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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

なぜ彼は「仁義」という言葉を墓石に彫ったのか?  渡哲也主演 『仁義の墓場』

邦画 ニャロ目 深作欣二 任侠・やくざ映画

今日は渡哲也主演のヤクザ映画『仁義の墓場』(1975年、94分)を取り上げたいと思います。

 

この映画は『仁義なき戦い』の深作監督が担当しています。

 

仁義なき戦い』と『仁義の墓場』。

なんだかタイトルが似ていますね。

 

しかし、タイトルで扱われている「仁義」という言葉。この使い方に違いがあるのです。

 

仁義なき戦い』と『仁義の墓場

仁義なき戦い』(1973年~)は、義理や人情のない親分たちにうまいこと使われ、疲弊し、やがては命を落とすという若者ヤクザの悲哀を描いた映画でした。

 

実際に起こった広島抗争を元にしており、当事者の手記をもとにした本などからエピソードを拾い、様々なアレンジを加えたうえで、脚本家の笠原和夫がまとめたかたちになっています(1部から4部まで)。

 

一方、今回取り上げる渡哲也主演『仁義の墓場』は、石川力夫という実在したヤクザの名前をそのまま使っています。兄弟分の今井幸三郎(演・梅宮辰夫)も実名だそうです。

 

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そのためなのか、この映画の冒頭では石川の過去を知るとおぼしき者へのインタビュー音声が流れます。実録路線といいながら、あくまでも『仁義なき戦い』はフィクションの要素が強めでしたが、今作はドキュメンタリータッチな映像が度々はさみこまれます。

 

これは『仁義なき戦い』が抗争を主題にとった群像劇に対し、石川という一人の人生そのものに迫っているために取られた手法だと思われます。よりリアル感が増すような演出なんですね。

 

仁義なき戦い』の広能が、あくまでも義理や人情に捨てきれないヤクザとして描写されているのに対し、石川力夫は自らの欲望や感情のままに、世話になっていた親分の河田や函館少年刑務所で知り合った兄弟分の今井幸三郎を襲います。一度の襲撃で仕留めそこなった今井に対しては改めて銃撃し、命をとります(妻にも重傷を与えます)。

 

にも関わらず、線香をあげに玄関先まで出向くのです。

 

一命をとりとめた河田に対しても頭を下げ土地や金を無心しようとしたり、10年間の関東所払い(関東から10年姿を消せ、という意味です)を取りやめてもらおうとします。

 

こちらの映画では「仁義がない」のは主人公の石川力夫なのです。

 

愚連隊である山東会襲撃の途中で知り合った女・地恵子も手篭めにし、金のために売ります。ヤクザの中でもかなり凶悪なのです。

 

河田にしろ、今井にしろ、無鉄砲で短気な石川に対し、そこまで強硬にでることなく、むしろどちらかというと温情的な様子だったのですが、彼らの予想をはるかにこえた激情を持ち合わせていたのです。

 

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仁義なきヤクザ 石川力夫

映像的には『仁義なき戦い』シリーズやその他の実録ヤクザ路線でもみられるような、抗争シーンでのぐるんぐるんするようなカメラの撮り方が今回も発揮されています。

 

他に印象に残ったシーンは、出所した石川が関東所払いをくらい、大阪に隠れるシーンです。ドヤ街で娼婦にヘロインを打ってもらい、朦朧としている二人、仕切りをはさんだ横で老人が何かに対し祈っている、そのショットがモノクロ風に撮られており、グッとくる映像になっております。

 

大阪パートはすごく短いのですが、薬の売人を襲撃した際に偶然知り合った小崎(田中邦衛)ともどもヤク中の演技が凄まじく役者の力を感じました。

 

演技といえば、自殺した地恵子の骨をこりこりかじりながら、カメラを睨むシーンが素晴らしい。

 

大阪以降、ヘロインに体をおかされた石川はより不気味になり、口数も少なく、うなだれるようなポーズを取ることが多いです(それでもいきなり感情をむき出して今井を襲ったりしますが…)。そんなぼーっとしているような様子なのに目は鋭いというか、狂気に満ち満ちている…。

 

石川の服装もいいですね。イケてるスーツにヘビ柄(?)のベルト、サングラスがバッチリ決まっています。次第にスーツは汚れたり少しずつ変化していくんですけどね。

 

細かいところですが、風船や蜜柑などの小道具も印象的に写されていて、ベタといえばベタですが、いいなあと自分は感じました。

 

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墓に刻まれた「仁義」

前述したとおり、襲撃した相手に頭を下げに行ったり、苦労をかけ続けた地恵子の骨を拾う際には涙を落としたりするなど、石川は感情の起伏が激しく、まわりの人はさぞかし困惑したことでしょう。

 

彼が職人に作らせた墓石には、自分・妻・今井の三人の名前と「仁義」という文字が刻まれていました。

 

あれだけ無法者だった石川がなぜ「仁義」という言葉を墓石に彫ったのか。

 

「仁義」と「激情」に引き裂かれるような心境にあったためではないでしょうか。

 

人一倍頭の切れるという証言もある石川。彼の内面には様々な感情がとぐろのように渦巻いており、彼自身も制御できなかったのかもしれません。

 

「仁義」とともに、彼が刑務所に残した「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」という言葉は、彼の凶暴な所業とともに、むなしく哀しく響いてくるのです。

 

90分という短い時間で、石川力夫という「どうしようもないヤクザもの」の生涯を見事に描いた本作。

 

大抵のレンタルショップには置いていますので、最近の映画に飽きた方などでまだ未見の方はぜひチェックしてみてください!

 

続編、というか似たようなキャラクターが登場する『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年)も凄まじい映画なので、紹介したいと思います!!

 

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