シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

夫婦ゲンカが円満の秘訣/ミスターアンドミセス・スミス(Mr.&Mrs.Smith)  

Mr.&Mrs.スミス プレミアム・エディション [DVD]

 

 

ブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリーは、ハリウッドが誇るおしどり夫婦です。


その二人が出会い、そして、結婚するきっかけになった「ミスター&ミセス・スミス」が金曜ロードショーで放送されるということもあって、ちらっと紹介してみたいと思います。


思わず声がでてしまうようなアクションの連続と、夫婦仲が描かれたアクション・コメディともいえるこの作品は、飽きずにみることができること間違いなしです。


前半は夫婦の秘密が徐々に明らかになっていき、後半は、アクションの連続。それでいて、根底にあるのは、夫婦とは何か、結婚とは何かというある意味普遍的な問いをつきつけながら、それが、とんでもない大アクションのもと語られるというところが、見ていてスカッとします。

  

ブラピとアンジー

 

物語は、夫婦でカウンセリングを受けるところからはじまります。


ブラピ演じるジョンは、「これは車の点検みたいなもので、特別な意味はないんだ」といいますが、アンジェリーナ・ジョリー演じるジェーンと話がかみ合いません。


出合ったときが何年前だったかすらあやふやで、二人が微妙に冷めているのがわかります。


2005年公開の映画でありますが、この作品で二人は初共演。

 

監督はあえて、ファーストシーンが二人の初めての撮影であることを言っています。たしかに、結婚しているという設定の二人が、どこかぎこちないというところがポイントです。


既に、ブラット・ピットもアンジェリーナ・ジョリーももう大スターです。


ブラット・ピットは、デヴィット・フィンチャー監督「セブン」や「ファイト・クラブ」、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」などの大作映画に出演しており、その名前を知らぬものはいないといったところ。

 

  

また、アンジェリーナ・ジョリーに関しても、あの名優ジョン・ヴォイドを父に持ち、17歳のカルテでの劇的な演技力、ゲームをもとにした「トゥームレイダー」で抜群の存在感を発揮し、アクションもこなす大女優となっていました。

 

トゥームレイダー (初回限定版) [DVD]

トゥームレイダー (初回限定版) [DVD]

 

 

そんな二人が初共演で、夫婦を演じるというのは、それだけで驚きだったことは言うまでもありません。

 

 

夫婦の悩み。

 彼らはいわゆる仮面夫婦です。


表面上は仲良くみせていますが、お互いのことを全然明かしていません。


アンジェリーナ・ジョリー演じるジェーンは、「夫婦にだって秘密はあるわ」と言って、ごまかしています。


この二人の秘密が徐々に明らかになる前半部分は、みているこちらもドキドキします。

二人はいったいどんな秘密を隠しているのか。

そのあたりは、開始20分程度で明らかになってしまうので、本当の意味で驚きたい人は、さっそく、ここから下はネタバレになります。

 

スポンザードリンク

?

 

  

二人はある組織に所属する殺し屋であることが判明します。


お互いが殺し屋だと知らないままに結婚生活を続けてきた二人。


一歩間違えば、お互いの素性がばれてしまいそうになりながら、二人は結婚生活を続けていたのです。

 

そんな二人が、たまたま同じターゲットを殺すことになってしまうことから、二人の婚姻生活が一気に狂います。

 

殺す相手が、ダブルブッキング。ひとたびきっかけさえあれば、夫婦は闘わなければならなくなる、そのきっかけがはじまってしまうのです。

 

ちなみに、2013年から放送されている海外ドラマで「ジ・アメリカンズ」というものがあります。


これは、ソ連のスパイであるKGBに所属している男と女が、任務のために夫婦としてアメリカに潜入するのですが、そこで子供をつくり生活します。

スパイというのは、自分の家族にすら自分の仕事を伝えることはしません。


そのため、現地で生まれた子供たちには、自分たちがスパイであることを隠し、みつからないようにしながら、子育てと任務を両立できるのか、というホームコメディとなっています。


「ミスター&ミセス スミス」は、スパイではありませんが、表面をつくろって生きているという点においては、面白さのコンセプトが似ているように思います。

 (ちなみに、ジ・アメリカンズは、日本ではNetflixのみで見ることが可能です。)

 ジ・アメリカンズ | Netflix (ネットフリックス)

究極の夫婦ケンカ

 

生き残るために、二人は殺しあうことになります。


普通であれば、たんなる殺しあいになるところですが、二人は夫婦であることから、どこか痴話ケンガのように見えるところが面白いです。


ただ、二人が殺しあうことによって、5年間にもわたって夫婦を演じてきたにもかかわらず、急速に二人はお互いのことを理解していくことになるのが素晴らしいです。

 

