シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

Netflex映画。感想&解説「ヒュービーのハロウィン」

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ネットフリックスオリジナルによる作品は、数多く作られておりますが、その中でも、パロディ色を強めにしつつ、非常に心温まるよい映画「ヒュービーのハロウィン」について、簡単に解説と、感想をのべてみたいと思います。

一見すると、たんなるおバカ映画にみてしまう人もいるかと思いますが、映画によって人がどうあるべきかも教えてくれる作品となっていますので、ぜひ、この機会に確認してもらいたいと思います。

また、後半においては、ネタバレもしていきますので、気になる方は、途中までご覧いただければと思います。

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バカにされる主人公

アダム・サンドラー演じる主人公のヒュービーは、町の大半の人からバカにされている人物です。

カナダ人の彼女がいるというささやかな嘘をついてはいますが、どこまでも人のよい人物となっています。

彼は、驚きやすい人間となっており、あらゆる人に驚かされてバカにされていますが、決して、誰かを傷つけたり陥れようとはしません。

 

「いつも自分より他人のことを優先。だから、英雄なのよ」

本作品においては、この主人公の人の好さこそが一番重要視するポイントとなっていますし、本作品における物語の救いにもなっています。

 

この手の、すごく良い人だけれど、女性が苦手だったり、奥手だったりするせいで、なかなかうまくいかない人物を描いた作品としては、「40歳の童貞男」なんかが有名ですが、本作品におけるヒュービーもまた、町の人のために、ボランティア活動をしてみたりと、実は、素晴らしい人間だったりします。

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バカにはされますが、ある程度の年齢になりますと、この手のボランティア活動を行うというのは、頭がさがる行為だということがわかります。ですが、学校の子供たちは彼にお菓子を投げつけてきたりしますし、

 

「彼は人間だ!」

 

と言って生徒を怒る先生は、言っているそばから、ヒュービーの話を聞かないでスマートフォンをいじっています。彼の親切心や、町の人たちを思う気持ちはこれっぽちも伝わっていません。

 

本当にひどいのか

さて、いたずらにしては少々度が過ぎているといえなくもない、本作品におけるそれぞれのキャラクターの行動ですが、本作品は、そんな差別的な考えや、自分こそが正義だと思って他人を傷つけてしまいそうな人にこそ見てもらいたい作品となっています。

 

町の人たちは、あきらかにぶつかれば大けがをしそうなものを投げつけていきます。

物語の冒頭では、主人公は「ロッキーだ」といいながら、子供たちから投げつけられる卵を、魔法瓶の中にいれてみたりします。

あまりに華麗な避け方は、達人クラスです。

町の人たちは、あまりに日常的に彼に対して暴力的な行いを続けてきたあまりに、その事実に対して気づいていませんし、主人公もまた、気にもしていません。

 

本作品は、コメディとなっていることから、それも含めてギャグではあるのですが、やりすぎている人たちを非難することにもキチンと繋がっている点が、よくできています。

数々のパロディ

本作品のタイトルは「ヒュービーのハロウィン」というだけありまして、物語の冒頭から、物語のパロディの方向性が決まっています。

 

ジョン・カーペンター作品「ハロウィン」のオマージュがちりばめられており、精神病院に入れられていた男がハロウィンのタイミングで抜け出してくるというのま、そのまんま映画「ハロウィン」となっています。

 

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ブギーマンとしての異常者が、ハロウィンに紛れてやってくる恐怖というのが、そもそもコメディとして機能しているところです。

そのあたりが、実はたいして関係ない、ということも含めてギャグとなっているのと同時に、車に乗りながら映画をみているときのシーンでは、ジョン・カーペンター作品「クリスティーン」のオマージュも登場しています。

 

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ちなみに、「クリスティーン」は、邪悪な意思をもつ車の話となっており、他のホラー映画とは一線を画する作品となっています。

いずれにしても、謎の人物が意味ありげにでてくる姿は、あくまで、ジョン・カーペンター「ハロウィン」のパロディとなっているにすぎないので、それほど考える必要はありません。

