シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ネタバレなし解説 面白い?つまらない? カメラを止めるな!

カメラを止めるな! 【B2変形サイズオリジナルポスター付】

 

各所で話題沸騰の「カメラを止めるな!」ですが、あまりの面白さと、その脚本の巧妙さから、ネタバレをするのが惜しくなる作品となってしまっています。

どんな映画かわからないけど、自分と合うかどうかもわからない、といった方の為に、一般的にこういうものではないか、というイメージをもとに作品を紹介してみたいと思います。

ネタバレ解説については、別の記事で紹介します。

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ゾンビ映画なんでしょ

本作品を見る前の方の多くは、本作品をゾンビ映画だと思っていると思います。


また、低予算にも関わらず大ヒット、というところの印象が強く、安い割には面白くできている、玄人向けの作品に違いない、と半ば思いながら、興味をもっているからこそ、ついつい作品を調べてしまうはずです。


人間確信がもてないと、一歩踏み出すことが難しいものですので、ゾンビ映画だから見ない、と思ってしまっている人も多いと思いますが、その点は心配しなくても大丈夫です。


ゾンビ映画がもつグロテスクさはほぼありません。

血が苦手、という人は、血のりに少し具合が悪くなるかもしれませんが、ゾンビ映画的な驚かせ要素はほぼありません。


本作品は、ゾンビ映画を撮影していたら、本物のゾンビが入ってきていて、パニックになってしまう、という映画であると同時に、ひねりを加えた作品となっています。


事前情報だけきくと、芸術&作品の為には、カメラを止めることができない監督、芸術家の性をテーマにした作品だと思ってしまう事でしょう。


ですが、本作品は脚本が実に巧みにできており、映画を見た経験が多ければ多いほど、その違和感に気づける珍しい作品になっているのです。

37分のワンカット

長回しというのは昔からつかわれる手法です。

ですが、一方で、画面が単調になりがちであったりして、センスを要求されるつくりでもあります。


通常の映画であれば、役者が台詞を間違ったり演技がいまいちでも、カットごとで区切ってしまえば、よいところだけ編集して使用できますし、そもそも映画というものは、始まりの時から編集による効果というものを最大限につかっている媒体です。

台風クラブ」「セーラー服と機関銃」で有名な相米慎二監督も長回しで有名な監督であり、長回しをすることでその作品への没入感が一気に高まるところをうまく利用しています。

海外でも多いですが、「トゥモロー・ワールド」といった作品も、長回し風(実際は、デジタル処理や遮蔽物をうまくつかってそのように見せているそうです)で撮影したりしています。

黒沢明にしても、オーソン・ウェルズにしても、長い時間とリハーサルをかけて行っており、長回しというだけで、映画ファンにはハラハラしてしまうこと請け合いです。


さて、「カメラを止めるな!」でも、事前のふれこみで37分のワンカットということがあると思いますが、これもまたすごいことをしています。

ゾンビ映画でワンカットで、デジタル合成もつかえないような低予算。

そんな前ふりがあるため、低予算なのに頑張った、からおもしろい、というわけでは、もちろんないのがこの映画のすさまじいところです。

盗作問題について

この作品は技術的な頑張りもさることながら、圧倒的な脚本の力によって成り立っています。


カメラを止めるな!」の予想をはるかに超えたヒットもあってなのか、盗作問題などもでてきましたが、そのあたりの事実関係については言及しませんが、物語というのは、いろいろな先行作品の影響が積み重なってできてくるものです。


本作品では、劇中劇からの大きなネタバレ、カタルシスがありますが、この作品は抜群の脚本からなりたっています。

親子の問題。

職業映画。

職人や芸術への在り方。

大きな目標を成し遂げようとする人たちの意志。

夢をあきらめないことへの思い。

ざっと考えただけでも、これだけのテーマの片りんが過不足なく描かれています。

また、脚本だけうまくできてもこの作品は成り立ちません。


37分ノーカットでやるという限界の中でやり、その中での演出を含めた中でテンポのいい編集。

バランスのよい作品となっていて、驚かされるばかりです。

仮になんらかの部分に盗作があったとしても、この映画そのものの面白さはかわらないですし、アイデアや脚本があったとしても、本作品をこれだけ面白いものに仕上げるのは、簡単にできるものはありません。

はじめの37分も目を閉じるな!

本記事では、ネタバレは致しませんが、映画をまだみていない方で、あまり期待していない方、且つ、映画をそれなりの本数みてきたかたについて、注意していただきたいことがあります。


この作品は、始まりからの37分をどう見るかで、面白さが何倍になるかが決まります。

普通にみても面白いですが、37分を注意深くみることで、その面白さは一気に膨らみます。


ただ、同時に、この映画のある意味つらいところはこの37分なのです。


いかにも安い自主映画のような規模のゾンビ映画

お世辞にも美人とはいえず、その美人ではない部分を、タンクトップとホットパンツという衣装によってカバーしている(ように演出)。

このお色気で見せようとするB級映画感。

そんなB級にも関わらず、独善的な監督。

「出すんじゃなくて、出るんだよ。本物の、顔、顔、顔!!」

この映画には本物があるのですが、一回目の37分をみる我々の目には本物のようには映りません。

ああ、芸術家という生き物の性が描かれているなぁ、とただただ思うだけです。

このなんとも安っぽいだけの、ワンカット映画のどこが面白いのだ、と思ってしまうと思いますが、ちょっと待って頂きたいのです。

 

違和感に気づけ!

ネタバレは別の記事で行いますが、本作品を鑑賞していると、映画の本数を多く見た人は、違和感に気づいてしまうと思います。

それは、この映画なんか、いまいちだな、という点です。

やけに怪我の有無を確認する人。

女優の叫びがやたらに多い。

やたらと同じセリフと行動を繰り返す。

見切れてる人がいる。

それ以外にも小さな違和感や台詞のやりとりがあるのですが、このあたりを、気づきながらも面白がれるかがポイントとなると思います。

血のりの関係か、はたまた想像以上のつまらなさ(既視感)に席を立った人もいましたが、ダメな映画をめでる精神で37分をみて、そのあとは、爆発的に面白い脚本と演出に舌鼓をうってみていただきたいところです。

 

おもしろいゾンビ映画、と思っていたら、損をします。

これほどの、エンターテインメントも最近みられませんので、映画館で見られるうちは、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

 

以上、ネタバレなし解説 面白い?つまらない? カメラを止めるな!でした!!

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