君は「松方弘樹刑務所三部作」を観たか?
東映には知る人ぞ知る、通称「松方弘樹刑務所三部作」というシリーズがあります。
名前どおり、松方弘樹主演で、主人公は基本的には刑務所で服役しています。ですが、刑務所内での待遇の悪さに苦しんだり、外への憧れを捨てきれずに何度も脱獄を繰り返すなど単なる刑務所内で受刑者が悶々と過ごす話ではありません。
観たか観てないかと問われると大抵の人が観てないと答えるこのシリーズ。三作を改めて振り返ってみたいと思います。
脱獄広島殺人囚(1974年)
監督は中島貞夫。刑務所三部作の一作目。この作品がヒットしたことから後の二本も製作されたと思われます。
本作は『仁義なき戦い』の主人公のモデルとなった美能から「脱獄を繰り返して懲役が40年以上になった人物がいる」と聞いた東映プロデューサー日下部五朗の提案により作品化された。
執念によりあらゆる方法で脱獄を繰り返す主人公を松方はノリノリで演じている。『仁義なき戦い』シリーズではあまり彼のひょうきんな部分はクローズアップされなかったが、彼のコメディチックな魅力をあますことなく伝える本作はまさにエンタメ。
脱獄に成功しながらもつまらない失敗で塀の中に戻され、それでも諦めずに脱獄を狙う。ギラギラした松方の目の魅力を味わえます。
室田日出男や川谷拓三などによる屠殺シーンも盛り込まれるなど何かと見ごたえがあります。
刑務所三部作はそれぞれ独立した作品ですが、本作が一番分かりやすいかなと思います。
暴動島根刑務所(1975年)
監督は引き続き、中島貞夫。今度は塀の中が主な舞台になります。松方の他にも、彼とムショ内で対立することとなる北大路欣也、豚の世話が生き甲斐の田中邦衛など脇を固める役者も素晴らしい。
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本作は看守たちの不正が横行し、受刑者の権利がないがしろにされているという東映らしい設定。実際にあったという刑務所での暴動をモデルにした、クライマックスの受刑者たちの反抗は非常にスリリングです。
看守は松方と北大路を対立させて暴動の収拾をつけようとしますが、その顛末には汚い国家権力の横暴が…というエンディングになっています。
三部作の中ではもっともシリアスでアクション性に富んだ作品といえます。
何にしろ松方と北大路の肉体を堪能することができますので、そういうのがお好きな方も納得の一本でしょう。
強盗放火殺人囚(1975年)
三部作最終作は監督が変わり、山下耕作。東映社長がピコーンと思いついた、元々の題名はもっとひどいものだったらしい。
松方とコンビを組むのは若山富三郎。彼の印象も非常に強い作品で、特に親子の情を入れ込むあたりが脚本を担当した高田宏治らしさを感じさせる。
健気にも高田は強盗も放火も殺人もきちんと作品内に取り入れてそれぞれきちんと見せ場として機能している。
さらには主人公の妻も、男二人の逃避行に参加するなど前2作とはやや趣の異なる作風となっている。
しかしながら本作はあまりヒットしなかったようで、刑務所シリーズも残念ながらこれにて終了。悲しい最後を迎えることとなった。
『松方弘樹刑務所三部作』まとめ
簡単に三部作を振り返りましたが、刑務所にスポットをあて、「中」と「外」の対比を鮮やかにみせるこのシリーズは設定も役者もハマっていたと思います。
特に松方弘樹を主人公に据えたのは正解でしょう。
北大路でもありだったかな、という気もしないでもありませんが。
やはり脱獄、刑務所ものということで肉体=フィジカルにすぐれ、ギラギラとした目つきの役者が主役をはるのがピッタリです。
奇しくも松方と北大路の二人がメインを張った『暴動島根刑務所』以外の二作が未DVD
化という悲しい状況ですが、AmazonビデオやGYAO!ストアで観ることができます。
最近の貧弱な邦画は合わない! という人や一風かわった東映の映画が観たいという人にオススメです。
そんなわけで他の有名ヤクザ・任侠シリーズものと比べると明らかに肩身が狭い感じのシリーズですがその勢いは決して負けていません!
明日を夢見る(自分勝手な)男の熱い映画であります!
以下、詳細なレビュー↓