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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

全てのものをぶち壊せ!/デパルマ版「キャリー(1976)」リメイク版「キャリー(2013)」

ぺぺろん 洋画

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いじめられっこの女の子が、超能力パワーで嫌なやつらを抹殺する。

 

これだけ聞くと、実にふざけた話に聞こえますが、かのホラー作家の大家であるスティーブン・キングのデビュー作であり、巨匠ブライアン・デ・パルマ監督の名前が大きく世間で認知されることになったきっかけでもある作品が、映画「キャリー」です。


ホラー映画というくくりで紹介される作品ではありますが、「キャリー」はホラーテイストではあっても、いわゆるホラー映画ではありません。

 

ホラーは好きじゃないという方は気にせずみていただきたいと思います。


若者がもつ青春という名の暴力。

孤独な女の子のささやかな反撃。

好きな人は何度も見返したくなる作品ですので、この記事が見るきっかけになればと思います。


2013年には、クロエ・グレース・モレッツが主演となってリメイクされた本作品ですが、リメイク版とブライアン・デ・パルマ版とではどのような作り方の違いがあるかも含めて紹介してみたいと思います。

 

キリスト教原理主義者の娘


キャリーは、キリスト教原理主義者の母に育てられた女の子です。


キリスト教原理主義者という人たちはアメリカに多数おりまして、政治的にも非常に大きな影響力をもっています。

詳しくは説明しませんが、映画「キャリー」を理解する上では、キリスト教を狂信的に信じている母親が、キャリーの人生に大きく影を落としていることが重要なポイントになります。


物語の冒頭、女生徒たちのシャワーシーンが映り、キャリーは他の生徒たちと離れた場所でシャワーを浴びています。

ほぼ全裸の生徒がいるものの、生徒の大半が着替えを終えようとしている中で、一人でシャワーを浴びているキャリーというだけで、彼女に仲間がいなく、孤独であることがわかるようになっています。

 

そして、シャワー室で事件が起きるのですが、母親はキャリーに性的な知識を一切教えていないことが明らかになるのです。


シャワー室の事件は、お祭りごとのように写されるのですが、事件に加担する生徒たちは、まったく悪びれた様子がありません。たしかに、やりすぎと言われればやりすぎなのですが、10代の少女たちがもつ無邪気さと暴力性がいかんなく発揮された場面となっています。

 

母親の偏った思想のもとで育てられたことで、町の同世代の人たちや、子供たちにいたるまでキャリーはバカにされます。

 

ついついバカにされてしまう存在になっているキャリー。

そういう人間は、特に学校という閉鎖された空間では、きっかけさえあればいつ標的になっても不思議ではありません。

異端な存在を排除しようとしてしまう青春の二面性をあらわしている点も、キャリーの見所といえます。


そんな鬱屈したキャリーが、冒頭の事件をきっかけに、自分に超能力があるかもしれない、と気づくのです。

 

善意が悪意を呼び覚ます

 

シナリオで面白いのが、人々の善意が結果として、キャリーを悪い方向へと導いてしまうことになってしまう点です。

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シャワー室での事件で、キャリー以外の女生徒は先生によって、罰を受けます。

 

話を聞いているとわかるのですが、罰を積極的に与えようとしているのは担任のコリンズ先生だけであって、校長先生などは、あまり興味がないようです。むしろ、あまりかかわりたくないと思っています。

 

コリンズ先生が、「キャリーがどんな気持ちだったか、わかる?」と言って、体罰としか思えない課外授業を行うのですが、それが結果として、事件をはじめるきっかけをつくった女の子クリスに反抗心を芽生えさせる結果になってしまうのです。


また、事件のことを申し訳なく思った女の子スーが、なぜか、ボーイフレンドに「キャリーをプロムに誘って欲しいの」と頼み込みます。


正直、好きでもない男で、しかも、ガールフレンドがいるのがわかっている人から、プロムに誘われても嬉しいはずがないと思うのですが、プロムというものの重大性と、スーによる善意の押し付けが、巨大な事件へさらなる一歩になるところが皮肉です。


