ジェニシス見るなら予習せよ!/ターミネーター1・2
「ターミネーター3」「ターミネーター4」の設定が無かったことになり、新たなるターミネーターとして「ターミネーター:新起動/ジェニシス」が公開になりました。
そこで、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」を見るにあたって、絶対に予習しておいたほうがいい「ターミネーター1」と「ターミネーター2」の紹介を行っていきたいと思います。
また、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」の感想・紹介記事も以下のエントリーで行っておりますので前シリーズのあとに是非ご覧いただければと思います。
前人未到のヒットメーカー ジェームズ・キャメロン
「ターミネーター」(以後 T1)は、1984年にジェームズ・キャメロン監督によってつくられたSFアクション映画です。
ジェームズ・キャメロン監督といえば、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが主演をし、豪華客船が沈没するさまを恋と皮肉を織り交ぜつつ、映画史上最大の興行収益を成し遂げた超大作「タイタニック」。
見るものに初めて3Dの可能性と美しさをたたき付け、異性人との交流を描いた「アバター」は、それまで興行収益最大だった「タイタニック」の記録をさらに塗り替え、偉業を偉業で重ねてしまう大記録を樹立しました。
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ヒットメーカー中のヒットメーカー。
それこそが、ジェームズ・キャメロンなのです。
そんなジェームズ・キャメロンも不遇の時代がありました。
監督とクレジットされたはじめての映画作品「殺人魚フライングキラー」がうまくいかず、その苦悩をターミネーターの脚本にしたというのは、有名な話のようです。
パッケージからして、もうB級の匂いがぷんぷんします。
「ターミネーター」はジェームズ・キャメロンの出世作でもありますが、同時に、主演のアーノルド・シュワルッガーにとっての出世作でもあることは、異論がないことでしょう。
オーストラリア訛りが抜けず、ボディビルダーから転向したばかりだったアーノルド・シュワルツェネッガーは、台詞がほとんどない殺人ロボットの役がぴたりとはまり、アクション映画ブームともあいまって、次々と主演作品をヒットさせていきます。
ある年代の人であれば、金曜ロードショーでシュワちゃんを知った人が多いでしょう。
定期的にシュワちゃんが主演の映画がでていたということもあって、特別な思いをもつ人も多いことと思います。
T1のおさらい
今更、おさらいするまでもないかもしれませんが、「ターミネーター2」は見たよ、という人でも、意外にT1のほうは見ていないというかたも多いのではないでしょうか。
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1984年に公開された映画ということもあって、どうしても腰が引けてしまうところです。
予算も映画としては非常に低予算であったこともあり、人間のしゃれこうべがキャタピラでつぶされていく未来のシーン、これが、作り物だと一瞬でわかってしまうぐらい微妙なつくりになっています。
ただ、当時はCGなんてものはほとんど存在していない、という中でつくったということを頭の片隅においておいていただければ、比較的そのあたりは生暖かく見ることができると思います。
T1のざっとした内容ですが、
近未来、人口知能である防衛システム「スカイネット」が人間を排除しようと、人間と機械による戦争が行われていた。
人間側のリーダーである、ジョン・コナーの導きにより、抵抗軍は機械軍に勝利する手前までいくものの、土壇場で機械軍は、殺人アンドロイドであるTX-800(1ではサイバーダイン101型となっています。どっちなのかよくわかりません)を過去に送り込みます。
救世主であるジョン・コナーの母親を殺すことで、そもそも、ジョンが生まれない世界に作り変え、機械軍の勝利へと歴史を変更してしまう企みです。