家に帰ると勝手にカーテンが変えられている。


男にとってはよくある話です。

家のことは基本奥さんに任せてしまっていて、家のレイアウトなんかを変えられていても、文句はいえない。

たとえ自分が気に入らないものが家においてあったとしても、ぐっと堪えてしまうのです。

こういった、夫婦の小さな行き違いのようなものが随所に入っています。


そして、戦いの中でお互いの不満を言い合うのです。


不満を言いながら、銃は連射されるし、バズーカ砲はぶっぱなされるし、殺し屋どうしの夫婦ケンカは、とんでもない迫力で展開されていきます。

 

男の悩み


ジョンが、ジェーンに聞きます。


「人は何人殺したんだ」


普通の妻だと思っていたら殺し屋とわかったわけですから、たしかに、聞きたくなるのもわかるというものです。


「俺も殺し屋は長くやっているからな。62人殺した」


その話を聞いて、ジェーンは平然と


「312人よ」


と答えるのです。

 

面白いのが、殺し屋の組織の規模にしても、能力にしても、いずれも、ブラット・ピットよりもアンジェリーナ・ジョリーのほうが格が上ということです。


殺し屋の組織ということにはなっていますが、実際は、旦那よりもいい会社に勤めている奥さんみたいな、関係を反映させているのです。


だから、その台詞のあとでブラピは「やっぱり、312人も殺していると違うな」と皮肉を言ってくるのです。


殺した人数は、付き合った人の数とかそういうものに変換していいと思いますが、アンジーは全然気にしていなくて、ブラピのほうが気にするっていうのは、殺し屋だろうと何だろうと一緒なのです。

打ち明けてはじめてわかる

「人を殺して罪の意識はあるか。夢にでてきたこととかはあるか」

 ブラピは聞きます。

「俺はない」

そして、アンジーもまた、ない、といいます。


それは、正直一般的な人間の感覚とは異なります。

普通であれば、人を殺す罪にさいなまれるでしょうが、彼らの感覚は一緒なのです。


こういうところで、二人が仮面とはいえ夫婦になったこと、それは、相性がバッチリあっていたからだ、ということがわかるいいシーンです。

酷すぎる名前

ブラピの名前は、ジョン・スミス。

アンジーの名前は、ジェーン・スミスです。

これは、それだけで嘘の名前だとわかる名前です。

ジョンはアメリカでは非常に平凡な名前の典型です。ジェーンもまた同じ。

スミスという性もまた、アメリカ人に非常に多い名前となっています。

 

日本で言えば、佐藤・田中といったレベルです。

名前で言えば、花子・太郎と書くとさすがに今の日本ではありえないですが、とにかく、よくある名前の典型なのです。

 

そのため、劇中で、アンジェリーナ・ジョリーが、「ジョン・スミスを探して!」と言うのですが、部下の女の人は困ってしまう、というのも頷ける話なのです。

 

ものすごく蛇足ですが、アニメ甲殻機動隊において、サトウ・スズキ。ワタナベ・タナカという名前のキャラクターがでてきて、劇中のキャラクターがあまりの酷さに困ってしまうというシーンが思い出されます。

また、涼宮ハルヒの憂鬱において、主人公のキョンがタイムスリップした際に名乗る名前が「ジョン・スミス」ということからも、これが偽名ですっていう代名詞みたいなものだということがお分かりになっていただけるのではないでしょうか。

 

結婚って何?

 

話がまたかわりますが、同じく夫婦について語った強烈な映画があります。

デヴィット・フィンチャー監督「ゴーン・ガール」です。

2015年に公開された映画ですが、これもまた夫婦のありかた、結婚について語られた映画となっています。


奥さんが行方不明になってしまった旦那。


その奥さんには秘密があって、夫がどんどん追い詰められていくことになるというサスペンスです。

これも、最終的には、夫婦ってこういうものよ、という本音と建前が見え隠れする素晴らしい作品でした。

 

ゴーン・ガール (字幕版)
 

 

「ミスター&ミセス スミス」は、夫婦がどうやっていけば円満に暮らしていけるのか、っていうことを指南しているようにも見てとれます。

 

カウンセラーは言います。


「時には、激しく言い合うほうがいいときもあります。また、二人で力を合わせることで困難に立ち向かうこともできるのです」と。

  

大銃撃シーンがあるのですが、二人はお互いの死角を見事にカバーしながら、サム・ペキンパー監督もかくやという、圧倒的な戦力差を前にして戦いぬきます。


お互いの背中を預けながら闘う。

それこそが、夫婦。


ちょっと間違った夫婦感かもしれませんが、面倒なことを考えずとも、カーチェイスはあるし大爆発はするし、ものすごい数の弾丸が飛び交う素晴らしい映画的映画となっています。


もし、もやもやをかかえている人たちがいたら、金曜ロードショーでの放送を機会に、是非、ご覧になってみるといいかもしれません。

 


以上、「夫婦ゲンカが円満の秘訣/ミスターアンドミセス・スミス(Mr.&Mrs.Smith)」でした!

 

 

スポンサードリンク