生きている実感がない/アメリカン・サイコ
クリスチャン・ベールが主演し、アメリカ人だけではなく、全ての人間がもちうる問題を浮き彫りにした作品、「アメリカン・サイコ」について、解説してみたいと思います。
名刺バトル
さて、この映画は冒頭から問題を見せ付けてきます。
高級そうなレストランで次々とメニューの名前がでてきます。
「イカのラビオリレモングラスソース」
「ゴートチーズにシーザーサラダ」
「メカジキのオニオン・マーマレード」
そして、ブランド服に身を包んだ男たち。
彼らは、仲間うちで高級とされているブランド服を着て、傍からみても違いのよくわからない名刺の意匠にこだわっています。
「オフホワイトの紙に、箔押し…。高級な厚み…」
といって、大変悔しがるのです。
続きを読む正しいアメ車の譲り方/クリント・イーストウッド「グラン・トリノ」
クリント・イーストウッド監督といえば、俳優としても監督しても抜群の存在感と才能を発揮する人物です。
そのクリント・イーストウッドの最高傑作と呼び声の高い「グラン・トリノ」について、その魅力を語ってみたいと思います。
頑固ジジィ
物語は奥さんの葬儀から物語ははじまります。
そこのシーンだけで、主人公であるウォルト・コワルスキーが子供や孫たちから嫌われていることがわかります。
娘が誘拐されたとき、どうするべきか/プリズナーズ
人は何かによって囚われているものです。
道徳や倫理、国家や宗教。
世間など、あらゆる物事は自分たちを囚われの身にしてしまうのです。
ジェイク・ギレンホールとヒュー・ジャックマンが主演する作品にして、同年に「複製された男」も公開したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品「プリズナーズ」は、一見、単なる誘拐事件にみせながら、その中で、アメリカ社会における囚われている人、囚われない人を描いていく作品です。
娘が誘拐されたなら。
物語のあらすじをざっくり説明してしまいます。
ペンシルベニア州の田舎町で、娘が二人行方不明になります。目撃情報から犯人らしき男を捕まえますが、知能遅滞がみられ、証拠がないことから釈放。
父親であるケラーは、その男を捕まえて監禁・拷問をして娘の居場所をはかせようとします。
一方で、刑事であるロキは、その父親の行動に不信を抱きながらも、捜査を続ける、というのが物語の大枠です。
この物語は、誘拐された娘が戻ってきてよかった、という話ではありません。
ブラック企業勤めの心理状況がわかる。映画「セッション」
人は誰でも心が弱ってしまうときがあるものです。自分自身の決断に迷い、後悔するときもあります。
しかし、そんな時でも、人間は進まなければいけませんが、周りが見えなくなってしまい最悪のことを行ってしまう場合もあるのが現実です。
さて、人間というのが、どんな風にして追いつめられていってしまうのか。
音楽映画として捉えられて、ジャズには興味ないんだよなぁ、という人でも、主人公の心理状態を追うことで、人はどんなことをされればおかしくなってしまうのか、そして、それを超えた先にあるものを音楽を下地にしてみることができる本作品となっておりますので、解説してみたいと思います。
続きを読む
私の敵は、私です。/ジェイク・ギレンホール主演「複製された男」
「脳力が試される究極の心理ミステリー」と称された本作品は、一見すると難解にみえる作品ですが、ある程度のキーワードを抑えておくことで、非常に身近で、バカな男の性がわかる作品としてみることができる作品となっています。
ネタバレはあっさりめにしていますが、ネタバレなしには語れない作品となっておりますので、その点を留意して記事をご覧いただきたいと思います。
複製されたのか?
本作品を観ていて気にしてしまうことは、主人公とまったく同じ姿の男は、クローン人間なのか、ということでしょう。
スタンフォード監獄実験は、何を語るのか/ES(エス) エクスペリメント
普通の人たちが、理由もなく囚人と監視人にわかれたとき、人はどのような行動をとるようになるのか。
人間の狂気と心理に迫る映画こそが、2001年につくられた「エス」であり、2010年に公開された「エクスペリメント」なのです。
エクスペリメントの話をメインにしつつ、エスとの相違点を考えながら、この映画を通して、この映画と実験がどのような意味をもたらしたのかを考えてみたいと思います。
続きを読む
問題行動を起こすのは何が悪い? ネタバレあり/エスター
「この娘、どこかが変だ」のキャッチフレーズでお馴染み、「エスター」は、衝撃的なラストと呼ばれる後半もあって、話題作の一つでありました。
この映画は、事前情報なしでキャッチフレーズや画像だけみると、霊能力とかをもった少女の話になるかと思ってしまう方もいるかと思いますが、サイコホラーと呼ばれるジャンルに入る作品です。
エスターという少女が巻き起こす恐怖について、語ってみたいと思います。
続きを読む