ちなみに、プロムとは、プロムナード(舞踏会)の略称で、高校生最後に行われるダンスパーティーのことを指します。

 

プロムの最後には、ベストカップルが選ばれて、そこでプロムクイーン、プロムキングとなるのです。

それこそが、イケてる男女の一生涯の勲章になるのです。

 

そのことを題材にした映画も多くありますが、

プロムクイーンになった女性(シャーリーズ・セロン)が、37歳になってからもプロムクイーンになったときのことを忘れられず、田舎に戻ってショックを受けるという物語「ヤングアダルト」などもありますし、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、主人公の母親と父親が付き合うきっかけになるのも、プロムでの出来事(夜の深海パーティ)になっています。

 

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プロムというのは、アメリカの学生たちにとっては、一世一代の大舞台なのです。


特に、カップルでなければ基本的に参加できないため、参加するというだけでも大きなハードルがあるのです。


みんなから疎外されているキャリーではありますが、最終的には男の子の誘いを断りきれないのは、プロムに出たいというささやかな願いが、キャリーにもあったということを表しているように思います。


それ以外にも、先生が後押ししたり、お母さんが「恥をかかされるだけだから、行ってはいけない」と止めたりもするのですが、彼女のことを思っての行動は、全て裏目にでてしまうのです。

 

誰かが余計なお世話をしなければ、キャリーを放っておいてくれさえすれば、その惨事は起きなかったはずなのです。

 

リメイクは、いじめっ子が道を踏み外していく物語


プロムにでると知ったキャリーをいじめ始めた主犯格の女の子、クリスは、ボーイフレンドをそそのかして、キャリーに恥をかかせようとします。


ブライアン・デ・パルマ版「キャリー」では、ジョン・トラボルタ演じるボーイフレンドと、夜に豚小屋へ行って、血を手に入れるために男の子が豚を殺すところだけ描いているのですが、リメイク版はクリスの描かれ方が明らかに変わっています


たしかに、デパルマ版もクリスは嫌な女の子なのですが、本当の意味で悪い子ではないように描かれています。


ですが、リメイク版は、クリスという女の子が、自分の悪意をどんどん拡大させ、悪い道へと進んでしまう物語になっているのです。


リメイク版のクリスは、かなり気が強く、クラスの中でも強い発言力をもっているようにみえます。

先生に反抗して、周りもそれに合わせるように先導します「全員がストライキすれば、プロムはできないわ」と。

ですが、スーが裏切ることで、彼女は孤独になっていきます。


そして、ボーイフレンドと共に、プロムに行くことになったキャリーを酷い目にあわせるため、豚の血を手に入れようと、豚小屋にボーイフレンドと共に行くのですが、そこからおかしくなっていきます。

 

躊躇なく豚を殺すボーイフレンド。

そのボーイフレンドが、彼女にナイフを渡すのです。

血を手に入れるためには、腹を裂かないといけない、と。

 

そして、彼女は、死んだばかりの豚にナイフをつきたてるのです。


さらに極めつけなのが、超能力を発動したクロエ・グレース・モレッツ演じるキャリーが、クリスが乗っている車を超能力で止めるシーンです。


はじめは彼氏に向かってひき殺すようにいうクリスですが、最後は、自らの意思を持って、アクセルを踏んでキャリーを殺そうとするのです。


女子の中のリーダー的な存在であったはずのクリスが、最後には明確な殺人者として変貌してしまいます。

実は、リメイク版キャリーは、キャリーといういじめられっこの存在によって、たんに気が強い意地悪なだけの女の子が、結果として悪に染まっていってしまうという不幸な過程を描いた作品としてみることも出来るのです。

 

 

すべてを破壊するキャリー

 

