山中正治と大友勝利 『仁義なき戦い 広島死闘篇』
また観てしまった…。今夜は邦画史に残る『仁義なき戦い』シリーズの2本目にして番外篇の『仁義なき戦い 広島死闘篇』(1973年、日本、100分)を取り上げたいと思います。
監督深作欣二、脚本笠原和夫、音楽津島利章 と前作同様の製作陣。
シリーズ主演、広能役の菅原文太が一歩引いた役回りで、広島市においての、村岡組=山中正治(北大路欣也)、大友組=大友勝利(千葉真一)の対立がストーリーの軸となります。
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・ダウナー系ヤクザ 山中正治
前作『仁義なき戦い』第一部では、山守組長に若手組員が翻弄されて命を落とすものまでいましたが、今作ではこの山中が悲劇のヒットマンとなります。
傷害罪で服役中に広能と知り合った山中は、出所後、広島で村岡組組長の姪である靖子(梶芽衣子)に喧嘩の傷の手当てをされたことが縁で、村岡組のヤクザとなります。靖子と男女の関係になりますが、それが原因で村岡組長の怒りを買ってしまいます。旅先の九州で和田組の組長を殺害し(最初の殺人)、村岡組に舞い戻りますが、それ以降、組長の舌先三寸で都合のいい殺人マシーンとして使われてしまいます。
ラストシーン、残った銃弾を彼は組長や殺しそこなった大友ではなく自分に放ちます。
「戦争に間に合わなかった」、その怒りや喪失感が、彼の内で醸成されていき、今回の一連の悲劇につながったのかもしれません。
山中は髪も短く、服装も割りと地味です。なので、村岡組長からもらった金色の時計が目立ちます。(そういう演出でしょうか?)。
ゆっくり腰を落として和田組組長を撃つシーンがとても好きですね。
またその特徴的な目が観るものを引き付けます。まさにヒットマンというかんじです。この目の演技があるからこそ自決に至るシーンが印象深く心に残ります。
・アッパー系ヤクザ 大友勝利
エルボーパッチ付きのジャケットに赤いガラシャツ、ハットにサングラスのイカしたファッションの御曹司。
テキヤの大友連合会会長の息子ながら会に反発し、博徒大友組を結成。「広島にヤクザは二つもいらない」という信念のもと、着実に巨大化していく村岡組打倒を狙います。
思慮分別のある行動などとらず、攻撃あるのみのイケイケヤクザです。
「自分がよければ他のやつがどうなろうがしったこっちゃない」という性格ですが、心を許した仲間との連帯は意外と強いですね。
気に入らないことがあれば、啖呵を切り、木刀で手当たり次第ぶったたく。わがままで強がりなガキ大将、というかんじでしょうか。
底の知れない快楽主義者ぶりは観ていて爽快でもありますね。この先、テレビでは放送できそうなもない名台詞もありますし…。
とにかく、アッパー系ヤクザとして完成度は非常に高いです。千葉真一にアッパレです。
てなわけで今回は主要な二人の登場人物に軽く触れてみました。
あいかわらず映像はゴチャゴチャしていて暗く、観辛い部分もありますがそれが臨場感。悲愴感をアップさせていてグッときます。
山中か大友か。どちらに感情移入して観るのか、それはあなた次第です(ちなみに私ニャロ目はどちらにも思い入れがあるので観るたびに交互に注目する感じです…)!