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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

キャッチボールは親子の会話/フィールドオブドリームス

フィールド・オブ・ドリームス [DVD]

 

野球については全然知らない人間でも、夢を持つことの大切さや、親子の絆を感じ取ることができる、野球を題材にした傑作映画こそが、「フィールドオブドリームス」です。

それを作れば、彼は来る。


ある日突然、ケビン・コスナー演じる主人公の男レイは、謎の声を聞きます。

「それを作れば、彼は来るだろう(If you build it,he will come)」

それとは一体なんなのか。彼とは一体誰なのか。


特別な理由もなく、「それ」とは、野球場のことだと思いつきます。

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主人公のレイ・キンセラは、とうもろこし農場を経営しています。
決して裕福とはいえませんが、奥さんと娘の三人暮らしで慎ましやかに暮らしているのです。


ですが、その声を聞いたことで、とうもろこし畑をつぶして、野球場をつくる決心をしてしまいます。


普通であれば、絶対に反対されるはずですが、奥さんは

「貴方がそうすべきだと思うなら、するべきだわ」

と言って、快く彼のやろうとしていることを応援してくれるのです。


普通であれば、とうもろこし畑をつぶして、謎の声にしたがって野球場をつくるなんていうのは、正気の沙汰ではありません。


しかし、この物語は、声にしたがっていくのです。

 

アメリカ人が子供に見せたい映画

 

突然ですが、アメリカ人が必ず子供に見せるという映画はいくつかあるそうです。

そのうちの一つは、「素晴らし哉、人生」。

これは、銀行を営んでいる主人公が、家をもてない貧乏人のために、頑張ってお金を融資するのですが、結局うまくいかず銀行が潰れかけ、自殺を試みます。

ですが、謎の天使が、彼がいない世界を見せることで、自分という存在がいかに大事であるか、ということに気づかせます。

そして、自分が助けた人々によって、つぶれそうになった銀行を再建させることができる、というクリスマスには必ず放送されるという傑作映画です。

 

素晴らしき哉、人生! ジェームズ・スチュワート ドナ・リード CID-5011 [DVD]
 

 

34丁目の奇跡もまた、クリスマス映画の傑作として、放送されているそうです。

ある日現れた自分をサンタクロースと名乗るおじいさん。


そのおじいさんは、デパートのサンタクロースをやると、子供の欲しいもがどこに売っているかわかってしまいます。

アメリカにはクリスマス時期に、子供が欲しいものを聞き出すためにサンタクロースがいるそうなのですが、そのデパート付きのサンタになってしまうのです。

このあたりは、当ブログでも紹介した、ホームアローンなんかでもでてくるところです。

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

そのおじさんが、果たして本当にサンタクロースであるか、ということが問題となってしまいます。

サンタクロースが実在するのかどうか、ということで裁判になってしまう中、サンタクロースとはどういうものか、アメリカ人が自分自身の国や教義、聖書のあり方などを浮き彫りにしていく作品です。

 

 

このフィールドオブドリームスもまた、子供達にみせていきたい映画として、燦然と存在する映画なのです。

 

これは夢に敗れたものの物語。

 

主人公が野球場を作ると、ある男がやってきます。


それは、シューレスジョーと呼ばれたアメリカ野球界においての歴史的人物です。

もちろん、とっくに死んだ人間なのですが、主人公にとって憧れの選手です。


「貴方は、ゴーストなの?」

と、レイの娘は言うのですが、幽霊かどうかっていうのははっきりしません。


ゴーストというとおそらく野暮になってしまうのではないでしょうか。

シューレスジョーこと、ジョー・ジャクソンは、1919年にアメリカで起こった八百長事件「ブラックソックス事件」で野球を続けられなくなってしまった人物です。


ですが、野球をすることが何より好きな人物が、野球をやることができなくなってしまった。


そんな男の悲しみを、かなえてあげることができるのが、レイがつくったとうもろこし畑の中の野球場なのです。


それは幽霊かもしれませんが、野球を愛する人間達が、時空を越えて野球をしにくる奇跡の場所だと思っていただけるといいと思います。

 

ワーゲンに乗って仲間を探せ

 

「彼の悲しみを癒せ」


その声が聞こえて、レイは「彼」を探します。


その人物だと主人公が考えたのは、テレンス・マンという黒人の作家です。

原作では、キャッチャー・イン・ザ・ライライ麦畑でつかまえて)の作者である、サリンジャーとして描かれています。


テレンス・マンもまた、野球に関する夢を叶えることができなかった男であり、隠居生活を送っています。

その彼が、レイの言葉を信じて、奇跡の野球場へ行こうとしていったり、また、他の人物を探したりするのです。

 

野球のあとの人生も嘘ではない。

 

ムーンライト・グラハムという人物について語られます。


彼は、メジャーリーグの選手だったにも関わらず、一度もバッターボックスに立たないまま、マイナーリーグに行って、最後には引退してしまった人物です。


そんな彼もまた、再び野球をしたいという夢をもっているのです。

ですが、その彼は、引退後医者をやりながら、多くの人間を助けた人物でもあったのです。


夢の野球場は、そのグラウンドからでることができません。

もし、野球場からでれば、野球に夢をかける彼らは消えてしまうのです。

ですが、ムーンライト・グラハムは、野球場から一歩外にでる決意をするのです。


なぜ彼が、夢の野球場からでるのか、それは映画をみていただきたいのですが、ここでは、夢は絶対かなえてあげたいものではあっても、夢を叶えるだけが全てでてはないということをちゃんと伝えているところが素晴らしいのです。


