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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

松方弘樹は刑務所を出る 『脱獄広島殺人囚』(1974年)

ニャロ目 邦画 松方弘樹 中島貞夫 任侠・やくざ映画

松方弘樹刑務所シリーズの第一弾!!

 本作はあの『仁義なき戦い』シリーズで菅原文太が演じた広能のモデルである美能幸三から、脱獄を何度も繰り返した男がいるとの情報を入手した日下部五朗東映のプロデューサー)のアイデアから生まれた作品です。

 

監督は中島貞夫。主演を松方弘樹がつとめています。脚本は野上龍雄が担当。

着眼点の良さと松方アニキの迫真の演技がうけたのか大ヒットを記録したそうです!

 そのため、『暴動島根刑務所』と『強盗放火殺人囚』と合わせて松方刑務所三部作という摩訶不思議かつアツイ作品群が誕生することとなります。

脱獄広島殺人囚 [VHS]

脱獄広島殺人囚 [VHS]

 

 

これであなたも脱獄ができる!

というわけで自由を求めて脱獄を繰り返す様子が何度も描写されます。

 

殺人により投獄された植田(松方弘樹)は懲罰房が古く木製であることに目をつけます。わざと騒ぎを起こし、房にほうりこまれた植田は便器の周辺がもろく掘り進めることを発見。

 数ヶ月かかり、脱出口を完成させ深夜にひっそりと便器の中へもぐり、汚物の中を進み、汲み取りの穴から抜け出ようとします。が、腰の骨が引っかかり容易に出られません。見回りが近づいてきます。全力で体を引っ張りあげると何とかつっかえが取れ地上にでることができました。かわりに腰にケガを負うことになるのですが…。

これが最初の脱出です。

 

その後神戸にいる妻のもとに戻り、久しぶりのキツイ一発を済ませてスッキリする植田。

さらには殺人を共謀した田上(渡瀬恒彦)と再会。彼から銃を手に入れます。ちなみに植田が田上との共謀を黙っていたため田上は自由の身でした。

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 行くあてもない植田はまた神戸に戻ってしまいますが、妻の周辺には刑事が張り込んでいます。映画館に入り、銃を点検していたところを見つかり、結局逮捕されてしまうのです。

あわれにも彼は再び獄中へ逆戻りです。

 

辰夫、晃、ここだ、ここで逃げるんだ!

再び投獄されたからといって、もちろん反省するとかそんなチンケな男ではありません。なんせ刑期は20年以上もあり、暗いムショで満期までお勤めする決意などさらさらありません。

 そんな時、末永(梅宮辰夫)という受刑者が看守を人質に取り、所長(金子信雄)にカンカン踊りをさせるという痛快な事件が勃発。

自分に勝るとも劣らない根性を持つ末永を、模範囚の岡田(若山富三郎)に頼んで自分の房に移動させます。そして、同じく刑期の長い小島(西村晃)との三人で新たなる脱出計画を少しずつ実行に移すのです。

 

田上が、植田の妻が揚げたテンプラを面会の際に差し入れます。看守に金を握らせよそ見をさせている隙にテンプラの中に隠した刃物を入手。

 さらに、刑務所内ではタバコが通貨の役割を果たすということで外からタバコをゲットし、他の受刑者を買収し、衣類を手に入れ、花壇に埋めて脱出後に備えます。

そして同室の他の受刑者にもタバコを分け与え脱獄の件については黙っておくようにといい含めます。

 

鉄格子を刃物で何とか切断しようとする植田でしたが油であげた影響で刃が鈍くなっており、切ることができません。木枠そのものの古さに着目した彼らは渾身の力で格子を引き抜きます(この作業に一週間を要する)。

 

そしてやっとのことで開いた穴から出、ロープで壁をよじ登り、無事三人ともシャバにでることに成功するのです。

数日行動をともにしたあとで警察の追跡を逃れるため、三人は散り散りになります(ですが、米軍の車をヒッチハイクしようとした小島が轢き殺されるのを末永は目の前で見ることになります。せっかくシャバにでれたのに公権力に殺されるおっさん…。哀れです)。

ここではないどこかへ

おっさんの死を露知らず、植田は四国の妹の和子(大谷直子)の住む家を訪れます。実に16年ぶりに再会です。和子は再会に喜びますが何か心配事がある様子。

植田は朝鮮人三人(演じているのは室田日出男、川谷拓三、志賀勝という濃い面子)が、直子の家の近くの広場を借りて牛を屠殺しているのを発見。

鑑札なしでバラしていることをネタに三人を脅迫。もっとショバ代を和子にやってもいいだろうと主張します。

「どないもこないもあるか! とれるもんならとってみい」

という相手の挑発で、1対3の乱闘がスタート。数々の修羅場をくぐってきた植田は三人を叩きのめし和解。場所貸しの仕事が繁盛することとなります。

 で、あぶく銭を持った植田は女郎屋で暴れたため警察に通報、また捕まってしまうのです。なんて学習能力のない男なのでしょうか。

取調室から再度逃亡を図る植田でしたが、追手に捕まりまた再び広島の刑務所へ移送されます。

 

