シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ストーカー映画の先駆け「恐怖のメロディ」感想

恐怖のメロディ (字幕版)

 

クリント・イーストウッドといえば、「ダーティハリー」シリーズの俳優として記憶している人が多いと思いますが、毎年のように映画をつくっている、非常に才能あふれる人物でもあります。

多作なイーストウッド監督の記念すべき第一作品目が「恐怖のメロディ」となっております。

男のスケベ心と、そこに付け込まれた結果が描かれる恐怖の物語となっております。

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クリント・イーストウッド

さて、まずクリント・イーストウッドについてですが、言わずと知れた名監督であり、アメリカ人の魂は、必ずしもアメリカ人に引き継がれるわけではない、ということを示した「グラン・トリノ」や、尊厳死を扱った「ミリオンダラー・ベイビー」等、映画を見た後にも考えさせられる作品が多いのが特徴といえるのではないでしょうか。

 

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役者としての渋さもかなりなもので、実生活においては、いろいろなところに愛人がいて、イーストウッドの子供というのは、様々なところに点在しているという噂です。

70歳を過ぎてなおお子さんをつくる、というのも、イーストウッドの衰えない理由の一つかもしれません。

恐怖のメロディは、まさに、そんなクリント・イーストウッドが自らメガホンをとり、主演も務めることで、それって、自分のことじゃないのか、と疑ってしまうようなところも見どころです。

さて、「恐怖のメロディ」でイーストウッドが演じるのは、ラジオDJです。

彼は、女好きのせいで、本当に愛している彼女とは距離を取られてしまったりしています。

そんな中、

「ミスティをかけて」

と、毎回のようにとある女性からリクエストが届くのです。

男のバカさ

クリント・イーストウッド演じる主人公デイブは、ドン・シーゲル演じるマスターがいるバーで飲みます。


そこには、はた目からは美人にみえる女性が一人で飲んでいるのです。

女好きの主人公は、マスターととあるゲームをします。


いったいなんのゲームをしているのか意味がわからないところですが、それ自体が、その本人をおびき寄せられるかどうか、をかけてるゲームになっているのです。

女性を口説くということに対して、相当手馴れているところがわかる場面となっています。

ですが、罠にかかったのは女性のほうではなく、主人公であるデイブのほうだったのです。

 

ストーカーは

当時は、ストーカーといった言葉がまだなかった時代ですが、現代のわれわれがみれば、その女性の異常行動にすぐ気づくところです。

イブリンと名乗る女性は、デイブに対して

「一夜限りの関係よ」

といって、都合のいい女性を演じます。

デイブも当然悪いのですが、ある程度有名人で女好きな彼からすれば、今まで関係をもってきた女性のうちの一人、といった考えだったのでしょう。


関係をもってすぐに、彼女は、突然デイブの家に現れます。

そして、世話女房のように料理をつくろうとしはじめたことから、デイブは怒ります。

「一夜限りじゃなかったのか」

「もう、会わないとは言っていないわ」

この距離感の縮め方は、恐ろしいところです。

しかし、デイブは、そんな強引なイブリンに、しぶしぶ付き合わされることになるのですが、それは非常に甘い考えです。

 

エスカレートする

デイブも忙しい身ですので、いつまでも、イブリンにかまっているわけにはいきません。

ですが、一度、甘いところをみせてしまうとエスカレートしてしまうのがストーカー心理というものです。


デイブがバーにいると、イブリンから電話がかかってきたり、車に乗ろうとしたらカギをとられたりする始末。

イブリンは、恋人同士のラブラブなやり取りをしているのですが、デイブからすれば、一夜限りの関係の相手にそんなことをされると、かえって頭にくるところです。


イブリンは、人間同士の距離感がつかめていないからこそ、作中の中でモンスターと化していきます。

ただし、彼女をモンスターにしてしまったのはデイブ自身の責任であることもまた事実だったりします。

 

デイブに関係を拒絶されたイブリンは、洗面所で手首を切ります。

ですが、自殺未遂をしたイブリンを看病するデイブ。

人気DJの家で、自殺未遂した女性がいるとなれば、世間体も悪いということもあったのですが、イブリンからすれば、自分の愛情を向けてくれたと思うのに十分な事柄です。

やがて、イブリンの怒りや愛憎は、デイブのまわりの人間に及んでくるのです。

ホラー

イブリンは、デイブの最愛の恋人にも矛先を向けます。

たった一夜限りの間柄にするつもりが、どんどん付け入られていき、自分の大切なものすら傷つけられる。

だから、浮気とかはしたらいけないし、女遊びもいけないよ、というのがテーマかと思いたいところですが、クリント・イーストウッド監督の映画はそんなものではありません。

もし、女遊びはダメ、という話であれば、ハウスメイドの黒人女性は死ぬはずです。

そして、恋人もまた無残な死を迎えるはずですが、まぁ、ネタバレしても問題ないと思いますので書きますが、イブリンは、クリント・イーストウッドのパンチ一発で倒されてしまいます。

彼は結果として何も失っていないのです。

結局、デイブは、家具とかめちゃくちゃにされたりしますし、得られるかもしれなかった仕事を失ったりはしますが、女性は失っていません(男は死にましたが)。

ただただ、本命の女性を大切にしよう、という終わり方になっているところは、ある意味、その後のクリント・イーストウッドの生きざまを暗示させるようで面白いところでした。


以上、ストーカー映画の先駆け「恐怖のメロディ」感想でした!

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