それを阻止するために、抵抗軍の兵士であるカイル・リースが、母親であるサラ・コナーを守るために過去へ送り込まれ、シュワルツネッガー演じるターミネーターとの圧倒的な力の差を努力と根性で埋める戦いが行われるのです。
果たして、未来の平和を守ることができるか、というのが大まかなストーリーです。
見所としては、単なる貧乏なウェイトレスに過ぎなかったサラ・コナーが、ターミネーターとの戦闘やカイル・リースと心が通じていく中で、逃げることしかできなかったか弱い女性が、強い女性へと変貌していく様を描いているところです。
銃すら握れなかったサラが、壊れかけとはいえターミネーターと互角に戦う様は、見るものの心を熱くさせます。
T1で押さえておくべきところ。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」をみるにあたって、絶対に覚えておいてほしいところは、T1の冒頭部分です。
プラズマのような電光が走りぬけ、全裸のシュワちゃんが現れます。
ボディビルダーから転身したばかりの、むきむきのシュワちゃんがお尻を丸出しにしながら歩くのですが、上半身の筋肉の盛り上がりは、もはや人間とも思えません。
ターミネーターという殺人アンドロイドというのにふさわしい。堂々とした体躯です。
ターミネーターシリーズで気になるのは、生体に包まれてものはタイムスリップすることができないという理由もあって、全裸の状態から始まる中、どうやって服を入手するのか、というところも見所でしょう。
はじめに、シュワちゃんが、いかにもヤンキーというかゴロツキ同然の男たちに、声をかけて、服をよこせというシーンは、ジェニシスでそのまんま再現されています。台詞まで同じなので、覚えている人は、わくわくがとまらないことでしょう。
ただ、ジェニシスはその次の瞬間が驚かされるので、是非このシーンは覚えておいてください(予告編をみたら一発でばれるので驚かないかもしれませんが)。
また、カイル・リース登場シーンや、デパートの中を逃げるシーンも、見事にT1のシーンを見事に再現しながら、自然に、もし、こういう条件が加わったらこういうシーンになるかもしれない、といった納得のシーンをみることができます。
聖書との関連
映画評論家町山智弘氏も指摘しているように、ターミネーターではキリスト教を模した物語構造になっています。
未来の抵抗軍のリーダーであるジョン・コナー。
彼は、救世主とも呼ばれています。
その名前をイニシャルで現すとJ・Cです。
また、キリスト教で救世主といえば、当然のことながらイエス・キリストです。
ギリシア語として読んだ場合はイエス・キリストですが、英語読みをすると「ジーザス・クライスト*1」となり、そのイニシャルはJ・Cとなります。
すなわち、ジョン・コナーはイエス・キリストを暗に象徴するものでもあるのです。
そうなると、その母親であるサラ・コナーは、聖母マリアということになり、カイル・リースは、受胎告知においてイエスを身ごもることを告げる天使ガブリエルに相当するのか、なんてことも考えることができます。
TXー800は、目的のためなら手段を選ばない悪魔として捉えることもできるという、聖書的構造をターミネーターはもっているのです。それゆえにT1では、ターミネーターは感情なく人々を殺すシリアルキラー然とした働きっぷりを見せてくれるのです。

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脚本のウマさ
T1では、脚本にタイムパラドックスがあるという指摘があります。
タイムスリップものにはどうしても突き詰めると矛盾がでてきてしまうわけですが、私は、藤子・F・不二雄の「ドラえもん」にでてくる理論で、とりあえず、納得することにしています。
ドラえもんは、のび太の子孫であるセワシくんが、ジャイ子との結婚から、しずかちゃんへの結婚に過去をかえ、のびたを真人間にして将来子々孫々までうけつがせる借金をつくらないようにする話です。実は。
でも、のび太は、「それじゃ君が生まれなくなってしまうじゃないか」といいますが、ここでセワシ君は、わかるようなわからないような話をします。
例えば、東京から大阪に行こうと思ったら、様々な交通手段があるけど、どれを選んでも、途中の経過が違うだけで、目的地には着く。それと同じで、経過が変わっても、結局僕は生まれて来るよ
ドラえもん 1巻
