シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

広瀬すずの演技力。映画版「四月は君の嘘」

四月は君の嘘


広瀬すず主演による人気漫画「四月は君の嘘」の映画について、ごくごく簡単に魅力について語ってみたいと思います。

今回は、偏った感想になっておりますのでご注意いただければと思います。

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原作者

原作者である新川直司は、「さよならフットボール」や「さよならクラマー」といった漫画を描いてきており、「四月は君の嘘」では講談社漫画賞少年部門を受賞するなどしています。

 

 

絵のかわいらしさもさることながら、スポーツにかける少女が強く打ち出されることが多い作者でもあります。

女の子だから、成長するにつれて男の子のフィジカルに負けてしまったりするくやしさなどが繊細に描かれています。


四月は君の嘘」は、スポーツではなく、音楽系の作品となっており、トラウマをもったピアニストと、事情のあるヴァイオリニストが出会うことではじまる、ボーイミーツガールものとなっています。

 

広瀬すず

紅白歌合戦の司会者も行ったということでより認知度が広がった女優ですが、「四月は君の嘘」では、広瀬すずの演技の幅をみることができるという点でも面白いです。

漫画原作の作品を実写化する点で一番難しいのは、その嘘くささではないでしょうか。

極端なことを言ってしまえば、髪がピンク色のキャラクターを実写化するのはかなり難しいです。

 

 

髪の毛の色がピンク色の人がいないわけではありませんが、映画というものをつくるにあたっては違和感のほうがでてしまい、物語にはいっていくことへの妨げになってしまうでしょう。

しかし、広瀬すずが演じる宮園かをりは、いたって自然です。

下手をすれば、嘘くささを感じてしまうはずなのですが、違和感がありません。

映画「チアダン」の中でも、漫画的なキャラクターを演じていましたが、コメディをやってもまったく恥ずかしさを感じない演技をするという点で、非常に優れているように思います。

広瀬すずの他作品

四月は君の嘘」から話がそれてしまいますが、女性といなくなってしまった父親のもとにできた妹と、もとの3姉妹でのやり取りが描かれる「海街ダイアリー」で注目を浴びました。

 

海街diary

海街diary

 

 

その後、是枝監督作品として「3度目の殺人」に出演するなど、コメディからシリアス系まで幅広い作品にでています。

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

漫画原作として「ちはやふる」シリーズも人気であることから考えても、漫画のキャラクターを違和感なく演じられる稀有な女優といえるのではないでしょうか。

物語について

ここからは、一応ネタバレを含めて感想を述べてみたいと思いますので、気を付けていただければと思います。

さて、「四月は君の嘘」に戻りますが、本作品は、ゼロ年代によくみられる君と僕が描かれるセカイ系の作品といえると思います。

トラウマによってピアノが弾けなくなった天才的なピアニスト。

しかし、その内面には、亡くなった母親の面影があり、精神的な問題でピアノの音が聞こえなくなり音楽から遠ざかってしまいました。

そして、そんな彼のもとに近づいてきた宮園かをり。


彼女もまた、難病によって余命いくばくもないことがわかったために、イメージチェンジして主人公に近づいていきます。

たしかにその状況の中で人間がかわってしまったりすることはよくわかるのですが、その変化の過程はそれほど描かれることはありません。

どこかふわっとした世界の中で、彼らのセカイは動いていくのです。

難病なはずなのに川に飛び込んでみたり、遅くまで出歩いてみたり。


また、主人公である公生の幼馴染のポジションもまた、違和感を感じるつくりになっています。

昔の話

かつて、パソコンゲームの代表作で「TO HEART」という作品が一世を風靡しました。

パソコンゲームの歴史の中で外せない作品の一つですが、本作品は、のちのゲームでもよくある主人公がなぜかモテる、という現象が起きている作品でもあります。

しかし、それと同時に非常にギャルゲーの裏にある恐ろしさも描いた作品でもあります。

主人公の幼馴染である神岸あかりがメインヒロインですが、常に主人公の近くにいるというキャラクターになっています。

モテる主人公の近くに常にいる幼馴染という構図は、一見、ゲームだからそれはそうだろう、と思われるところかと思いますが、深読みすると恐ろしい事実もあるのです。


さて、「四月は君の嘘」に戻りますが、本作品における主人公の幼馴染である澤部椿は、自分は公生の保護者だからといった風を装いながら、主人公のそばに常にいます。

これって、明らかに、ほかの女性を近づけさせないようにするための技です。

女同士の駆け引き

「だって、みんな仲良すぎるんだもん。私の入るスペースないんだもん」

自分の好きな男性が、ほかの女性と仲良くしていたら、それは入る隙がないと思うのは当然です。

ですが、澤部椿は、自分自身に素直になれず、かといって、公生から離れることもできない中で、彼をずっととらえているのです。

その中に入り込む方法として、広瀬すず演じる宮園かをりは、一つだけ嘘をつくのです。

作品は、女性同士の争いが裏にあるという中で、天才ピアニストのトラウマ解消と、一人のヴァイオリニストの夢をかなえるというのが見え隠れする内容となっています。


宮園は、嘘によって仲が良すぎる3人組に入り込み、彼の心をかすめとっていく、というある意味すごい物語になっています。

ただ、澤部椿が、公生を立ち直らせることができないとあきらめていたのではないかとも邪推できます。

打つ手がないと思ったからこそ、一応、公生狙いではない宮園かをりをつかって、主人公を立ち直らせようとした。

彼女にとっては、諸刃の剣ともいえる技ですが、余命いくばくもないのであれば、彼女にとってすれば好都合です。

主人公を立ち直らせて、立ち直ったらあとは、いなくなる存在。

そこまで計算して彼女と公生を引き合わせたのであればたいしたものですが、どこか空恐ろしさを感じてしまうのはやむえないところです。

音楽シーンは何度でも

またもやほかの映画の話になりますが、広瀬すず主演である「チアダン」の演出のうまさとしてあるのは、ダンスをまともにみせない、ということがあります。

練習シーンは何度も見せますが、大会での演技は一度しか見せません。

ここぞというところまで見せずに、最高のタイミングでダンスのシーンを見せることで圧倒的な迫力を演出するという理になかったやり方です。


それに対して、「四月は君の嘘」は、何度も大会シーンがあります。

素人にはその違いがよくわからなかったりするのですが、ガンダムにおける魂だけの存在として、コンサートで一緒に演奏する二人は、漫画原作で且つ、音楽といった才能が目に見えにくい作品での課題ともいえるのではないでしょうか。

 

以上、広瀬すずの演技力。映画版「四月は君の嘘」でした!

 

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