シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

安藤組、解散  『安藤組外伝 人斬り舎弟』(1974年)

本日は実録安藤組シリーズの番外編である『安藤組外伝 人斬り舎弟』についてお話したいと思います。監督は中島貞夫、主演は番外編ということで(安藤昇ではなく)菅原文太です。

安藤組外伝 人斬り舎弟 [DVD]

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主人公のモデルは花形敬

その文太兄ィが演じるのは日向謙(ひゅうがけん)というならず者。非常に暴力的な男で酒を飲んでは喧嘩を繰り返します。負けん気も強ければ喧嘩も強い。そんな肉食系男子です。ですが妻には確かな愛情を持っている様子が描写されています。

 

この役のモデルとなったのは安藤組の組員、花形敬です。この人物は伝説が多く、全身傷だらけと言われたり、タバコを消す時は自分の肌に押し付けて消すといわれていました。組長の安藤昇には従順で頭脳明晰だったそうです。

 

作中では、酔って暴れて身内の者に暴行することで組の内部でも抗争の原因になるなど破天荒な性格が強調されています。

疵―花形敬とその時代 (ちくま文庫)

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文太、暴れる

 映画は、日向と野田(梅宮辰夫)の決闘からスタートします。双方、殴り殴られの激しい戦いの末、決着は着きませんでしたが後々までこの腐れ縁は続くこととなります。

そんな日向は津吹(渡瀬恒彦)とともにブタ箱に放り込まれていたところを、安藤昇(本人が演じている)に保釈金を積んでもらい釈放されます。昭和24年、夏の終わりの頃です。この暴れん坊二人を安藤は舎弟とし、安藤組は戦力を増していきます。

 

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昭和25年、二人は人斬りジム(安岡力也) が米軍から物資を横流ししてもらっていることを知るとジムの女を縛り上げ、物品を根こそぎ奪います。

夜の街で偶然、ジムとその女と遭遇した津吹はジムによって片腕を切り落とされてしまいます。

瀕死の状態で日向とその妻の家へと転がりこむ津吹。仕返しとばかりに日向がジムと女の店を襲撃、ビール瓶でジムの腹を貫き、女の足を刀で切りつけます。直後に安藤昇経営のバーに行き酒を一杯あおる日向。

文太、服役し、出所する

傷害致死で四年の懲役に服した日向。彼と入れ替わるようにして野田が安藤の舎弟分となります。

片腕となった津吹が日向の妻と関係を持つという描写も挟み込まれ、安藤昇、国分(室田日出男)らに南部組の知り合いの者がリンチされたことから南部組との抗争が始まります。

元々は、バーを経営しながら機を伺っていた安藤昇に渋谷から出て行けと難癖をつけられたことから始まったこの争い、バーが爆破される寸前に出所してきた日向が組の窮地を救います。

そして昭和29年、ようやく安藤興業を立ち上げ、事務所を構えることができたのです。

 

野田は野田商事を経営しながら野田練心館道場にて組員を鍛え上げ、暗殺者を育てていました。

その頃、その功績のおあけげで組の中では面と向かって彼に逆らう者のいなくなった日向でしたが、酒乱の気があり、酔っては組員を殴る蹴るの大暴れ、反日向派が彼の暗殺計画をたちあげます。

その反日向派のトップは因縁深い野田。彼は血気盛んな若者を使って日向の命を狙います。腹部に銃弾が命中したものの致命傷にはならず、日向を葬ることに失敗、野田の女が経営するお高い飲み屋に出向いて野田への怒りをぶちまけます。

安藤昇のもと、日向と野田は手打ちの用意をされますがうまくまとまらず、安藤も愛想をつかす始末。

その頃、安藤自身は成功者として浮かれていた、と自身で述懐し、作中でもあまり出番がありません。

日向と野田は一対一での決闘の約束をしますが、戦闘前に舎弟が酒に睡眠薬を混ぜて日向を眠らせます。仲間内で対立し、組としての力が弱まることを懸念したわけです。

翌朝、約束を反故にしたことを詫びる日向。この度の諍いは水に流そうやと提案し野田も受け入れます。

安藤組、解散。

昭和33年、安藤組を語るのに忘れてはならない横井英樹襲撃事件が発生。安藤昇らは指名手配され、日向も姿を隠しながら生活します。そんなある日、日向は新宿の街で妻と再会。娼婦となっていた妻でしたが日向は再び一緒に住むことを決意します。

しかし警察はタクシー運転手の情報を元に日向を逮捕。野田、安藤らも次々と捕まってしまいます。

安藤組の弱体化は深刻となりましたが、比較的懲役の短かった日向が安藤昇ら幹部の出所に備えて事務所を守ろうとします。

しかし、この安藤不在の間に他のやくざ組織が縄張りを狙い勢力をつけてきており、その内の一つ、世越組との抗争が始まります。

日向は組員たちとともにヒットマンの襲撃から身を隠し生活しますが、アイロンを買いにふらっと外出した帰りを外島(成田三樹夫)らに狙われ刺殺されてしまいます。

安藤昇が出所後、日向の舎弟でもあった木谷も抗争により命を落とし、これ以上の犠牲をだすのは避けたいと考えて、安藤組の解散を決定します。

男の終い仕度

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『安藤組外伝 人斬り舎弟』感想・評価 まとめ

本作は安藤昇の著書「極道一代 やくざと抗争」を原作としています。

先ほども書きましたが、『やくざと抗争 実録安藤組』や『実録安藤組 襲撃篇』と比べると、番外篇ということもあり、安藤自身の活躍は少ないです。

自分が気に入ったキャラクターは渡瀬演じる津吹です。

向こう見ずなチンピラを演じさせれば日本一といえる渡瀬は本作でも目だっています。実をいうと登場時間はほとんど前半で終わってしまうのですが、ダンスをしながら米軍による空襲を面白おかしく語る部分(防空壕にもぐるのがめんどくさかったから一人で工場にいたら爆弾が防空壕に直撃して自分以外全滅、不発弾を避けながら実家に戻ったら跡形もなく消し飛んでいた母だか父だか分からない肉片が電線に垂れ下がっていた)は絶品。

その後、飲んだくれてジムに片腕をばっさりいかれるのも壮絶であります。そして兄貴分の日向の妻との情事も切なく、美しい。

そんな津吹は薬物中毒になってあっさり死んでしまったことが日向の妻から聞かされます。

凄まじい戦争体験を心のうちに秘めて(たまには話のネタにしながら)、暴れまわった津吹。印象的なキャラクターです。

 

稀代の暴れん坊として描写された日向。飲みながら自分の頬や腕をコップの破片で切り刻むなど破滅的な男でしたが、妻には意外(?)と真面目に向き合う様子が良かったです。外敵との争いを経ての組織の強化、そして内部闘争にいたるという実録ヤクザ映画のよくあるパターンなので話もわかりやすいですよ!

 

本作は長らくDVD化されておらず伝説の作品となっていましたが2016年のDVD化が決定。手に取りやすくなりました。大手レンタルショップにも並ぶかもしれません。

そんな本作を観る前にこの二本で安藤組を予習しましょう。

cinematoblog.hatenablog.com

 

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とはいえ、『実録安藤組 襲撃篇』は現在でもDVD化の予定がないため動画配信サービスを利用するなどして観ないといけません。早期のソフト化が望まれます。!

 

 

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