シリーズ4作目! 『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年)
前作『代理戦争』から引き続き、大規模抗争が描かれる本作。今回は警察側も黙っておらずそれぞれの組のトップ・幹部の逮捕による抗争の終結を狙った「頂上作戦」が展開されます。果たして広能はじめとする広島やくざたちはどうなるのでしょうか。
簡単なあらすじ
前作から引き続く、山守組系と神和会VS打本会系と明石組の抗争。
呉では広能組と槇原組の小競り合いが大規模な事件に発展。
打本会系列は中立派の義西会の岡島を取り込むことに成功するも、その岡島が山守組に殺されてしまい、形勢が逆転します。
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そして激化する抗争に反発を強める市民社会とそれに呼応する警察の取り締まり強化により各組織のトップが次々と逮捕されていく事態に。
キャラクター紹介
・広能昌三(菅原文太)
まだ仮釈放中の身。槇原組との抗争で部下を死なせてしまったため広島にいる槇原とやりあおうとするも明石組の岩井に説得される。
呉で警察の監視下におかれ、また明石組幹部連中も大阪での揉め事の対応に追われていたため放置されてしまう。
カタギになれと武田にいわれるも武田、山守もカタギになるなら呑むと返答する。
神戸に山守らが向かうことを知ると警察の隙をついて事務所を脱出。部下とともにトラックで向かうも途中で、広能の身を心配した部下に置いてきぼりをくらう。
結局、逮捕され、仮釈放を取り消されて収監。改めて七年四ヶ月の刑に服す。
・武田明(小林旭)
山守組若頭。
呉の長老・大久保を脅し、広能の広島進出を阻む。しかし応援軍の遊びまわる金による資金難で苦しむ。岡島の女を抱きこみ、情報を得るなど分断工作を行い、敵の戦力を削いでいくも山守・江田の独断により岡島が殺されたことで抗争の表舞台から身を引く。
山守逮捕後は、仇敵大友組ら広島のやくざを集結させ大同団結し、明石組の侵略に備える。
義西会・明石組との会談の場でも啖呵を切り一歩も引かない強気な姿勢を見せた。
「頂上作戦」により逮捕される。
・山守義雄(金子信雄)
神和会の二代目襲名披露のため神戸へ向かう。
爆弾を放りこまれると警察の保護を要請するなど本作でも自らの保身に余念がない。
しかし小さな罪で逮捕されてしまう。
・江田省一(山城新伍)
新天地での乱射事件により沸騰する世論を背景とした警察の取り締まり強化により逮捕される。本作ではあまり出番がなかった印象…。
・早川英男(室田日出男)
打本に破門され、山守組と共闘。敵対組員に襲撃されるなどマトにかけられるも生き残る。
・打本(加藤武)
反山守連合のトップ、打本会会長。
武田らに脅しにより岩井の計画を喋ってしまう。その後も岩井の決起要請に優柔不断な態度を見せるなどする。
自らの部下が山守を襲撃しに行ったことを伝えきき、それを(敵側の)武田に密告するなど終始、スジのない行動を取る。抗争の激化の原因を作った張本人ともいえる。
結局、逮捕されやくざをやめて事業に専念したいとグチをこぼす。
・岩井信一(梅宮辰夫)
広能組組員の本葬を行い、終了とともに呉に集結した1000人以上の傘下団体の兵隊を連れて広島に乗り込む算段をつけるなど暗躍。
山守逮捕につけこみ、岡島亡きあとの義西会と手を組もうとするが、明石組と神和会の手打ちにより、抗争から離脱。
・相原重雄(遠藤辰雄)
明石組幹部。広能組員の暴発による、山守組長襲撃を未然に防ぐ活躍を見せる。
・上田利男(曽根晴美)
広能と共闘したいと申し出るも、呉の長老・大久保に反対され、最後まで大暴れできなかった。
・川田英光(三上真一郎)
打本の舎弟で川田組組長。
