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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

安藤組、爆誕。 『やくざと抗争 実録安藤組』(1973年)

1973年の映画たち

1973年は日本映画にとって非常に重要な年です。この年の1月に『仁義なき戦い』が封切され、新たなヤクザ映画の誕生に観客は沸き、続く4月にシリーズ最高傑作ともいわれる『仁義なき戦い 広島死闘篇』、さらに9月には第1部の群像劇をより拡大させた『仁義なき戦い 代理戦争』が公開されました。

 

仁侠映画がついに時の流れに抗えなくなり、あふれ出した暴力の表現方法が、手持ちカメラに代表される荒々しいカメラワークとなって結実したのです。

 

その後、実録ヤクザ路線は東映のドル箱となり、息をつく暇もないほどに量産されたのですが、奇しくもその実録路線誕生の年にある映画が公開されました。

 

もう一つの東映実録路線ともいえる、佐藤純弥監督の『やくざと抗争 実録安藤組』です。

安藤組とは何か?

 実録路線とはそのままの意味で、現実に起きた抗争を脚色し、ドラマチックにまとめあげるという虚と実の入り混じった作風です。

 

同じく実録をタイトルに戴く本作は、元ヤクザの安藤昇が自らの半生を元に映画化した作品です。

 

自分をモデルとしたキャラクターを自分で演じる。

なんて破天荒な役者なんでしょうか。

 

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背丈はそんなに大きいはずではありませんが、やはりオーラがすごい。画面に入ってくると自然と目が向いてしまう。

安藤昇はそんな特異な空気をまとった人間なんです。

 

そもそも安藤組とはどんなヤクザなんでしょうか。

 

簡単にまとめると、もともと愚連隊をやっていた安藤昇が27歳の時に渋谷に設立した東興業という組織が、いわゆる安藤組です。この東興業の幹部たちは全員、大学出か中退者で当時では異例の学歴の高さを持っていました。

 上納金、麻薬、刺青、指つめの禁止という新しい感覚を持ち合わせたヤクザ組織で、表向きは興業や不動産関連の業務をこなしながら用心棒も引き受け、さまざまな武器を買い集めていたそうです。

 

その後、安藤組はプロレスラーを誘拐したり、賭場を開帳して荒稼ぎしたり、横井英樹を襲撃したりと、五島慶太を脅迫したりなどと数々のエピソードを持っています。

『塀の中の懲りない面々』を代表作に持つ安部譲二も安藤組に所属していたそうです。

 

1964年、仮釈放された安藤昇は組を取り巻く環境を考え、解散を決めます。38歳になったこの年、解散式を開催し、紆余曲折を経て本人の思いもよらず俳優として歩み始めることとなったのです。

安藤組シリーズ、復活。

 そんな安藤組の活躍を描いた実録シリーズが2016年、DVDとして甦ります(一作のみ未DVD化)。

 

まずはこの項で取り上げる『やくざと抗争 実録安藤組』。

 

やくざと抗争 実録安藤組 [DVD]

やくざと抗争 実録安藤組 [DVD]

 

 さらに番外編である『安藤組外伝 人斬り舎弟』。菅原文太安藤昇の舎弟である花形敬を熱演しています。

 

安藤組外伝 人斬り舎弟 [DVD]

安藤組外伝 人斬り舎弟 [DVD]

 

 その他にもDVD化は絶望的と思われていた『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』もリリーズされます。

 

この怒涛のリリースラッシュは安藤昇が2015年に亡くなったこと、さらには高倉健菅原文太の死去も関係しているのかもしれません。名優が亡くなるのは悲しくも仕方のないことです。しかしながら、出演作品が観賞しやすい形となって我々の元に届けられるというのは嬉しいことですね。

 渋谷で生き抜く男たち

前置きが長くなってしまいましたが、『やくざと抗争 実録安藤組』の中身に入っていきましょう。

 

先ほども書きましたが主演は安藤昇本人。

本人が体験した出来事を一部置き換えたり、ファンタジーを混ぜたりして描いています。

 

冒頭から安藤昇が学生服姿で殴り合い。そしてお互いを認め合って笑いあうという大時代的な場面から昇本人歌唱のオープニング。

 

これは、実録映画なのか? と疑問符がつきますが、それはあながち外れてもおらず。

タイトルに実録とついてはいるものの、『仁義なき戦い』とはテイストが異なり、クラシックなヤクザものの雰囲気と安藤組の持つモダニズムの空気が混じりあった独特な味わいを感じさせる作品となっているんですね。

 

舞台は渋谷で、まずは銀座のドス健、橋場組、そして十文字一家、桜会との戦いが続きます。ストーリー展開は非常に分かりやすいです。

 

それらの抗争で安藤組(作中では矢頭組)結成の土壌が作られる中、「おにいちゃん」と慕う幼馴染を無理やり安藤昇が襲い、体の関係を持ちます。仲間を食わせるためにその母親とも関係を持つ安藤昇。さすがモテ男です。

 丹波哲郎演じるおじき分もいいところで登場し、場面を締めてくれます。

 

仲間の死、子供の誕生を受けて、安藤昇は仲間らとともに「誰もが三下で、大貸で、組長」という安藤組を旗あげし、武装した桜会が安藤組事務所に殴りこみをかける、というところで映画は終わります。

 

特に最後の殴りこみにいたるまでの展開が臨場感を駆り立てるいい出来になっています。ぜひ一度観ていただきたい作品です。

安藤組は終わらない

 安藤昇が冒頭では学生服を着ているのですが、貫禄がありすぎてどうみても学生には見えないとか、やけにグロテスクな描写が多いとか、色々と突っ込みどころはありますが、それも味です。

ほぼ同時期に公開された『仁義なき戦い』との相違点を挙げるとすると、まずあくまで仁義なきシリーズがヤクザの実情を群像劇としてまとめたのに対し、本作では安藤昇という個のキャラクターの陰影をどう描写するかに神経が使われています。

先ほども書きましたが、クラシックな仁侠映画の流れ(つまり主人公をヒロイックに描く)が『安藤組』には色濃くみられます。

 

しかしながら演じるのが本人という、役者=本人という構図は他のヤクザ映画には全くない特徴なので、こちらがある意味本当の「実録」映画だといえますね。

とにかく安藤昇本人の魅力を確認するにはいい映画だと思います。

 

続編の『実録安藤組 襲撃篇』では横井英樹を襲った事件の顛末を描かれています。その後の逃亡は『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』でも描かれますので、安藤組結成前夜からの安藤昇の半生は一通り映画化されてるのです。

 

さらに2005年には『渋谷物語』という安藤昇原作を元にした映画も公開されています。近年になっても映画化されるという影響力を持っているのです。ちなみに脚本を担当したのは『やくざと抗争 実録安藤組』でも脚本を書いた石松愛弘です。

 

安藤昇は主演映画だけではなく、脇役としても様々なヤクザ映画に出演しました。今後も色々と出演作品を取り上げていきたいと思います!

 

 

 

 

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