魔女の町とハロウィン

そろそろ、ネタバレも交えていきます。

本作品の舞台は、魔女裁判が行われたことで有名なセイラムを舞台にしています。

一応、作中では、主人公の先祖は、魔女裁判に反対をした結果、自分自身も殺されてしまったという話になっています。

ヒュービーがいじめられることと、魔女裁判に異議を唱えて殺されることを、重ねて描いているところに、構成の面白さを感じるところです。

そんな魔女裁判の町で、誰よりも町を愛している男こそが、ヒュービーという男なのです。


彼は、誰に頼まれるわけでもなく、何か危険がないかを確認するべく、ハロウィンのイベントで沸く町を巡回してまわります。

普通に考えれば、かなり変な人物ではあるのですが、彼自身が非常に良い人物であることは、作品を見ていくとわかってしまうところです。


人がいいからこそ、誰かのイライラのはけ口になってしまったりするところが、彼の悲しいところでもあります。

ハロウィンの光景

ネットフリックス映画ということもあるのか、近代的な内容も取り込んでいるところが憎いところです。

強調するほどでもないでしょうが、ハロウィンの際の住人たちのコスプレは、現代を表していて楽しいところです。

ちょっと昔の映画であれば、「キャスパー」がでてきたりするところですが、今どきのハロウィンは、やっぱり、ハーレイ・クインでしょう。

 

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ハーレイ・クインの衣装に身を包んだ人たちがいる一方で、ヒュービーが好意を抱いているヴァイオレットの息子が、オズの魔法使いにおける、ブリキの木こりの衣装を着ているあたりは、アメリカの伝統を忘れていないところのアピールになっていて好感がもてるところです。

 

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物語の概要

さて、改めて「ヒュービーのハロウィン」の内容についてですが、みんなからバカにされている主人公のヒュービーが、ハロウィンのイベントで発生した、謎の事件を追うというのが、ざっくりとした話になっています。

冒頭から登場するいかにもサイコな人物の影。

スティーブ・ブシェミ演じる狼男の存在。

ちなみに、自分が狼男だと思ってしまうという病気は実在しておりまして、ハロウィンもののホラー映画のパロディということで、色々と取り込んでいるところです。

 

そんな、ちょっとしたパロディとかの中で、明らかに事件が起こっています。

もてない男が、あこがれの女性と付き合うことができる、というところもありますが、本作品のクライマックスはいうまでもなく、魔女の存在でしょう。

 

魔女は実在するのか。

これも、一種のギャグではあるのですが、主人公のヒュービーをバカにする人たちが、次々と告白を始めます。

だいたいにおいて、誰かを過剰に攻撃したりする人たちというのは、自分自身に問題を抱えていることが多いものです。

本作品においても、その流れとなっておりまして、頭の毛がおかしいとか、性的に満たされていないとか、難しい言葉を知っているとか、かなりどうでもいい理由で、ヒュービーを攻撃していたことがわかります。

「立ち向かわなきゃだめよ」

と、ヒュービーの母親は言っておりますが、結婚して独立をしない男のことを心配する母親の暴走を描いた作品になっていることも、本作品の闇をコメディ化しているといえるところでしょう。

ネタバレ、というほとではないのかもしれませんが、ヒュービーをバカにする人たちを、母親は殺そうとしますが、ヒュービーはそれを止めます。

止めているにも関わらず、被害者たちは自分たちがしてきたことを棚に上げて、ヒュービーをバカにするのです。

「ヒュービーは、この町で一番いい人よ」

とヴァイオレットは言います。

この言葉に助けられて、ヒュービーは悪い道には落ちなかったわけですが、魔女なんていないという裁判が行われたセイラム。

その町で、魔女裁判に異を唱えたはずの家の子孫が、実は魔女だったというオチがついて終わるあたりも皮肉がきいていてよいところです。

「他人にののしられても、親切とユーモアで切り返す」

本作品は、コメディというオブラートで包んではいますが、誰かに激しく攻撃されている人たちが、どのようにしてその苦難を乗り越えるべきかも教えてくれる作品となっていることから、まさに苦難の真っただ中にいる人たちにこそ、見てほしい作品ところです。


以上、Netflex映画。感想&解説「ヒュービーのハロウィン」でした!

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