グレンラガンと比較。感想&批評「プロメア」
アニメ制作会社トリガーといえば、あのガイナックスから独立し、リトルウィッチアカデミアや、キルラキルで有名です。
名作アニメの一つである「天元突破グレンラガン」を制作した今石洋之監督と、中島かずきのコンビがつくる劇場版オリジナルアニメとなれば、ファンならずとも見ないわけにはいきません。
「プロメア」の魅力と、残念に思う部分も含めてネタバレ若干ありで感想&批評を述べつつ語ってみたいと思います。
スポンザードリンク
?
天元突破グレンラガン
「プロメア」を見るにあたって見なければならないのは、「天元突破グレンラガン」です。
もちろん、見なくても作品は楽しめるでしょうが、作品を多角的にみるためにもぜひみておいていただきたい作品です。
「プロメア」の主人公である火消しのガロは、キャラクターデザインから性格にいたるまで、「天元突破グレンラガン」におけるカミナの基本構造をうけついでいるといえます。
ただし、今石監督は、カミナとの関連性を否定しています。
否定はしていますが、そのキャラクター性はカミナをベースにして考えたほうが、観客としてはしっくりくるのではないでしょうか。
カミナ=ガロ?
「天元突破グレンラガン」におけるカミナという存在は、主人公であるシモンにとって超えるべき存在として描かれます。
穴を掘ることしかできないと思い込んでいるシモン。
カミナという男は、田舎にいるちょっと兄貴分な男にすぎません。
父親に対する罪悪感をもつと同時に、やせ我慢をする男であり、兄貴として虚勢をはっているうちに、本当に世界を変えるきっかけをつくっていく男となっています。
一方で、カミナはシモンという力をもつ男のおかげではじめて成り立つものとなっているところです。
シモンという弟分のために虚勢を張る。
その結果、シモンが力を発揮して困難に打ち勝つ。
もちろん、カミナ自身の精神力の強さや人柄はあるものの、その根底にあるのは、シモンという男との強い絆のためなのです。
さて、翻って「プロメア」のガロを考えてみますと、見た目や口上を述べるところこそ、アニキにそっくりですが、カミナの分身としてみるには違う部分があります。
ガロに弟分はいません。
彼は、幼いころに助けられたクレイという男のために活躍します。
カミナよりもまっすぐで純粋なのです。
カミナはもうちょっとずるい性格をしており、多次元宇宙に取り込まれたときにシモンが見た世界では、獣人にあっさり降伏する部分があります。
意図的に弱らせたカミナと考えることもできますが、多次元宇宙の中では、そんなカミナも存在している、という証明ともいえるエピソードです。
ガロは、精神性だけでいえば、カミナよりも幼いように思いますが、その結果、主人公としての立ち位置に説得力が増すところではないでしょうか。
グレンラガンにおけるカミナは、あくまで、主人公にはなれない存在なのです。
敵のキモチ
ここからはさっそくネタバレになりますので、プロメアのネタバレをしたくない人は、ちょっと覚悟の上で読んでいただければと思います。
さて、「プロメア」という作品は、敵の目的もグレンラガンの中にでてくるものと酷似しています。
グレンラガンでは、月が落ちてくるという状況が発生し、責任者となっていたロシューが、宇宙船に動物や人間をのせて脱出する計画を立てます。
人類を助けるために、大多数を見捨てる。
こんな非人間的な決断に対して、仲間たちは怒ります。
ただ、ロシューがそんな決断をしてしまうのも理由がわかるのです。
ロシューは幼い時に非常に貧しい村で生活しており、その村では村人が一定の人数を超えると、くじ引きをして村の外に追放するというルールがありました。
大多数を助けるために誰かを犠牲にする、というのが処世術となっていたロシューが、人類を助けるために一部人間だけでも生かそうとするのは当然なのです。
「プロメア」においても、敵の親玉は1万人の人類を宇宙船に乗せて、別の星系にワープしようとします。
しかも、バーニッシュの命を犠牲にするやり方で。
敵自身は、悪いことをしている意識はありません。
大多数を助けるために、一部の人間が犠牲になるのはやむえないと思っているのです。
それぞれの立場からすれば正義がある、というのを描いているのはグレンラガン時代からのお得意の物語構造となっているところです。
ガロやリオという二人が力を合わせることにより、まぁ、いわゆる気合でなんとかしてしまうところに、「プロメア」の爽快感があり、グレンラガンから引き続きあるところであったりします。
特徴
本作品は、3Dアニメーションをフルにつかった作品となっています。
普通のアニメであれば、背景があって、そこでレイアウトを決めながら戦闘を行っていきますが、3Dモデリングされた背景を、同じく3Dでつくられたキャラクター達が縦横無尽に戦いまくる、というのは、画面ががちゃがちゃとして落ち着かない部分はあるものの、勢いのある演出となっています。
また、作品全体がポップなデザインにまとめられているところは面白いです。
物語の冒頭で、火を操るバーニッシュ達は三角形のアイコンによって能力の発現が示されます。
主人公たちが操るのは四角い武器。
「廻るピングドラム」「さらざんまい」でおなじみ幾原邦彦監督もまた、アニメ表現としてかなり特殊なポップな表現をしますが、その方向とはまた違ったポップさが魅力といえるでしょう。
内容について
さて、特にふわっとした部分にのみふれてきましたが、「プロメア」は、内容そのものは深く考える必要はないと思います。
バーニッシュと呼ばれるミュータント。
異分子を差別する一般大衆。
主人公たちの立場と、バーニッシュ達の迫害と想い。
それを操る黒幕。
たしかに、まっすぐなだけでは生きていけない主人公の葛藤がないわけではないのですが、基本は気合で乗り切ります。
本作品は、いわば、アニメ版の「マッドマックス 怒りのデスロード」といっても過言ではありません。
「マッドマックス怒りのデスロード」は、物語の内容を極力排除し、カーアクションを含めたアクションをこれでもかと盛り込んだ作品でした。
「プロメア」も、炎がなぜつかえるようになったとか、迫害とか、怒りの感情によって炎が、とかありますけれど、ようは、アクションてんこもりです。
「天元突破グレンラガン」は、人類の進化が破滅をもたらさないように自身をかえたアンチ=スパイラルとの最終決戦で、星をなげつけ、しまいには銀河そのものを武器にして戦ってしまいますので、、そういったとんでもない表現をみた人間からすれば、まぁ、まだまだスケールは小さいな、と思ってしまうかもしれません。
重たいテーマはあるものの、「燃やしていいのは魂だけだ」
という主人公の言葉がすべてを言い表しているところです。
万が一、「プロメア」をみた人で「天元突破グレンラガン」を見ていない人がいたら、絶対にみていただきたいと思います。
また、アニキへの想いを強くした人は、どんなところがガロとアニキの決定的な差なのかを含めてみてみると、発見があるかもしません。
以上、グレンラガンと比較。感想&批評「プロメア」でした!