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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

狸たちの失敗 『平成狸合戦ぽんぽこ』

こんばんは、ニャロ目でございます。

 

今回は高畑勲監督作品『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年、119分)を取り上げてみたいと思います。

 

抵抗と敗北の物語

この映画は、多摩ニュータウン開発を舞台とした、狸たちの抵抗と敗北の物語です。

 

ニャロ目的みどころは3つ。

・すばらしい作画

・デフォルメされた狸

・狸たちの失敗

では一つずつ見ていきましょう。

 

すばらしい作画

あいかわらず安定した作画を見せる高畑作品。『火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』でもリアリティを基軸にした美しい画面作りが評判でした。環境問題を基本テーマとしてる今作も自然と、人間による開発が真実味を持って描写されています。

 

とくに印象に残った場面は、狸たちが長老たちの指導のもとに行った妖怪大作戦=百鬼夜行

 

古今東西、さまざまな妖怪変化が新興住宅地で繰り広げられます。

 

しかし、人間たちを震え上がらせるはずの百鬼夜行も、深い暗闇の失われた現代社会ではただたんに「面白いだしもの」としか受け止められず、レジャーランドの宣伝に悪用されてしまうなど失敗に終わります。

 

狸たちの抵抗運動は傍目から見れば、滑稽なものでしかなかったのです。

 

ですが、作画としては妖怪の描写は素晴らしく、見ていてもっとも楽しめる部分です。その分、人間と狸の心理の溝が強調されていて、ちょっと切ない感じも受けますね。

 

何度かでてくる「化学(ばけがく)」の練習パートも細かいところに凝っていて面白いです。

 

冒頭、狸同士の合戦が描写されるんですが、そのカメラワーク(?)も素晴らしく、視点を上にして見下ろすような写しかたで合戦のエンタメ性を強調したり、画面を固定して狸たちの、画面外から画面内に入ってくる動きをわかりやすくみせたりして、ぐっと引き込まれますね。

 

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妖怪大作戦の途中で、長老狸の一匹、隠神刑部が命を落とし、天から迎えがくるシーンがありますが、これは高畑監督が後に製作する『かぐや姫の物語』に登場する、雲に乗った天人たちのお迎えにもつながる場面ですね。

 

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デフォルメされた狸

今作では従来の高畑リアリティにさらにデフォルメを加え、狸=人間ではない存在、しかし人間じみた動きをする存在、を上手く表現していたと思います。

 

何段階かに変身する狸の生態を、冒頭の合戦という極限状態でわかりやすく提示するという構成もよかったです。

 

高畑監督は多かれ少なかれ、その思想を物語に盛り込みますが、今作も、環境問題をテーマに作品を作っています。

 

脅かされる対象が人間だった場合は、住民運動となるのですが、今作は狸=自然が被害者となっているため「化学(ばけがく)」を基本にした闘争が描かれます。

 

見た目が可愛らしい狸なので、そこまで悲惨さは感じられませんし、全体的にギャグテイストが効いてるので生々しさもありません。

 

ただ、環境破壊や自然と人間との共存などを主題にするのはいいことだと思うのですが、今作はいかにも直接的過ぎるかなという印象も受けます。なぜだが、アニメのストーリーというより歴史物やドキュメンタリーを観てるような感じになるんですよね。

 

「リアル(環境破壊)の中にファンタジー(狸たちの化学)を混ぜる」という作り方は面白いのですが、ちょっと説教くさいかなー、と。

 

 

狸たちの失敗

で、多摩丘陵の開発は進み、ある限られた区画のみ自然が残されました。

 

化学を身につけることができた狸たちは宿敵である人間に変化して生き延びることになります。

 

一方、化学の才能のなかった狸たちは元の姿のまま、わずかに残された野生と、その周辺を囲む開発された土地の中でもがきながら生きていきます。

 

「人間は狸だった」と喝破した狸たち自身も、抵抗むなしく結局は体制に取り込まれることでしか生きることができなかった、というエンディングは学生運動の失敗をイメージさせます。

 

もしかしたら人間になりすましながらも、化学に磨きをかけた何世代かあとの狸たちが再び戦いの腹鼓をぽんぽこと打ち鳴らす時もくるかもしれません。

 

高畑監督のその他作品の感想は以下!!

cinematoblog.hatenablog.com

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