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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

北野武『3-4x10月』のオチをどう考えるか?

ニャロ目 邦画 北野武 任侠・やくざ映画

国内にも国外にもファンの多い北野武監督。

 

北野映画といえば、ヤクザなどアウトローが主役になることが多く、今年も「元ヤクザのジジイ」と詐欺集団の対決を描いた『龍三と七人の子分たち』が公開されました。

 

その北野監督の2作目『3-4x10月』について取り上げます。

 

映画の内容、とくにオチに関する記述がありますので、本作品を未見で、映画の内容を知りたくなかったり、先入観を持ちたくない方は、映画本編を観てから読んでいただけると幸いです。

 

というわけで、様々な解釈ができる『3-4x10月』のオチ。「よくわかりません。観た人が好きに考えましょう」とならないように解釈していきたいと思います。

 

はじまりはトイレの中で

さながら幽霊のように暗闇の中にぼうと浮かび上がる男(小野昌彦=柳憂怜)の顔から映画がスタート。

 

何かを思案しているようにもみえるし、何も考えていないようにもみえる。

 

男はトイレの中から野球場に歩み出る。

 

ユニフォームに数字の3。

 

草野球チームの一員であるようだ。

 

男はダラダラとベンチに向かって歩いていく。

 

野球の基本的なルールも知らない、補欠選手。

 

彼=雅樹が主人公である。

 

 

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省略と繰り返し

この映画の特徴として「省略と繰り返し」が挙げられます。

始まりと結末を見せて、中間を省略する(映画序盤の喧嘩、一人で行くと思わせた次のシーンで沖縄に二人で着いている、など)。

 

そのテンポで観客を慣らせておいて、セリフや行動の繰り返しを使う(「井口さん」、上原が組の車を蹴る、上原が情婦を繰り返し殴る、など。映画の予告編もタイトルが数回繰り返される)。

 

この省略と繰り返しで、映像にメリハリがでて、観客を飽きさせない。

 

セリフをいう役者を写さずに聞き役を写す、というような細かい技もいれておりテンポがいい。物の贈与・交換のシーンも印象的です(バイクのヘルメット、沖縄行きの餞別、雅樹のジャンパー、銃、、アイス、沖縄土産、など)。

 

これらの手法(映像史、映画史からみたらありふれた手法かもしれませんが)をきちんと使えるのは非常にセンスのいい証拠ではないかと思います。

スマートで落ち着いたカメラアングルも見ていて気持ちがいいです。

 

舞台について

この映画では、東京→沖縄→東京の順で舞台が移動します。

 

はじめの東京では雅樹と井口(ガダルカナル・タカ)が中心。

草野球・アルバイトの日常に、ヤクザ・暴力の非日常が侵入してきます。

 

沖縄では雅樹・和男(ダンカン)グループ、上原(ビートたけし)・玉城(渡嘉敷勝男)グループの話。

銃を入手するために沖縄を訪れる雅樹グループですが、起こる出来事がほぼ全て幻想のような暴力に彩られています。まさに幻想パートともいえる出来で、非日常な世界観が美しいですね。

とくに後述する二つの幻視が、その幻想性を担保しています。

 

そして再び東京。雅樹中心の話。舞台は現実に戻りましたが、最も破壊的な暴力でエンディング。

 

この最後のパートで印象に残ったのは、雅樹と和男の仲直りのアイスのシーン。これは最初の東京パートで、沖縄に発つ前の雅樹に和男が餞別を渡す場面の対比となりますね。結局、このあと雅樹は和男を伴わずに事務所に突っ込むので、再びの同行とはなりませんでしたが。

 

そして雅樹がタンクローリーでヤクザの事務所に突っ込んだ場面について。

最初の東京パートで、井口がパチンコ店をでたあとにヤクザに刺されるシーン、沖縄パートで上原が沖縄連合を襲撃するシーン。どちらも自分と関わりのある女性は巻き込まないのですが、雅樹はサヤカ(石田ゆり子)を道連れにします。

 

「どっか、いく?」と初めてサヤカを誘った言葉。それが時を超えて最後のタンクローリーにつながるとは! 

 

幻視

沖縄パートがなぜ幻想的なイメージを帯びているかというと、死に彩られた幻視のシーンが二つ含まれているからでしょう。

 

幻視その1 上原の場合

銃の受け渡し現場で取引相手を殺害、銃を奪った上原。

玉城の運転する車の中で、上原は「幻視」する。

映像上ではフラッシュフォワードという形で表現される「幻視」。

その内容は、沖縄連合の組長を射殺、極楽鳥花の冠をかぶる、車内で女性を犯す、自らが射殺される、といったもので、そのまま現実化します。

 

幻視その2 雅樹の場合

沖縄の空港。玉城と雅樹の、再会を約束しての別れのあと。

 

雅樹が渡された土産を確認するあいだに、上原と玉城がヤクザに射殺されるシーンが挿入される。雅樹は、手元の土産を確認しつつも視線を画面外に向ける。

 

二人の射殺の幻視をみたあと、映像では省略されているが雅樹は(おそらく)動揺して「よなくにさんのたまご」を取り落としている(拾うシーンは使われている)。

 

沖縄パートは、暴力と静寂が波のように繰り返され、風景も美しい。幻視が現実化することにより、その非日常性を担保している。

 

夢オチ? ループ? 妄想?

エンディングについて。

雅樹はサヤカとともにタンクローリーでヤクザの事務所に突っ込み、爆発炎上する。

 

そして、オープニングと同様に、幽霊のようにぼうと浮かび上がる、雅樹の顔。

男はトイレの中から野球場に歩み出る。

ユニフォームには数字の3。

草野球チームの一員であるようだ。

男は駆け足でベンチに向かっていく。

 

主役の柳憂怜は映画について、雅樹は本来は野球チームのレギュラーで背番号3番、サードで打順は4番という設定で、有能な男が「もし自分がダメ人間だったらどうなるか」という妄想からできあがった話だ、と語っているそうです。

 

また、プロデューサーも本来のオチは別にあったことを証言しています。 

 

さらに、監督の北野武はラストの爆発炎上が予想外な規模になり、マスコミにばれたことにより、オチを変更する必要があった、また、夢オチと考えてもらっていい、と話したそうです。

 

いずれにせよ、当初予定していたようなエンディングではなかったことは確かです。

 

ほの暗いトイレの中。

ぼうとした顔の男は、ありえなかったもう一人の自分の物語を夢想する。その夢想は風船のように膨らみ、最後は爆発する。白昼夢。

 

日常の中で非日常を想像する。こういった経験は誰にもあるのではないでしょうか。

 

自分はオチについては「デキる男・雅樹の白昼夢」説が好きですね。

 

というわけで結論としては「オチについては諸説あってよくわかりません。観た人が好きに考えましょう。映画自体はとても面白かったから、いいじゃない」ということで、お願いします…!!

 

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