共闘を呼びかける藤田に対し、兄貴分である打本が腰をあげないのに自分は決起できないと告げる。実は抗争の中にあっても自らのシマを守ることにしか頭になく、どちらにも加担する気はなかった。
さらに、野球賭博の売り上げを義西会に上納することを嫌い、部下の野崎を使い藤田抹殺を狙う。
・岡島友次(小池朝雄)
博徒の義西会のトップで穏健派。山守とも広能とも兄弟盃を交わしておりどちらの側にもつくつもりはなかったが、岩井や広能の説得により加勢することに。山守とは話し合いで決着をつけるつもりだった。
広能の逮捕を受け、川田に五百万を渡し反攻をよびかけるも、同窓会先の温泉で山守組組員に射殺される。
・野崎弘(荒木一郎)
川田のもとで野球賭博に従事するチンピラ。おとなしい性格で、温厚な藤田に目をかけられる。
広島基町(原爆スラム)での家族との生活は貧しく、川田にそそのかされ、世話になっていた藤田を撃ち殺し、懲役20年をくらう。
・藤田正一(松方弘樹)
義西会の幹部。広能とは刑務所時代に知り合い、助けて貰った恩義を感じ何かと彼に加勢している。肺を病んでおり時たま咳き込み、血を吐くこともある。自分の死期が近いことを悟っているようで組長の仇を取ることに執念を燃やすも、仲間うちであったはずの川田の裏切りにあい殺されてしまう。
・福田英泰(長谷川明男)
打本会会員。街でみかけた早川を襲撃するなど好戦的なやくざ。その分、知恵がまわらないのか、襲撃の写真を撮られてしまい打本に激怒される。打本が東京に行っているすきに早川を殺ろうとする。しかし早川組組員に惨殺され、その死は抗争の激化を呼び起こし、果ては市民による暴力追放運動、警察の取り締まり強化にまで繋がってしまう。

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抗争シーン
シリーズが進むにつれ、だんだんと広能自身が「暴力」を発動することが少なくなり、それに変わり、組内外の別の若者が自身の手を血で染めることになっていきます。
広島・可部温泉での山守組組員吉井による岡島会長襲撃の際、斜めの構図のカメラが血しぶきに染まる演出が凄惨さを見事に表現しており、秀逸な場面だと思います。
早川組と打本会による抗争で、鼻をそぎ落とされて殺される組員もおり、本作でも抗争シーンは見どころがあります。
『仁義なき戦い 頂上作戦』感想・評価 まとめ
ついに抗争事件が市民社会の反発を招き、激化しながらも収束していく、仁義なきシリーズ第四弾。実質的にはこれがラスト作の予定でしたが、ドル箱シリーズを簡単に終わらせるわけがなく、『仁義なき戦い 完結篇』が製作されます。脚本家としてシリーズを支えた笠原和夫は「もう書くべきことは全部書いた」として降板、これにより高田宏治が後続をつとめます。完結篇ながらも番外編のテイストもある『完結篇』では北大路欣也が主演ともいえる働きをしております。
第四弾である本作は、前作に引き続いて、山守・武田・神和会VS打本・広能・明石組という構図が描かれます。ラスト付近では神和会と明石組が手打ちをしてそれぞれ戦列を離れてしまいますので、結局は広島やくざ内での対決となりますが「頂上作戦」によりトップクラスはみな逮捕されて、抗争は終結します。両者痛みわけでしたが、山守は短期の刑に服したのみで広能にとっては何とも後味の悪いラストとなったわけです。
結局のところ山守の謀略により、(本来であれば)仲間うちであったはずのものが殺し合いをするわけで、いってみればこれは規模を大きくした第一作と似たようなお話です。どちらにせよ山守への復讐は果たせずじまいで、(立場的に弱い)若者が被害者にも加害者にもなってしまうというのは現代社会においてもその通りだなと思わずにはいられません。
『仁義なき戦い』レビューはこちら