プロムに行ったキャリーは、非常に美しく撮影されています。


特に、デパルマ版では、男の子と二人で踊るシーンで、いつまでもいつまでもカメラが二人のまわりをまわります。


いつまで廻り続けるんだ!、というぐらいまわり続けるのですが、ブライアン・デ・パルマ監督はよくこういうシーンをとっていて、その決定版ともいえるのが「愛のメモリー」です。

愛のメモリーでも、物語で男女が抱き合うのですが、ぐるぐるとカメラが廻ります。「愛のメモリー」ではもはやこのシーン以外は忘れてしまいそうなぐらい印象的なシーンです。


話は戻りますが、その後、クリスの策略によりキャリーが、プロムクイーンに選ばれて、壇上に上がっていくことになります。


クラスで目立たず、むしろ疎外されてきたはずの女の子が、プロムという高校最後にして最大のイベントで選ばれるという最高の栄誉。

この幸福の絶頂から、一瞬にしてどん底に向かう展開は、キャリーを見た人であれば、幾度となく思い返してしまうところです。

 

目覚めのきっかけと、ヒッチコックの効果音

 

実は、血というのが、一種のスイッチとしてつかわれています。

 

初潮の血をみたキャリーが超能力に目覚めるというところや、血を浴びることで、能力をつかって暴走を始めてしまうなど、象徴的に使われています。


大虐殺は是非作品を見ていただきたいとおもいますが、全ての人間に笑われていると勘違いするシーンは、見ているこちらも辛い気持ちになる場面です。

ただし、笑われていると思っているキャリー自身の心象風景が写されているということが、ふわっとした画面によって表現されていて、キャリーが冷静に、でも、完全に頭の何かがキレた状態で殺戮をはじめていることがわかる、まさにホラーがはじまるシーンとして秀逸な映像表現となっています。


そして、大虐殺のあと、再びシャワーを浴びて血を洗い落とすと、お母さんを求める女の子に戻っているのですが、さらなる不幸が彼女を襲うのです。

 

ちなみに、物語のいたるところで、特徴的な効果音がなります。

それは、ヒッチコック監督の「サイコ」のシャワーシーンで有名な効果音で、高音で「キャンキャンキャン」と鳴る部分です。

 

 

特にキャリーが超能力をつかったりするシーンで鳴ることが多いのですが、我を忘れそうになったときに音がなって、キャリーが異常な状態になっていますよ、と教えてくれます。

ご覧になった際は、効果音にも注目してみると面白く見ることができると思います。

 

善意が人を滅ぼす

パルマ版においては、少なくとも本当に悪い人間は一人もいません。


ですが、その善意の一つ一つがキャリーを追い詰めていく原因になっていくという、物語の構成が素晴らしいです。

 

ブライアン・デ・パルマによる、二つのシーンを同時に見ることができるスプリット画面をつかったものすごい殺戮シーンの映像表現など、現代においても見所が多いです。

 

リメイク版は、お金をかけている分、超能力の表現が非常にゆたかになっていたりして、どちらも良さがあります。


いずれにしても、鬱々とした青春を送ってしまった人間にとって、あるいは、現在進行形で送っている人間にとっては、映画「キャリー」は、その鬱屈した思いを晴らしてくれる作品になっています。

 

 

キャリー (字幕版)

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キャリーは、ホラー映画というジャンルで紹介されますが、この場合、主人公自身がホラー映画でいうモンスターそのものでもあるため、怖い部分もありますが、それは、追い詰められてしまった人間そのものの怖さでもあります。


学校の中のいじめや、現状をぶち壊してやりたいと思える人間を見事に描いた作品ですので、気になった方は是非ご覧いただければと思います。

 

以上『全てのものをぶち壊せ! /デパルマ版「キャリー(1976)」リメイク版「キャリー(2013)」』でした!

  

キャリー (新潮文庫)

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当ブログで取り扱っているホラー映画は以下

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

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