シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

金曜ロードショー。感想&解説。映画「ホームアローン3」

ホーム・アローン3 (吹替版)

 
ホームアローンといえば、クリスマス映画の代名詞といっても過言ではないのではないでしょうか。
金曜ロードショーでは、声優も変わったりしつつですが、そもそも、ホームアローン3については、1と2を見る必要があるのか、ということも含めて解説&感想をしてみたいと思います。

一人で留守番しているときに悪人がやってきたら、あなたならどうしますか。
 

スポンザードリンク

?

 

シリーズとは関係ない

さて、ホームアローンといえば、クリス・コロンバス監督による名作映画です。
ギネスにものったというぐらいの稼いだ子役、マコーレ・カルキン少年の「あああーーー」という叫び声が印象に残っている人も多いのではないでしょうか。 
ホーム・アローン (吹替版)

ホーム・アローン (吹替版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

ホームアローン」では、主人公のケビンが、家族なんていなくなってしまえばいい、と思ったために、家族旅行の置いて行かれて、一人でお留守番をしながら、泥棒二人組を退治するという物語です。
 
ケビン少年の成長や、親子の愛情なども含めて描かれた傑作ホームコメディ映画となっており、クリスマスではたびたび放送される作品となっています。
ホームアローン2」では、飛行機を乗り間違えて一人でニューヨークに行ってしまったケビン少年の物語となってしまうわけですが、「ホームアローン3」は、今までのシリーズとは別物になっているので、ある意味、予習などのために前作を見る必要はまったくありません。
 
ケビンの成長や家族のつながり、クリスマス映画としての色合いが強かった旧作に対して、3は、季節柄の問題はほぼありません。
監督も異なっておりますし、子供が一人で悪人を退治する、というコンセプトのみ受け継がれた作品となっています。

科学的少年が主人公

旧作と比較しながらの説明になりますが、ケビン少年は、本当に子供です。
地下室にあるボイラー装置に恐怖したり、近所のおじさんを死体運びの化け物だと思ったり、家族がいなくなったのをいいことに豪遊したりと精神的に子供となっており、そんな彼が成長する物語となっていました。
 
ですが、「ホームアローン3」のアレックスは、どちらかというと名探偵コナンのような存在、というとわかってもらえるのではないかと思います。

アレックスは、いわゆるピタゴラ的装置を自作してみたり、ビデオカメラ等の配線機器を自在に組み合わせたりできる科学少年なのです。
 
見た目こそ、旧作のケビン少年よりも若くみえますが、「ホームアローン」の公開から7年後に作られた本作品は、ちょっと毛色が違うものになっています。
 
アレックスは、見た目こそ若く見えますが、その知識や考え方はあきらかに大人です。
 
見た目は子供、頭脳は、というコナン的な主人公ではありますが、見た目が子供であるせいで、周りからは信用されません。
 
水疱瘡のせいで部屋にいるとき、部屋から外をみていると近所の家に泥棒らしき人を見かけて、すぐに通報します。
 
律儀に警察がくるのですが、犯人が痕跡を残さずにいなくなってしまったことで、アレックスはいたずらで通報した、と思われてしまいます。

親兄弟からもからかわれ、警察からもおこられたアレックスはこう言います。
「いい市民で、ソンでした」

ホームアローン」は、家族との絆を感じさせるホームコメディでしたが、「ホームアローン3」は、見た目が子供の主人公が自衛のために戦う話になっています。
本作をみるにあたって、その主人公の原動力となっているのは、まさによき市民であることからの脱却だと思うとまた違った見え方になります。

市民とは

さて、突然、市民といった言葉をつかうと意味がわからなくなると思います。
ざっくりいってしまえば、市民であるということは、ただの国民ということではなく、一定の義務を果たし、そのうえで、政治的なものであるとか社会に参画しようとしている人間である、と考えればいいかと思います。

アレックス少年は、見た目こそ子供ではあるものの、彼は、彼なりに市民として国に対して義務を果たしていたわけです。
警察に通報したのも、市民の務めであり、いたずらでは断じてないのです。

アレックスは泥棒が入った傾向から、やがて、自分の家もターゲットになることを想像し、決意します。
このあたりの彼の考え方は、自分のことは自分で守る、という自警の精神にのっとったものだと考えられます。
アメリカ国民として、若干、リバタリアン的な発想を感じさせる、非常に、危険ながらもつよい主人公がアレックスとなっているのです。
単純に警察も家族も信用できない、と思っただけかもしれませんが、彼自身の中に自警の精神があるのは間違いないでしょう。

さて、そんな見た目は子供な彼が、様々な方法を駆使して、FBIから追われるようなやり手の犯人から、自分の周りの人間を守ることができるのか、というところが本作の見どころです。

アクションシーン

ホームアローン3」のアクションシーンについては、本記事において言及しません。
 
ホームアローン」シリーズで何度となくでてきたような仕掛けがあって、犯人たちが翻弄される、というは他シリーズ同様です。
 
旧作にあるようなテープレコーダーをつかって相手を勘違いさせたりする痛快さがあるわけではなく、ひたすら、下手したら死人がでるような自衛手段に、見ている側がハラハラするといった場面が続きます。
 
ただし、息をつかせぬドタバタの連続や、アレックス少年が淡々と準備をしていく様が、どうつながっていくのかをみると面白かったりします。
 
旧作と違うのは、家族は家にいて、知らせる機会はいくらでもあるにもかかわらず、彼はそれを家族に悟らせることなく、準備を整えるところです。
彼は、ネズミと、オウムの協力を得て、大人の敵を倒していくのです。
ちなみに、主人公の相棒がネズミで、隣のヘスおばさんが飼っている猫がいるというのは、トムとジェリーといった作品へのちょっとしたオマージュだといえるでしょう。

 

エンタメ特化型

旧作とは異なり、「ホームアローン3」は、エンターテインメント性重視といったところかと思います。
主人公であるアレックスは、認められなかったりするいらだちはあったとしても、彼自身が成長するということではありません。
 
もともともっている聡明さを発揮し、思想的に、警察に頼ることなく自らの行為をもって危険を排除しようとしたのです。
敵側もまた、市民という言葉を使ってくるあたりで、「ホームアローン3」は、よい市民から脱却し、再び、市民に戻ろうとする話だと解釈できるところです。
旧作の親子の愛情とか、成長とかそういうことは一切関係なく、認められない天才少年が、大人たちをぎゃふんと言わせる物語としてもっと手軽に楽しめる作品となっています。

ホームアローン3」をみて、まだ旧作を見ていな方がいれば、ぜひ、ご覧いただきたいと思います。
 

cinematoblog.hatenablog.com

 


以上、金曜ロードショー。感想&解説。映画「ホームアローン3」でした!
スポンサードリンク