夢の野球場は、永遠に野球をすることができる場所になっています。


ですが、それは、野球以外の人生を否定しているわけではないのです。

野球によって、助けられる人もいれば、野球をやらなくても助けられる人がいる。

そういう、アメリカの古き良き精神が見え隠れするという点でも、アメリカ人がみせたい映画としていつまでも君臨しているのかもしれません。

 

アメリカの物語をつくる。

 

もう一つ、アメリカ人がフィールドオブドリームスを好きな理由は、おそらく、この映画がアメリカという歴史の浅い国に、物語をつくったからだろうと思われます。


どういうことかと言いますと、この映画の舞台はアオイワ州です。

アイオワ州というのは、主人公の職業をみてもわかるとおり、農業が盛んな町です。

逆に言えば、農業ぐらいしかなく、何もない場所なのです。


フィールドオブドリームスは、そんな何もない場所であるアイオワ州に、野球に夢をかける人間が集まる野球場が存在する、そんな物語をつくってくれたのです。


話が変わりますが、アメリカ人にとって大事な物語の一つとして、「オズの魔法使い」があります。


アメリカ文学として当たり前に知っている人も多いこの物語は、想像力豊な主人公ドロシーが、勇気のないライオン、心が欲しいブリキのロボット、脳が欲しいカカシと共に、オズ王国の様々な魔女達にあって、自分に足りないものを手に入れていく、という物語です。

ドロシーは、アメリカ合衆国カンザス州にいる女の子です。

 

オズの魔法使い (岩波少年文庫)

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 カンザス州もまた何もない場所です。

ですが、この物語によって、歴史もほとんどない、殺戮にまみれてしまったアメリカという国に、美しい物語が誕生したからこそ、この物語はアメリカ人にもっとも愛されている文学とされているのです。


フィールドオブドリームスの劇中にも、オズの魔法使いの本が置かれていることから、この物語が、オズの魔法使いを意識してつくっていることが示されています。

 


夢が人を魅了する

 

当たり前ですが、主人公のレイは、農場をつぶして野球場にしたことで、借金が払えなくなってしまいます。

農場を借金のかたに取られてしまえば、夢の野球場は存続できなくなります。


そこで彼は、土地を売るように迫られるのです。


夢のためにはお金がいる。しかし、そこでお金に手を出せば夢はかなえられない。


「きっと、来るよ」


みんなが言います。

どうやってお金の問題を解決したかは、映画をみていただくか、本ブログ記事に書かれた内容をみていただければ想像できると思いますので書きませんが、野球場がみんなの夢の場所であることは間違いありません。


映画の冒頭で、主人公は頭がすこしおかしい人間なのではないかと観客自身もまた疑ってしまいます。

そのバカげた夢というのを、他人はバカにしてくるのです。

この物語は、単なる荒唐無稽な物語ではありません。

アメリカに生まれた物語であるということももちろんありますが、夢をつかむために努力する人間の苦労を描いた物語でもあるのです。


他人からはバカみたいにみえる夢でも、自分の中にある声(劇中では、the voice)に従っていくことで、夢を諦めたり、現実に打ちのめされた人たちが動かされていくということが示されているのです。

 

何よりもこれは親子の映画


さて、夢とか物語とか色々と書いてきましたが、これは何よりも親子の物語になっています。

物語の冒頭で、主人公の父親について一気に説明されます。

 

野球選手だった父親は、怪我によって野球を諦め、老人のようになってしまっていた。

その父親の影響で、野球が嫌いになってしまい、気づいたときには親が死んでいた。


主人公の父は死んでしまいましたが、主人公は自分が父親の年齢になり、子供をもって初めて親の気持ちがわかることができるようになったのです。


他人の夢を知り、他人の挫折を知り、自分自身を知っていく中で、父親との和解を描いた映画こそが、フィールドオブドリームスです。

 

ちなみに、クリストファー・ノーラン監督「インターステラー」もまた、フィールドオブドリームスの影響を強く受けているように思えます。

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

 シューレスジョーは、主人公に言います。

 

「ここは天国なのか」

アイオワさ」

 

野球を愛するものにとっては天国です。

ですが、そこは、とうもろこし畑しかない。何もなかった場所です。

でも、一人の男によって、そこに野球を愛するものたちの天国が作られたのは間違いのない事実です。

 

このロケ地となった場所は、いまでも存在していて、ボランティアの人々の手によって野球場は存在し続けています。

 

この映画は、野球がない人でも問題なく見ることができます。

それは、たまたまそれが野球だっただけで、それは誰かにとって強く想う夢そのものだからです。

 

野球=夢

 

本や映画からはじまったこの物語が、アメリカ人の夢を作っている。

古い映画ではありますが、今見ても新たな発見があります。


以上「キャッチボールは親子の会話/フィールドオブドリームス」でした!

 

 

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