

 山守組幹部。広能と親しい。新開・有田らの不穏な動きに気付くも、その有田が配したチンピラにより射殺されてしまいます。後に彼の女と坂井がくっつくというエピソードもでてきます。

 

・神原精一(川地民夫)

土建屋時代からの山守組関係者で幹部。しかし自分のお喋りが災いして土居組に寝返ることに。土居を射殺した広能の逃走を助けるふりをして殺害を狙うも失敗。その後、若杉にあっけなく殺されました。

 

・金丸昭一(高野真二)

呉の市議会議員。選挙をめぐる攻防において、坂井に監禁され落選する憂き目にあいました。その後、組長を失った土居組の生き残りを有田や新開たちと合流させ、坂井と対立させます。彼もなかなかの策士ですね。 

 

・新開宇一(三上真一郎

 山守組系新開組組長。組の運営方針を巡って坂井と対立。帽子がオシャレ。抗争中に姿を隠すために駅のホームにいたところを坂井派に刺し殺されます。

 

・有田俊雄(渡瀬恒彦)

新開組幹部。ヒロポン密売に手を染めるも坂井と衝突。後に兄貴分の新開を金丸議員と接触させたり、山守組長が奪ったクスリの行き先を調べ上げたりするなどなかなか有能な様子を見せますが、警察の検問を突破したところで事故を起こし逮捕されてしまいます。以降、作品に登場しなくなった惜しいキャラクター。

 

・矢野修司(曽根晴美)

 山守組幹部。組の運営をめぐる内部抗争では山守・新開の立場に立ちます。広島・海渡組に接触して坂井派の動きを封じようとしたところを殺されてしまいます。

 

・上田透(伊吹吾郎

物語冒頭で土居組のショバを荒らしたために片腕を若杉に日本刀でぶった切られた上、山守組組員となってからは床屋で髭剃り中に有田らに銃殺されるというある意味最も悲劇的なキャラクターといえます。後の作品では弟という設定の上田利男が登場し、広能と行動をともにします。

 

・大久保憲一(内田朝雄)

 呉の長老。本作以降にも登場します。山守組結成の媒酌人。

そして戦いは続く・・・

というように、登場人物の致死率が非常に高い(特に幹部連中)のに驚きですが、これだけの死の見せ場と筋を作りながら90分に話をまとめたのは脚本を担当した笠原和夫の力でもあります。

 

物語のラスト、山守を討ちとれなかったところに新しい部分があり(というのも昔の定型の任侠映画での物語構成ではおそらく山守は広能に殺されてTHE ENDとなるはずです。勧善懲悪タイプの作り方になるはずなので)、それが出来なかったことからまた抗争は続いていくことになるのです(一作目製作の最中から話題になったため公開前に続編の製作が決定していたともいわれていて、それも原因の一つかもしれません…)。

 

第二部『広島死闘篇』はモデルとなった事件(第一次広島抗争)の時間軸をずらした上で広能が脇にまわった番外編なので、実質的な続編は三部『代理戦争』と四部『頂上作戦』となります。この頃には広能たちは直接的な行動はとらず、しかも登場人物たちも多くなり、呉だけに留まらず描かれる範囲が広がっていくので、内容を把握するのも結構大変です。

 

そして第五部『完結篇』ではその広能らも老い、新世代たちが躍動します。

さらにこの五部作が終わっても東映が「次のどじょう」とばかりに『仁義なき戦い』の名を冠した作品を作らせ続けます。

「暴力」はいつまでたっても収まる気配をみせないのです。

本当の黒幕は「東映」といえるかもしれませんね。

仁義なき戦い』感想・評価まとめ

仁義なき戦い』シリーズは全部で五作あります。一作目の本作ですら、登場人物が入り組んでいて抗争の細部を初見で把握することは困難です。細かい部分を思い返そうと思っても深作演出の過激さがそれを拒みます。抗争シーンが強烈すぎるんですよね。なのでファンの人ほど何度も観返すことになります。そして観れば観るほど、前回気付かなかった部分を発見し、さらにのめりこむというアリ地獄的構造を持っています。実におそろしいですね。

しかも3,4作目はより話が入り組んでいくので、ファンの方でも抗争の全貌を説明できる人は少ないと思われます(自分もそうです)。

そういった意味でも、本作は実録やくざ路線の出発点にして最高傑作といえます。

自分もこれからの人生の中で何度も観直すことになるでしょう。

 

ちなみに自分が好きなシーンは刑務所内での若杉の割腹とそれに続く広能の出所シーンです。まさかこの時笑顔で出迎えてくれた後の山守組・土居組連中と銃口をつきあわせることになるとは巻き込まれ系男子・広能は思わなかったことでしょう…。

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