つまり、サラ・コナーの父親が誰であっても、ジョン・コナー自体は生まれてくるのではないかと思うわけです。
セワシ君は、のび太の曾孫にあたるからいいけれど、息子だったら父親の影響がでかいだろう、となるかもしれません。事実、のび太の家計図が図解されているときがあったりして、結局、セワシ君はこのように生まれるというものがあるのですが、そういう理屈はあまり気にしません。
リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナーは、強い女性です。
父親なんて究極的には関係なくて、神の世界=未来と考えれば、その神話性をターミネーターで演出するために未来の男が重要だったのであって、タイムパラドックスとかを無視してもいいのはないでしょうか。
そもそも、ターミネーターの本質はそこではないので、別にいいとも思います。
T1の脚本で面白いのは、時にはサスペンス。時には、ホラー映画のようにジャンルを飛び越すところでしょう。
サラ・コナーは闘うことができません。あくまで、単なるウェイトレスだからです。
そのため、カイル・リースという男がいない場合、サラは逃げるか隠れることしかできないのです。
ストーカーに追われていると思っているときなどは、ホラーです。
カイル・リースを犯人だと思って警察に電話したり、あわやターミネーターにみつかりそうになるあたりは、ドキドキします。
逃げるところは、サスペンス。
カイル・リースがいてはじめてターミネーターは、アクション映画へと変わるのです。
そして、最後には、サラ・コナー自身がターミネーターと立ち向かう。
予算は少ないので、たしかに映像的にチープなところもでてきますし、ストップモーションをつかっているせいもあって、カクカク動くターミネーターの情けなさといったら残念な感じではありますが、足が故障しているという設定などをつかい、アイデアでくぐりぬけている様がすばらしいです。
また、テンポがよく飽きさせないカット割りと、未来から来たターミネーターというのを信じない周りの人間。
精神病者にしか思われない状態なんかも、孤独と恐怖が募っていきます。
未来から裸で乗り込んできたカイル・リース。
両親もおらず、どこか孤独にあえいでいるサラ・コナー。
その二人の人間が描かれている点で、ターミネーター1は脚本的な面白さを感じ取ることができます。
T2のおさらい。
T1の紹介が長くなってしまいましたが、T2は、ジェニシスを見るにあたっては、そこまで細かくみる必要はありません。
内容については以下。
T1でターミネーターを撃退し、10年の月日が流れた後。
息子であるジョン・コナーを救世主として育てるために、あらゆる手をつかうサラ・コナー。
しかし、アメリカに戻ってきたときに、警察病院にいれられてしまい、精神病患者として隔離されてしまっています。
一方で、義父母に預けられているジョン・コナーはATMからお金を盗んだりする駄目な少年に育っていました。
その彼のもとに、液体金属であるTX-1000が未来からやってきて、命を狙います。
一方で、かつて殺人アンドロイドとしてサラ・コナーを襲ったはずの、TX-800ことアーノルド・シュワルツネッガーも、プログラムを書き換えられ、ジョン・コナーを守るためにやってくる。
果たして、ジョン・コナーを守ることができるのか、シリーズ第2段にして、液体金属という敵を目の前に、どうやって倒すのか。
というのがざっくりした内容です。
T1に比べて、制作費が10倍以上になったので、車は爆発するわ、ヘリコプターは爆発するわで、お金がめちゃくちゃかかっているのが一発でわかります。
CGの未来を切り開く。
まだまだCGが万能ではなかった時代に、CGの可能性をみせてくれたのが「ターミネーター2」です。
流体多結晶超合金でできている殺人マシーンTX-1000は、同じくらいの大きさのものであればどんなものにも変身できます。
手がナイフみたいになって人を刺し殺すシーンなんかは、もう当時はびっくりしました。
ロバート・パトリック演じるTX-1000は、殺人マシーンとしての狡猾さと残忍さにおいては、シリーズ史上でも群を抜いています。
T2としての見所。
T1ほど、ジェニシスでのオマージュシーンはありませんが、ターミネーターの人間くさい部分は、T2を踏襲しています。
『アスタ・ラ・ビスタ・ベイビー』
