女性の戦い方。アトミック・ブロンド
映画にでてくる女性のアクションスターというのは、だいたいが細腕です。
「トゥームレイダー」や「ミスター&ミセススミス」などで、アクションもバリバリこなしていたアンジョリーナ・ジョリーや、バイオハザードシリーズでお馴染み、ミラ・ジョヴォヴィッチなどもおりますが、見た目でいえば、華奢な女性です。
さて、「アトミック・ブロンド」では、女性がいかにして屈強な男達を倒していくか、というのを、非常にストイックに考えられた作品となっています。
賛否両論あるところではありますが、感想を述べてみたいと思います。
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デヴィット・リーチ
デヴィット・リンチではなく、リーチ監督が「アトミック・ブロンド」の監督を務めています。
デヴィット・リーチ監督は、今回は単体で監督をやる初作品となっておりますが、引退した殺し屋が再び殺しを始める「ジョン・ウィック」で、共同演出などをしたことで有名になった人物です。
監督自身もスタントマンであることから、アクションに特化した監督といえる人であり、スタントマンの会社まで興しています。
本作品は、いわば、ひたすらシャーリーズ・セロンが、デヴィット・リーチ監督の指導によって作られた、凄まじいまでのアクションをみる作品といっても過言ではありません。
ただし、男性の戦い方と、女性の戦い方というのは、現実というフィルターを通したときに、当然変わってくるものです。
シャーリーズ・セロン
本作品の主人公を演じるシャーリーズ・セロンといえば、南アフリカ共和国出身という、幾分かわった経歴の女優です。
一番有名な役でいえば、実在の連続殺人鬼を演じた「モンスター」です。
アカデミー主演女優賞や、ゴールデングローブ賞を受賞するなど、きわどい役を見事に演じています。
また、元プロムクイーンだった主人公が、自分の過去の栄光を忘れられず、町に戻ってきて残念な思いをしながらも、自分が求めるものに気づくコメディ映画「ヤング≒アダルト」にも主演しています。
コメディからシリアスものまで幅広くこなすシャーリーズ・セロンですが、近年では、ジョージ・ミラー監督「マッドマックス 怒りのデスロード」に出演したことで、一気に注目が集まった女優でもあります。
「アトミック・ブロンド」では、冷戦時代のドイツで暗躍するスパイとなって、襲いくる男達を次々と倒す人物を演じています。
見所
本作品において、物語そのものはそれほど重要ではありません。
スパイの名簿が盗まれたことで、スパイたちが危険に晒されることを恐れたCIAやMI9といった諜報機関が、シャーリーズ・セロン演じるロレーンをつかって、名簿を記憶する人物の国外脱出を手助けしたり、二重スパイを探したりするという話になっています。
一応、ロレーンの正体や、ロレーンの本当の目的などをちらつかせながら、物語は進みますが、本作品の見所は、ひたすら格闘シーンのよさに尽きるといえるでしょう。
冒頭でも書きましたが、女性が格闘をしている中で、気になるところは、その細腕で、ムキムキの男達を一撃で倒すことができるのか、という問題です。
たしかに、映画も作り物ですから、ファンタジーとして割り切ってみることも可能と思いますが、「アトミック・ブロンド」に関して言えば、実際の女性でも、鍛えられた男性と対等に戦える、ということを示した作品でもあります。
とはいえ、男女の違いとして筋肉がつきづらいのは事実です。
では、その差をどうやってうめるのか、といったのが「アトミック・ブロンド」の見所です。どうやって、主人公は、屈強な男達を倒していくのか。
使える武器はなんでも使う
「アトミック・ブロンド」の予告編をみると、シャーリーズ・セロン演じるロレーンが、華麗に戦闘するシーンが連続し、気分爽快な映画に見えるかもしれません。
ですが、強い女性主人公が、敵をバッタバッタと倒す映画だと思ってみると、少々、拍子抜けしてしまうかもしれません。
この映画は、泥臭く戦う映画です。
主人公は、訓練されたスパイであるとはいえ、筋力がある人物ではありません。銃もつかったりしますが、基本的には身近な道具をつかって、敵を翻弄します。
黄色いホースをつかって、相手のクビを締めたり、緊急脱出をしながら敵のクビを締めてみたりしますし、車や冷蔵庫など、ドアをつかっての攻撃などはお手の物です。
弾切れした銃であったとしても、鈍器として使ってみたりします。
ハイヒールをおもむろに脱いだかと思うと、ヒールで攻撃をはじめたりするシーンは、一部の人には興奮ものかもしれません。
殴る回数も違います。
普通のアクションであれば、一発殴るだけですが、局部への攻撃当たり前、3発ぐらい連続で殴って相手を圧倒する等、かっこよさではなく、確実に相手を倒す方法をとっていきます。
階段から突き落とすかのように蹴るのも当たり前。
スタントマンも相当苦労した撮影だったのではないでしょうか。
ボコボコの主人公
本作品の主人公は、冒頭から、ボコボコの状態になっています。
顔は腫れ上がり、体中あざだらけ。
それを、氷がびっしり入った風呂に入ることで冷やしているというところから物語ははじまります。
肉弾戦をしていれば、いくら実力差があったとしても、まったくの無傷というわけにはいきません。
「アトミック・ブロンド」では、リアルさを追求した結果、主人公であるロレーンも、何度も何度も攻撃を喰らってしまうのです。
殴られれば顔が膨れあがり、アザができて、ふらふらになっていく。
当たり前といえば当たり前ですが、80年代のアクションスターがやっていたようなかっこよさを追求したものではないところが面白いところです。
超人的な強さではないものの、まわりにある道具をつかい、冷静に戦いきるという姿勢。極めて珍しいアクション映画といえるのではないでしょうか。
主人公も泥臭い戦いであれば、敵もまた泥臭いです。
なかなか気絶しなかったり、死ななかったりするので、いったいいつになったら、動かなくなるんだよ、と思うぐらいになっており、実際の戦闘っていうのは大変なんだなぁと思ってしまうぐらいです。
ネタバレをしたからどうこうという作品ではありませんが、ただ格好いいだけの戦闘シーンに飽きてきた人がみると、違った楽しみ方ができる作品となっています。
以上、女性の戦い方。アトミック・ブロンドでした!