貴方は踏み絵を踏みますか?/沈黙ーサイレンスーマーティン・スコセッシ
マーティン・スコセッシ監督が、28年の歳月を経て完成させた大作。
遠藤周作がつくりあげた宗教と人間について語られた「沈黙」を、圧倒的なスケールで映画化した傑作です。
本作品は、江戸時代初期のおけるキリスト教の弾圧を受けながらも、信仰を続ける人々を描いた作品であり、宗教が題材として強い印象をもつことから、敬遠する人も多いかと思いますが、この作品がもっている普遍的な問題は、どんな世の中でも共通するものだと思います。
多少難解と感じられる部分もありますが、「沈黙ーサイレントー」がどんな物語なのか。
踏み絵を踏むことができずに、死んでいった人たちとはどのような人たちなのかを考えつつ、解説してみたいと思います。
続きを読む純愛・爆走。ライアン・ゴズリング主演「ドライブ」
「最もセクシーな男性」2位にも輝いた男でもあるライアン・ゴズリングですが、そのライアン・ゴズリングが主演を務め、寡黙なドライバーを演じた「ドライブ」について、非常に映画的である作品の見所について考えてみたいと思います。
ドライブというタイトルの本作品ですが、思ったよりもカーアクションが多くありません(わずかに2回)。
ドライブというぐらいですから、時速何キロ以下になると爆発するとか、タクシーで爆走するとか、とにかく、あらゆる車を吹き飛ばしながら、次々と車が爆破されるものだと思っていたら、肩透かしを食らうことになります。
「ドライブ」は、愛と暴力の物語なのです。
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松方弘樹出演のヤクザ映画を振り返る
近年、映画関係の大御所たちが鬼籍に入ることが多くなっています。
私が好きな任侠・ヤクザ映画でも高倉健、菅原文太、安藤昇、曽根晴美・・・。
ヤクザ映画の黄金期がすでに40年前ですので亡くなる方が多いのも仕方ないことです。 しかし、実際に訃報を耳にするとやはり寂しい気分になるものです。
上記の名優に続いて、松方弘樹も亡くなりました(享年74歳)。
これまでも度々病状が伝えられていましたが「ついに来てしまったか」というのが一映画ファンの素直な反応です。
本稿では日本映画史にその名を刻んだスター・松方弘樹の軌跡をヤクザ映画を中心とした視点で振り返って行きたいと思います。
『仁義なき戦い』シリーズ(1973年~)
松方×ヤクザといえば『仁義なき戦い』シリーズ(無印のほう)。5作中、3作に出演、その全てで非業の死を遂げる役回りです。
本シリーズは見た目や演技力に秀でた幾人もの俳優が出演していたため、各人工夫を凝らして出演していました。
一作目の『仁義なき戦い』では、10歳近く年上の菅原文太とほぼ対等のキャラクターを演じるために冷たい水とお湯に顔突っ込んで無理矢理顔にシワを作ってみたり、サングラスを印象づけて顔の若さを隠したりしていました。
その甲斐あってか、演じた坂井役は非常に印象深く、作品中盤から後半を引っ張っていく重要なキャラクターとなりました。名台詞を多く、松方弘樹といえば自分はこの役を思い出します。
『頂上作戦』の義西会の藤田は病弱で度々咳き込むという役回りでした。そのため顔を黒くメイクしていました。会長の仇討ちを悲願としつつ、病状が悪化していくなか、意外な人物に殺されるという無念さを見事に演じきっていました。
『完結編』では好戦的な市岡を演じました。目の中に朱の色を入れて、充血させなんとも不気味な顔面を作り上げています。刑務所内の菅原文太を焚きつけるなどまさにイケイケでしたが路上にて撃ち殺されてしまいます。
それぞれ印象の異なるヤクザを演じわける松方弘樹。当然、彼を語るには外せないシリーズです。
『松方弘樹脱獄三部作』シリーズ(1974年)
松方弘樹が主演した作品群としてぜひ見ておきたいのが、東映の「脱獄三部作」。これは正式なシリーズではないものの、似たようなテイストを持つ三作品をまとめてこう呼ぶそうです。
『脱獄広島殺人囚』、『暴動島根刑務所』、『強盗放火殺人囚』という東映テイスト溢れるタイトルで観なくてもなんとなく内容が把握できそうな感じですが、観てみたら予想以上に面白い。
初めて見る方には『脱獄広島殺人囚』がオススメ。脱獄する度にしょうもないことで見つかり連れ戻されてしまうズッコケ感が理屈抜きで笑えますよ。
『暴動島根刑務所』はそのタイトル通り暴動に焦点があてられており、シリアス成分が増しています。北大路欣也との共演もみものです。
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