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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

本当に仁義なき戦い 菅原文太『人斬り与太 狂犬三兄弟』(1972年)

仁義なき戦いよりも仁義がない

 今回ご紹介する『人斬り与太 狂犬三兄弟』は深作欣二監督による作品です。従来の仁侠映画路線を意図的に外して「ワルすぎる」ヤクザを主役にし、本作と同じ深作・菅原コンビによる『仁義なき戦い』シリーズへと発展する記念すべき作品です。

まさに実録路線への先鞭をつけたかたちとなった本作ですが、実をいうと『仁義なき戦い』シリーズよりも「ワル」度が非常に高いです。

『現代やくざ 人斬り与太』とともに『人斬り与太』シリーズとして知られる本作品の注目ポイントを取り上げて語っていきたいと思います。

狂犬三匹集まれば 血しぶき飛ぶ飛ぶ 地獄絵図

 まずはタイトルにある狂犬をご紹介します。いずれ劣らぬマッドドッグス揃いです。

・権藤(菅原文太)・・・村井組の組員。敵対する組織である北闘会の組長を殺し服役。許可なく売春をしていた店を乗っ取り、客から金をぼったくるというあくどいシノギを始める。女にも平気で暴力を振るう。北闘会との抗争、そして権藤の存在が煙たくなった村井との戦いが激化し…。

・大野(田中邦衛)・・・村井組の組員。権藤をアニキと慕う。売春のシノギで権藤とともに派手に稼いでいたが、権藤を疎ましく思った村井に暗殺を指示される。しかし大野は権藤を殺さず反対に村井の思惑を伝えともに反撃することに。たびたび貧しい実家からなけなしの金を奪っており、抗争に備えてまたも強奪にでかけるも母と兄の思いがけない抵抗にあい、殴り殺されるという悲惨な最期を迎える。

・谷(三谷昇)・・・賭場で北闘会と揉めていたところを権藤に助けて貰ったことから店の用心棒となる。ヘビを服の中に隠し持っている、クレイジーなキャラ。その類まれな強面に似合わず(?)狂犬三人のうちでは最も冷静沈着な振る舞いをする。北闘会志賀らのリンチにあい、ヘビとともに無惨にも殺される。

 

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そしてヒロイン的存在。

・道代(渚まゆみ)・・・無理やり、権藤の店で働かされる。客をとらせようとしても強情で断固拒否する。作中、一言も喋らない。最後の最後に、権藤の子供を生んだことが明かされる。

 

どうなっちゃってんだよ~親の子殺し~

大野、谷という運命共同体を失った権藤は自分の親分である村井の自宅を訪ねる。

不意の来襲に怯える村井。

権藤は大野の惨めな死に様を語りだす。

「親が子を殺すなんてよお、世の中どうなっちゃってんだよお…」

そして自分の抹殺をよりによって自分の舎弟分に命じた村井組長を抹殺する。

 

すなわち、これは「子」が「親」を殺すということ。大野(子)が「親」に殺されたことの反転となっているわけですね。

 

この組長殺しのパートは演出も素晴らしいです。

静かに、だが確実に殺意を持って近づく権藤。怯える組長。それを無音で見せて、一旦、勢いを殺したところで改めて殺意をむき出しにする。

このテンポと上記のセリフが入り混じった緊張感はそれまでに仁侠映画をより先鋭化させた殺人シーンにつながっています。 

余談となりますが、深作・菅原兄ィコンビの『仁義なき戦い』では常に広能の目のうえのたんこぶであった山守組長を殺せずじまいでしたが、本作では組長をさっぱり殺ってしまっているのも面白い対比ですね。まさに「子」が「親」を殺すという、仁義をほっぽりなげる戦いです。

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菅原文太渚まゆみ

そして今作のヒロイン的存在、渚まゆみ演じる道代。

前作的な作品である『現代やくざ 人斬り与太』でもヒロインをつとめて渚まゆみでしたが今回も素晴らしい演技で映画に華をそえています。

前作では文太兄ィに対し、娼婦に落とされた恨みをまくし立てる演技がありましたが今回はセリフが一言もありません。

一見、気弱でおどおどしている様子で無理やり権藤に客を取らされますが裸にさせられても強情に拒みます。権藤は無理やり彼女を犯してしまうわけですがそれでもいいなりにはなりません。何度も脱走を図ります(全裸で)。

そんな意地っ張りな道代を権藤は(詫びのための服を渡して)解放しますが行き場のない彼女は結局店に戻ってくることになるのです。

彼女のために「行く場所がないならここにいろ」と伝える権藤。

彼女の書きかけの葉書を偶然手にすると、そこには「店の人たちは優しい」との記述が。それは親を安心させるための嘘には違いありません。ですが彼女の本心も少しは含まれていたのでしょう。そしてその文言を見て、ある意味ショックを受ける権藤。他人から優しいなどと評価されたことがあるはずもないだろう彼にとっては不意うちのような出来事に違いありません。

そして権藤はそっと道代のうえに覆いかぶさるのでした…。

翌日、ラーメンの出前をとって権藤たち。自分の分のチャーシューを道代にあげるという意外な行動を取ります。

チンピラが犬に優しくしているといい人に見える、みたいな感じで、人殺しで暴力的な人間がチャーシューをあげるといい人に見えてきますね(?)。

狂犬にも情というものがあったという感動的な場面でございます。

さらに物語の最後では彼女はある光景を目の当たりにします。その後、ラーメンをすする彼女に「この女は後に狂犬の子供を生んだ」というテロップが挿入されて映画は終了します。この権藤と道代が迎える衝撃的なラストシーンはぜひ映画本編でお楽しみ下さい。

深作欣二監督作品『人斬り与太 狂犬三兄弟』感想・評価 まとめ

 さて『人斬り与太 狂犬三兄弟』について簡単にまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。『仁義なき戦い』へと到るヤクザ映画の流れの中でも重要な作品ですので未見の方はぜひご覧下さい!

世間的にも評価は高いですよ!

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『現代やくざ 人斬り与太』のまとめはこちら

cinematoblog.hatenablog.com

 タイトルがちょっと似ているのはこちらの作品↓

cinematoblog.hatenablog.com

 深作師匠が三兄弟の争いを描いたのがこちら

cinematoblog.hatenablog.com

 

 

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