吸血鬼の住宅事情。吸血鬼の暮らし方/シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
吸血鬼は、永遠に生きることはできる存在ではありますが、色々な制約があることでも有名です。
・白木の杭で心臓を貫かれると死ぬ(人間でも死にます)。
・にんにくが苦手
・十字架が苦手
・銀製品に弱い
・招かれないと家に入れない。
・血を吸わなければ生きていけない
・太陽の光りを浴びると死ぬ
・流水をわたることができない
・鏡に映らない
さて、長年の伝承や映画等の物語からつくりだされてきたこの吸血鬼像というのを、おもしろおかしく映画にしたのが、「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」です。
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吸血鬼をテーマにした物語というのは、大体において暗い雰囲気です。
当ブログでも紹介した「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」も、不老不死である吸血鬼を、長生きすることに飽き、そして、時代についていけなくなっていった存在として描いていますし、クロエ・グレースモレッツ主演の映画「モールス」では、吸血鬼の少女に恋してしまった男の末路を描いています。
そんな吸血鬼的な要素を、チャカしつつ、コメディにもっていく手腕。低予算にも関わらず、チープさを感じさせないつくりも見所です。
モニュメンタリー
「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、モニュメンタリーという手法をとっています。
モニュメンタリーは、昔からあった手法ですが「ブレア・ウィッチプロジェクト」などで一気に有名になりました。
ドキュメンタリーは、実際に起こっている出来事を撮影して、それを編集していくことで物事や、人間の様子を、テーマに沿ってみせていく手法です。
それに対して、モニュメンタリーは、架空の出来事や人物をつかって、ドキュメンタリー風にとっていくというのが特徴になっています。
そのため、モニュメンタリーだと、特に意識してインタビュー映像などが随所に差し込まれたりすることもあります。
比較的最近の映画だと、宇宙から難民としてやってきたエイリアンを題材にした「第九地区」や、巨大生物の襲来したことによる町の混乱を撮影したビデオカメラがあとから見つかったという設定で進んでいく「クローバー・フィールド」などが、わかりやすいかもしれません。
いずれも、ドキュメンタリー風でとっていて、実際のできごとではないというのがポイントです。
厳密な定義としてどうかはわかりませんが、実際の事件を改めて演じてもらうことは、再現映像といったほうが正しい説明になるのではないでしょうか。
さて、「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、吸血鬼たちが人間達の世界とうまくかかわりながら、4人でシェアハウスをしたら、という物語です。
吸血鬼に許可をもらって、吸血鬼たちの共同生活に密着取材をするという内容になっています。
ヴァンパイアはつらいよ
「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、吸血鬼たちの日常を明らかにする、という点において斬新なことを行っています。
現代社会で、吸血鬼であることを隠しながら、人間の血も吸わなければいけないという現実は、かなり大変であることが予想されるからです。
吸血鬼が、夜目覚めるところから始まります。
一番まともそうに見える379歳の吸血鬼、ヴィアゴが目を覚まして、恐る恐るカーテンを開けます。
「一番怖いのはこのときです」
時計があるとはいえ、もし朝にも関わらず、カーテンを開けたら、吸血鬼である彼は死んでしまいます。
そのため、夜(?)1番に起きて、本当に夜であることを確認するのです。
(24時間式の時計にすればいいと思うのですが、アンティークが好きな彼らは思いつかないようです)
それから、同居人を起こして廻るのです。
獲物(人間)を探しに町へでるときも大変です。
服をコーディネートしようにも、ヴァンパイアは鏡に映らないため、服が似合っているかどうかわからないのです。
それで、男たちがお互いの服をみて、その服は似合ってるとか、ダサイよとか言いながら、一枚一枚決めていくのです。
また、町にでて飲み屋に入ろうとしても、吸血鬼は招かれなければ家に入ることができません。「俺を招いてくれ」と言ってもいいよと言ってもらえず、結局、事情を知っている居酒屋にいって、だらだらするのみという、微妙な感じになってしまうのです。
しまいには、男同士で歩いているから同性愛者に思われてしまって、差別する人たちに、からまれる始末。
