リタイア後の過ごし方/マイ・インターン
俳優そのものも豪華ですが、監督・脚本は、「恋愛適齢期」などでヒットをだしたナンシー・マイヤーズが行っています。
リタイヤ後の人生を考えさせられると共に、どういう生き方こそが自分にとって大切なのかを教えてくれる映画となっておりますので、その魅力や、そこから派生してオススメできる映画も含めて紹介していきたいと思います。
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定年後の人生は?
本作品を平たく説明すると、二つの物語が交差する物語となっています。
定年退職して悠々自適な生活を送っているロバート・デニーロ演じる主人公のベン。
彼は、妻に先立たれはしたものの、子供との関係も良好で、不自由のない生活を送っていましたが、いまひとつ虚しい気持ちをぬぐえないでいました。
そんな彼が、インターネットのファッション系サイトを運営するアン・ハサウェイの会社にインターン(見習い)として勤めることで、様々な問題を解決したり、手助けしていく、という物語です。
監督・脚本を手がけているナンシー・マイヤーズは、「恋愛適齢期」や「ホリディ」といったいわゆる大人の恋愛をテーマにした作品を多く輩出しています。
しかし、「マイ・インターン」では、恋愛的な要素はあるものの、基本的には、正しい行いとはどういうことか、いくつになっても人生を楽しむことができる、といったことを教えてくれるものとなっています。
物語の冒頭で、フロイトの言葉を引用し、「愛と仕事が人生のすべて」と語ります。
まさに、この作品は、仕事を通して愛を知る物語となっているのです。
ちなみに、仕事ばかりで家族をかえりみなかった男の末路が描かれる映画としては、アレクサンダー・ペイン監督「アバウト・シュミット」がオススメです。
ジャック・ニコルソン演じる主人公は、退職した後何もやることがなくなります。
愛する妻がいなくなったことで、娘のこともろくにわからない彼は、なんとかして嫌われている娘の結婚式に行こうとする、という物語です。
そういった意味では、マイ・インターンのベンは、優秀であり、妻は先立たれたものの、家族関係もよく、何不自由ない人生です。
ですが、
「やることを探すのが大変だ」と語ります。
多くの人間は、暇になったらどれほどいいか、と思うことでしょうが、いざそういった立場になったときに、人はやっぱり、それでも仕事を通じて、社会にコミットしていきたくなるということを示しているのです。
成功した後は?
もう一人の主人公は、アン・ハサウェイ演じるジュールズです。
アン・ハサウェイといえば、ファッションセンスのない記者志望の主人公が、実績作りのために入ったファッション雑誌(劇中での名前は異なりますが、VOGUEがモデルとなっています)で、有名編集長に理不尽な要望をつきつけられながら、成長していく「プラダを着た悪魔」に主演し、一気に有名になった女優です。
劇中では、理不尽としか思えないことをよく命令されますが、どんな物事であっても、主人公は乗り越えていこうとします。
その先に、どういうものが待ち受けているのかも含めて、「プラダを着た悪魔」は素晴らしい物語になっています。
そんな「プラダを着た悪魔」を演じたアン・ハサウェイが、「マイ・インターン」では、ファッション系サイトの運営会社の社長をやって、ものすごく忙しい生活を送っているところも面白いところです。
メリル・ストリープ演じる編集長よりもはるかに性格はいいのですが、まだまだ割り切れていない若さが見られるのが「マイ・インターン」です。
アン・ハサウェイ演じるジュールズは、仕事も家庭も両立しているようにみえますが、その裏では、厳しい現実にぶちあたっています。
仕事をとるべきか、愛(夫や娘)をとるか。
その間で苦しむ中で、リタイアしたロバート・デニーロと出会い、本当に自分がするべきことに向き合っていくのです。
年の差が教えてくれる?
年齢の離れた二人が、協力しあうことで物事が前に進む映画というのは色々ありますが、「マイ・インターン」が気に入った方は、以下の作品もオススメです。
「マイレージ・マイライフ」
ジョージ・クルーニー演じる独身貴族の男が主人公の映画です。
リストラを企業の代わりに宣告するという、一風変わった職業についている主人公。
彼は、全米を飛び回っている男であり、仕事で飛行機に乗って得たマイルがたまるのを楽しみにしている男です。
リストラを言い渡すことでその人間の人生がかわってしまうことから、非常にデリケートな仕事ですが、それを、効率化してしまおうとする新人の女性と交流することで、自分の人生に疑問をもっていく、という物語です。
ジェネレーションギャップというものをつかいながら、お互いのいいところ、悪いところを認め合っていくという点において、非常に優れた作品になっています。
「マイ・インターン」では、ロバート・デニーロ演じるベンは、ちょっと出来すぎた人に見えます。
印刷会社で、電話帳をつくる仕事に携わり、営業部長として手腕をふるった男が、再び仕事をすることで、最先端の仕事(インターネットを使ったファッションサイト)で活用しつつ、デジタル世代に対して、人間とどういう風にコミュニケーションしたらいいとかを教えたりします。
中でも、「ハンカチの使い方」について、同僚に教えるあたりは、素晴らしいです。
物語は、異なる価値観の人間が出会うことで、どういった反応がみられるのか、ということもポイントですので、年齢差があるキャラクターが出会うこと自体が、非常に魅力的です。
彼がビデオの前で語ったこと
「音楽家の引退は、自分の中に音楽が消えたとき。私の中には、まだ音楽があります」
物語の冒頭で、主人公がインタビューのように語るシーンがあります。
改めて言うまでもないことかもしれませんが、これは、ロバート・デニーロ演じるベンが、アン・ハサウェイがつくった会社に投稿するためにつくったビデオの内容です。
彼の切実な思いが語られ、そのビデオによって彼は、インターンへの道筋が開けるのです。
主人公はブルックリンに住んでいると言っています。
ブルックリンは、かつて移民が多く住む町であり、どちらかというと治安がいい町とはいえない場所でした。
ですが、マンハッタンといった他の芸術家気質の人々が住んでいた地域の地価があがったことで、地価の安いブルックリンに、芸術関係の人が集まってきたという経緯があります。
その結果、おしゃれな町にブルックリンはなっているのですが、
「長年ブルックリンに住んでいますが、最近おしゃれになってきました。私も変わりたい」
この物語は、どんな年齢になったとしても、人間は変わっていけるということを前向きに示している作品なのです。
テンポよく物事が進み、誠実なロバート・デニーロ演じるベンによって、まわりもまた変わっていきます。
愛も仕事も、誰かに必要とされることがいかに人間にとって大切なのかということがわかる映画ですので、人生に迷ったときにみてみると何かがわかるかもしれません。
以上、リタイア後の過ごし方/マイ・インターンでした!