シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

サブカル系男子必見 映画「モテキ」

モテキ

 

漫画原作である本作品は、ドラマ化を経て、さらに映画化もされました。

映画「モテキ」では、原作のキャラクターのいいところを凝縮し、物語的にも、小道具や歌をうまくつかった、素晴らしいできとなっています。

今回は、映画「モテキ」における楽しみかたを解説しつつ、ある時代をうまく切り取っているその面白さを見ていきたいと思います。

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ある日モテキがきたら

モテキ」という一種のジンクスをつかって、4人の女性から好かれることになった主人公藤本幸世の物語となっています。


藤本幸世は、正直いって最低な男です。

自分からは目立った努力はしないし、子供のように自分の欲望を言うだけで、目の前に手ごろな女の子がいたから好きになった、としか思えない優柔不断な中学生のような男です。

そんな自信がない男が、ひょんなことから、長澤まさみ演じる女性と出会うところから、彼のモテキは再加熱します。

 

一応、本作品はドラマ版の後の話しのような位置づけのようですが、正直、まったく関係ないといって問題ありません。

今作品が大事なことは、サブカル系の自虐的な男に、モテキが到来したことで、好きなことや人っていうものに、向き合うことに面白さがあります。


原作の面白さや、小道具を非常にうまくもってきており、ある時代を過ごした人間であれば、この映画の数々のネタに気づいて、ワクワクしてしまうことでしょう。

小道具の面白さ。

映画「モテキ」は、小道具が実にちょうどいいところが素晴らしいです。


主人公の家のまくらもとにおいてあるのは、藤子A先生の「まんが道」ですし、部屋のそれとなくおかれているのは、新井英樹氏による「宮本から君へ」です。


「宮本から君へ」は、今回の「モテキ」の主人公の精神性と同じです。

むしろ、「宮本から君へ」のほうが、痛々しすぎるぐらいなので、怖いものみたさで読んでみるのも面白いかもしれません。

 

 

また、中年を迎えた男が突然漫画家を目指す「俺は本気だしてないだけ」なども置かれており、サブカル系界隈のある意味必読の漫画が小道具として置かれているのがそそられます。

 

 

ある時代を経過した人間であれば、映画「モテキ」をみて、自分自身の黒歴史七転八倒すること請け合いです。

 

音楽の面白さ

漫画「モテキ」でも、音楽は演出としてかなり使われていますが、映画「モテキ」でも、それは健在です。


劇中ででてくる音楽も実に当時のサブカル系の人間にはたまらない内容となっており、重要なポイントで、和製プリンスと呼ばれた岡村靖幸の曲「あの子、僕がロングシュートうったらどんな顔するだろう」(通称、あのロン)や、カルアミルクを彼女と飲んだときの思い出によって仲直りしようとする「カルアミルク」がかかってくるなど、岡村ちゃん好きにはたまらない選曲もみられます。

 

家庭教師

家庭教師

 

 

また、冴えない男が恋をしたことで、町中の人々と踊ったり、祝福されたりする素晴らしいシーンが印象的な「500日のサマー」を思い出すような、踊りのシーンもあります。

 

 

サブカルオタク男子が恋いをするっていうのは、こういうことさ。

ってな気分が味わえます。

当時、上り詰めつつあったももいろクローバー(Zの時代ではない)の代表曲「走れ」なんかがかかっているのもたまらないです。


「弱っているときのアイドルソングは、麻薬ですよ」


アイドルソングは別としても、音楽に勇気づけられて間違った行動をしてしまう感じは、多くの人が共感してしまうのではないでしょうか。


まるでミュージックビデオのようにして茶化しながらも、物語はちゃんと作られています。

好きな人ってどんな人

物語のほうもよくできています。

予告とかそういうものをみると、4人の女性に翻弄される主人公、みたいになっていますが、実際は二人です。

二人というのも、正確ではないかもしれませんが、真木よう子演じる気の強い女性は、口は悪いけれど勇気付けてくれる女性、というポジションなだけですし、水商売の女性は、たんに主人公に人生を考えさせるきっかけをあたえる人物に過ぎません。


誤解を承知でざっくり言えば、妥協して好きなじゃない人と付き合うか、妥協しないで好きな人と付き合えるのか、といったところでしょうか。

 

27歳ぐらいの、長澤まさみ演じる松尾みゆきは、ちょっとマニアックな音楽好きサブカル男子の主人公と抜群に話しが合います。

漫画の趣味も音楽の趣味もバッチリ合う。
可愛いし、セクシーだし、誘惑してくるし、サブカル男子ホイホイといったところでしょうか。

ですが、主人公はきづきます。


「ぜってー遊んでやがんな」

まぁ、そりゃそうなんですが、一方で、32歳になる麻生久美子といい仲になります。

麻生久美子だって綺麗な女優さんです。

ただ、残念なことに、主人公は、麻生久美子演じるルミ子ではなく、長澤まさみ演じるみゆきじゃなきゃダメなのです。


自分に妥協して、自分を好きといってくれる年上女性にするのか。

二度と出会えないかもしれない、最高に相性のいい女性にするか。

そんな厳しすぎる物語なのです。


主人公とるみ子のギャップを音楽で表している点が、演出として面白いところです。

 

音楽でみるジェネレーションギャップ

「愛の爆弾、もっとたくさん」


と、B’Zの「愛のバクダン」でありますが、この曲を思いっきり歌うのは、一定以上の年齢のかたがたではないでしょうか。


ノリもいいし、大人数ではうたわれないわけではないのですが、若い人の歌とはいい難いところです。

また、麻生久美子演じるルミ子は、90年代ソングが多いのです。

藤本幸世は「ももクロ」に勇気づけられたりしていたわけですが、ルミ子は、いまだにジュディマリなのです。

音楽的なギャップも含めて、ちゃんと趣味や気持ちが合う人でなければならない、というテーマが見え隠れしています。


ちなみに、余談ですが、麻生久美子演じるルミ子は、悪い人ではありません。ですが、古い人なのです。


「っつか、重たい!」
と、主人公に言われて
「わたし、重いかな」
と泣き崩れます。

長澤まさみと対比的に描いているところが皮肉なのですが、これを、麻生久美子に演じさせるっていうのは、思い切ったところです。

若いからいいとか、年上だから、ということではなく、これはあくまで世代の問題であり、それを気負いすぎるがあまりに、ゆがんでしまう皮肉を描いています。


一晩経つと、急に「ご飯つくろっか。冷蔵庫あけるね」というのは、正直、サブカル男子には、たしかに重たいでしょうね。好きな子ならまだしも、たいして好きでもない子にそれをやられるのは、きついものがあります。彼女もまた無理しているのです。

 

さて、余談が過ぎましたが、映画「モテキ」は、自分に自信のなかった主人公が、そんなに成長できたとは思えませんが、それでも、モテキがきたからどんな女の子でもいいや、となるのではなく、だからこそ、自分自身の気持ちに正直になるべきである、ということを教えてくれる作品になっています。


その方法は、本当に泥臭いかもしれませんが、その青春の痛々しさを含めてみてみるのも面白いのではないでしょうか。

 

以上、サブカル男子は必見 映画「モテキ」でした!

 

 

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