シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

汚れちまった悲しみに・・・ 『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)

本日はゴジラシリーズ11作目『ゴジラ対ヘドラ』(監督・坂野義光)を取り上げます。

みんな大好きゴジラ作品の中でも一際異彩を放つ本作。果たしてどのような内容なのでしょうか。

われわれが生み出した怪物・ヘドラ

ヘドラはもともとは宇宙から飛来した鉱物が工場排水、ヘドロなどの汚染物質と合体した怪物です。成長するに従って変形し、活動範囲も広がっていきます。ヘドラが空を飛ぶとその付近にいる人間や動植物は息絶えてしまいます。迷惑極まりない怪物ですが、これは当時の公害を「擬獣化」したものです。見た目がものすごく不気味で、赤い目が縦についているのがいかしています。

ヘドラ襲来とほぼ時を同じくしてゴジラも姿を現します。海洋生物学者・矢野の息子である研をはじめ、この当時のゴジラはすっかり子供たちのヒーローとなっていたのでした。

しかしゴジラもこの難敵・ヘドラに大苦戦。

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やくざだけど野球をやってみた。 岡本喜八『ダイナマイトどんどん』(1978年)

今回ご紹介する映画は岡本喜八監督の『ダイナマイトどんどん』。

戦後、民主主義がアメリカから持ち込まれたことにより、それまでの血で血を洗う「抗争」から「野球」でやくざ同士を競わせて、平和的に社会に溶け込ませるという内容。

実際に東映などの任侠映画に出演していた俳優たちがコメディタッチに野球をするという、「任侠映画・やくざ映画」のパロディ作品でもあります。

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戦後民主主義とやくざ達

 舞台は昭和25年の九州。菅原文太の所属する岡源組と、新興成金やくざの橋傳組は抗争を繰り返していました。

進駐軍の視線を意識した警察が、地元やくざ同士の争いをどうにか止めたいと考え出したのが「野球」。

トーナメントで野球大会を開き、やくざの闘争心をうまくおさめつつ、平和的に解決を目指す。

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相米慎二、かく語りき。 『セーラー服と機関銃 完璧版』(1982年)

今回は本編公開の翌年に公開された薬師丸ひろ子主演の『セーラー服と機関銃 完璧版』について語りたいと思います。

四代目は女子高生

『完璧版』とは編集の段階で切り落とされた部分を追加したディレクターズカット版です。本編が予想外の大ヒットを記録したため、監督の本来の構想を実現した形で公開されました。

何の変哲もない一介の女子高生が父親の死をきっかけに薬を巡る裏組織の争いに巻き込まれていくという、やくざ映画風味のアイドル映画です。

配給を担当したのが任侠/やくざ映画でおなじみの東映だというのが面白いところです。

センセーショナルHIROKO

1970年代のやくざ映画隆盛の時期が過ぎ、新たな映画産業の担い手として角川春樹が70年代後半に登場、次々と大作映画(『人間の証明』、『野生の証明』など)を製作します。

80年代に入り、角川映画は路線を変更し、制作費を抑えたアイドル映画を発表していきブームを巻き起こします。

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五部作、堂々の完結! 『仁義なき戦い 完結篇』(1974年)

今回は『仁義なき戦い』シリーズのラスト作品である、五作目の『完結篇』を取り上げます。

各組織の逮捕により収束したはずの広島抗争。しかし、これまで闘争の中心であった広能や武田より若い世代が次第に台頭しはじめ、まだまだ広島やくざの争いは終わりそうにありません。

簡単なあらすじ紹介

山守組の武田は広島やくざ組織の団結を狙って政治結社である天政会を作った。暴力団排除の風潮も高まる市民社会に対しての彼なりのアイデアであった。

広島やくざの大同団結といっても各人思惑はばらばらであったため、二代目会長である武田の跡目を巡って内部での争いが激しくなりつつあった。

そんな折、天政会の金庫番である参与・杉田が広能に近い市岡組組員によって殺される。市岡組への対応を巡り天政会内部は揉め、武田・松村ラインと大友・早川ラインの二つの対立が深まっていく。

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シリーズ4作目! 『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年)

前作『代理戦争』から引き続き、大規模抗争が描かれる本作。今回は警察側も黙っておらずそれぞれの組のトップ・幹部の逮捕による抗争の終結を狙った「頂上作戦」が展開されます。果たして広能はじめとする広島やくざたちはどうなるのでしょうか。

簡単なあらすじ

前作から引き続く、山守組系と神和会VS打本会系と明石組の抗争。 

呉では広能組と槇原組の小競り合いが大規模な事件に発展。

打本会系列は中立派の義西会の岡島を取り込むことに成功するも、その岡島が山守組に殺されてしまい、形勢が逆転します。

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シリーズ3作目! 『仁義なき戦い 代理戦争』(1973年)

番外編であるニ作目『広島死闘篇』を挟んだ三作目。一作目の実質的な続編となり、四作目『頂上作戦』とセットの作品でもあります。

ますます人間関係は複雑怪奇、抗争の規模も呉だけではなく広島市、そして神戸の大組織が絡んでくるなど波乱に満ちた展開が描かれます。

 

村岡組跡目争い、そして代理戦争へ

大友勝利らの逮捕などにより、大友組との抗争を切り抜けた村岡組。広島市最大のやくざ組織の座を磐石のものにしますが、組長村岡常夫は体調不良により病床に伏すことに。彼の舎弟であり組内でも実力者であった杉原が跡目を継ぐことが予想されていましたが、広能、打本らといた時にチンピラに銃撃されあえなく死亡。

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菅原文太の五大シリーズを振り返ってみる

今回は映画俳優・菅原文太東映にて遺した五つのシリーズもののを振り返ってまとめてみたいと思います。

 

どれも見ごたえがあり人気のあったシリーズですので興味がある方はどんどん掘り進めていって下さい!(ちなみに自分は今回とりあげた作品のうち、まだ9割しか観ていません…。文太アニイ、すんません)

『現代やくざ』シリーズ(1969年~)

・『現代やくざ 与太者の掟』1969年 降旗康男監督

・『現代やくざ 与太者仁義1969年 降旗康男監督

・『現代やくざ 盃返します』1971年 村上和彦監督

・『現代やくざ 血桜三兄弟1971年 中島貞夫監督

・『現代やくざ 人斬り与太1972年 深作欣二監督

 

記念すべき文太アニキの東映初主演映画『現代やくざ 与太者の掟』から始まるシリーズ。「現代やくざ」ということで着流しの仁侠映画から脱却しようとする製作陣の意気を感じます。

個人的には後半の『血桜三兄弟』や『人斬り与太』がお気に入り。

とくに『人斬り与太』は深作欣二監督『人斬り与太 狂犬三兄弟』(1972年)に発展し、それが翌年からはじまる『仁義なき戦い』を生み出すわけなので大変重要な作品です。主人公の性格がメチャクチャですし。

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