日本語訳では「地獄に落ちろ、ベイビー」となっていますが、スペイン語であるこの言葉は、残念ながらジェニシスでは使っていませんでした。
ただ、言葉を学習するっていう機能があるようで、T2で人を殺したら駄目だ、なんていうことを言っていたなぁ、ぐらいのことを覚えておけば問題ありません。
また、無理して笑う姿なんかもでてくるので、T2を予習しておけば、シュワちゃんと同じ表情の笑顔を劇場でしてしまうこと間違いなしです。
ジョン・コナーがなぜスペイン語を話すのか。
これは、ブレイキング・バッドをみていてわかったのですが、メキシコはスペイン語のようです。サラとジョンは、メキシコで武器を購入したり、非合法な活動を行っていたものと考えられます。
だからこそ、ジョン・コナーは自分の幼少期によくつかっていたスペイン語での言葉を教えたのだろうと、今更ながら思いました。
あとは、ターミネーターといえば、決め台詞。
「アイル ビー バック」
これでしょう。
T2でも重要な場面でつかわれていますが、実はT1でもしっかり使われています。
それは、警察署にサラ・コナーの面会にシュワちゃんがいくと、「供述中だから会わせられない」とけんもほろろに断る場面。
そのときに、シュワちゃんが「アイルビーバック」と短く言って、外にでていくと、次の瞬間、車で警察署につっこんでくる、というとんでもないところです。
ターミネーターといえば、「アイル ビー バック」。
ジェニシスでも、恥ずかしいくらいわざとらしく使いますので是非覚えておいてください。
T2はやはり、娯楽重視です。
殺人マシーンとして命を狙ってきたターミネーターが、2では味方になるという、少年漫画的展開には、わくわくしました。
っというか、ターミネーター2をロードショーでみたのがはじめだったわけですが、よくわからないけれど、前は敵だった人が味方になったんだ、というだけで、なんとか嬉しくなったものです。
見返すことで10倍おもしろくなるジェニシス
ジェニシスでは、シュワ対シュワの対決をみることもできますし、T1とT2を見返すことで、ジェニシスを何十倍にも楽しくみることができますので、ジェニシスを見てから見るのではなく、必ず、ジェニシスを見る前に見ていただきたいとおもいます。
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は、残念ながらジェームズ・キャメロン監督ではありません。
ですが、ターミネーター1と2をものすごくリスペクトした作品になっているので、ターミネーターファンは必見といえます。
ただし、ターミネーター3は、大人の事情で無かったことになった、みたいなので、とりあえず、ジェニシスを早くみたい、という人は、無理してT3を見ることはありません。
個人的には、T2はよくできていると思いますが、T3も劣らずいい出来だと思っています。
T3は、T2のあとの世界が描かれているのですが、審判の日が訪れなかったせいで、救世主にならなかった駄目人間のジョン・コナーを見ることができます。
非常時の才能というものは歴史上存在するようですが、非常時にならなければ単なる駄目な人に過ぎないっていうのは、鳥山明「ドラゴンボール」でも、大きな戦いが終わったあとの悟空は、嫁と話すこともなく、働かないでひたすら修行するしかなくなるということでもみてとれます。
何にもなれなかったゼロ年代的ターミネーターといえる作品だと考えると、別の意味でも楽しくみれますので、興味がある方はT3も是非どうぞ。
もちろん、ターミネーターを見直さなくても十分にみることはできますが、見なければきっと損をしたと思うくらい、がっかりすることになりますので、是非復習はお忘れなきよう。
以上、「ジェニシスみるなら予習せよ/ターミネーター1・2」でした!
ターミネーター:新起動/ジェニシスの感想・評論については、以下のエントリーに記載してありますので、興味のある方は是非ご覧ください。
*1:外国人が何か驚いたときや、ひどいものをみたときに、ジーザスクライスト!、というのは、くそったれ、とかいう言葉で訳されます。神を信仰する人たちは、信じられないものをみたときに、おお神よ! と、神に頼りたくなる気持ちを言葉にしているようです。ちなみに、聖書では神の名をみだりに唱えてはならないといわれているですが、普通に言ってますね。ガッデム!