植田は末永もまた広島刑務所に戻ってきていることを聞きます。

末永は刑務所ででかい顔をする前戸組組長といさかいを起こしアバラが五本折れますがそれでもじっと耐えます。

 

植田はそんな末永を再び仲間にし、脱獄を狙おうと考え前戸組長に直談判。話がこじれ、組長を刺殺してしまいます。

もともとあった懲役20年に殺人罪の刑期がプラスされ約30年の懲役となります。この頃になると20年も30年も50年もカワラネーと半ば自暴自棄になっている様子の植田。彼に新たな試練が振りかかります。

前戸の舎弟分の吉原(伊吹吾郎)と刑務所であってしまうのです。

 アニキの仇を取らないとヤクザの世界ではいきていけない、ということで決闘を申し込まれる植田。一度は受け入れますがまともにやりあったら勝てそうもないので、不意をつき入浴の際に刺し殺します。なんてゲスなんでしょうか。アニキの仇を任侠道に従いとろうとする吉原に対し、やられるまえにやれの精神を見せつけます。仁義のかけらもありません。勝てばよかろう、であります。 

 

 プラスポイントが加算され、懲役は37年となり、拘禁され独居房に放り込まれます。

彼は執念で食器を簡単な刃物に加工し、拘束具を切断したところを刑務官に見つかりボコボコにぶん殴られます。

 「ワシはもう人間じゃない。そんなワシを相手にするお前も人間じゃない」となかなか素敵な論理で相手を罵る植田。そしてリンチを命じるお偉いさんの顔を切り刻んで殺人未遂。刑期は40年を突破します。

 

不屈の闘志を心に秘める植田はそんなことでめげません。判決を受けた法廷からムショへ帰されるところで隙をつき、逃げ出します。前向きって大事ですね。

 

そしてまたまた妹の元へ。

 和子は植田が脱獄犯であること、殺人を犯しているという事実を知りながら、警察へは通報しません。しかし、家を渡すから縁を切れと迫ります。

助けてもらいたいときは頼ってきて、そうでないときは見向きもしない。

 そんな兄が嫌になったのです。

しょんぼりしながら妹の作ったメシを食べようとする植田。そこにかつて叩きのめした朝鮮人の一人がやってきます。実は警察を呼んできていたのです。

植田はぎりぎりのところで逃げ出します。

妹も植田に加勢し警察官の邪魔をします。なんだかんだいっても兄と妹。植田を見捨てることはできなかったのです。

兄が食べることができなかった食事を見て悲しげな表情をする和子。切ないシーンです。

直後、朝鮮人の男も和子も警察に連行されます。

約束が違うと叫ぶ男に和子は「警察なんて所詮そんなもんだ!」と公権力批判を吐くのでした。

 

追跡班との壮大な追いかけっこを展開する植田。

山や川を走り回り、なんとかまくことに成功し、大根を齧りながら線路沿いをスタスタ歩く姿を映して映画は終了します。

ここではない、どこかへ

ここではない、どこかへ

 

 

『脱獄広島殺人囚』感想・評価 まとめ

とにかくギラギラした松方アニキの演技を堪能したい方にはオススメです。アニキはコメディチックな演技ができるのも魅力の一つで本作ではそこも見どころになっています。

ヌルイ刑務所ものは御免だ! 俺はアツイ男の葛藤がみたいんだ!という御仁に最適ですね。

 強烈なキャラクターの行動原理と俳優の演技がピッタリ合致しているから視聴者に快楽を与えるのです。

 

植田はどこに向かうのでしょう。

どこまで逃げても、この狭い日本ではよっぽどうまくやらない限りまた捕まってしまうことでしょう。それでもいいのです。

彼の頭にあるのはとにかく逃げること。それから先のことは全く考えていません。だからこそ、「逃げたい」という単純な情熱に視聴者はクラッとしてしまいます。

 

ちなみに本作はDVD化されておらずなかなか観ることは難しいのですが、動画配信サービスのU-NEXTでは月額費を払うことで視聴できます。同じシリーズの『暴動島根刑務所』も観られますよ!

しかしながら何故か『強盗放火殺人囚』のみ配信されていないので残念ですが、こちらの作品はGYAO!ストアなどでは取り扱いがありますのでレンタル購入してその場で観賞できます。

いやー、DVDにはなっていない作品でもわずかなお金を払えば楽しめるという、とてもいい時代になりましたね!

 

以上、『脱獄広島殺人囚』でした!

 

 

松方アニキのイケテル演技が楽しめる映画レビューはこちら↓

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