獲物である人間を襲うときも、部屋で襲うときは血で汚れるから、タオルと新聞をひいて行うなど、現代における吸血鬼ならではの悩みがでてくるのです。
ホロリもあるよ
そんな彼らも長年生きています。
長年生きていれば色々と悩みもでてきます。
ヴィアゴは、かつて恋をした女性が、自分が寝ている間(下僕の手違いにより)に結婚。
その後、月日が流れて夫と死に別れ、その女性が老人ホームに入っていることを知ります。
ですが、いまさら会いに行くこともできず、遠くから見守るばかりです。
かつてその好きだった女性がくれた、銀でできたペンダントがあるのですが、銀は吸血鬼にとってはダメージをうけてしまうものなので、首にかけると身体から煙があがってしまいます。
また、8000歳を越えるピーターは、どう考えてもボケ始めています。
そのため、本能にまかせて襲ってきます。そうかと思えば、突然正気になって、普通の人間んを吸血鬼にしてしまったりします。
長生きしていることと、他の三人の吸血鬼にとっては父親のような存在なので、みんな文句はいいません。
そんなピーターが、新しい人間を吸血鬼にしたところから、物語は少しだけ加速していくのです。
新しく吸血鬼になった男、ニックは、自分が吸血鬼になったことを友達にばらして回ります。
そのことで、吸血鬼ハンターを名乗る男がやってきたり、シェアハウスも簡単ではないことがわかっていきます。
新しい風が吹く
物語の前半は、
「十字架は苦手?」
「にんにくは?」
など、よくある吸血鬼の制約を聞かれたりして、ほのぼのと物語が進みます。
基本的に、彼らは陽気で楽しい人たちですが、長年生きていても悲しいときもあります。
そんな日常をたっぷり楽しむことができるのは、モニュメンタリーという手法と、彼らのキャラクター性ならではでしょう。
また、新しい吸血鬼のせいでトラブルも発生しますが、悪いことばかりではありません。
本ブログでも紹介した「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」ですが、この作品では、時代についていけなくなった吸血鬼たちがおかしくなっていく姿も描かれています。
「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」では、ニックの親友である色白でぽっちゃりしたスチューという男が、彼らに新しい知識をあたえてくれます。
「スチューはいい奴だから噛まない」
なぜいい奴なのか。それは、単に彼が色白で、赤ら顔の血色がいい男だからです。
血色がいい人間は、吸血鬼にとって、それだけで嬉しくなってしまう存在のようです。
スチューはIT会社に勤めているため、彼らにパソコンやインターネットを教えてくれます。
その結果、youtubeによって、彼らは数百年ぶりに「日の出」を見て、大興奮します。
日本好きなスチューに空手を教えてもらったりと、彼らの生活は意外と楽しく過ぎていきていきます。
ヴァンパイアたちは、自分達が生きていた時代のことしか知りません。どこかで感性がとまってしまうようで、彼らが来ている服装は、彼らが人間だった時代を色濃く反映しています。
だからこそ、彼らは、退屈な日常をちょっとしたことで楽しくしようと努力しています。
現代を生きる人間にも、見習いたいところは随所に見えたりするのがいいことです。
吸血鬼は朝が弱い。
「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、題名からもわかるとおり「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」から題名を文字ってつくられていますし、8000歳を越えるピーターは、無声映画時代のノスフェラチュ(版権の問題で、ヴァンパイアという名前がつかえなったときにつけられた名前)に酷似しています。
吸血鬼映画やクラシックモンスターと呼ばれるオオカミ男や、ゾンビなどがでてくる映画のパロディが多く見られますが、元ネタを知らなくてもまったく問題なくみることができます。
彼らの日常が、こうして映画になっていても、社会的に問題がおきない理由も、物語の最後に明かされます。
重たいテーマの吸血鬼ものに、少しだけ飽きてしまった人たちは、コメディ全開の「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」を見てみるの面白いかもしれません。
以上「吸血鬼の住宅事情。吸血鬼の暮らし方/シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」でした!
題名の元ネタである「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の記事は以下です。