リメイク版を見る前に。ゴーストはいます!/1984年 ゴーストバスターズ
2016年に主人公を女性に一新してリメイクされる、ゴーストバスターズ。
そのオリジナルを見ないことにはゴーストバスターズははじまりません。
ゴーストバスターズがなぜヒットしたのか。そんな背景も視野にいれながら、1984年に公開されたゴーストバスターズの魅力に迫ってみたいと思います。
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冴えないおじさん、起業する。
ニューヨークの図書館で、ゴースト(幽霊)が現れるところからはじまります。
ゴーストが現れたという情報を受けて、やってきたのは三人のオジサン。
ビル・マーレイやハロルド・ライミス、ダン・エイクロイドといった錚々たる俳優陣が、超能力や幽霊といったオカルトじみたものを化学の力で解明しようとしています。
ですが、当然、まわりの人間からは無視されているような存在です。
コロンビア大学に所属していたものの、研究成果がでないことから研究室を追い出され、三人のオジサンは、自ら起業し、幽霊を退治する会社、ゴーストバスターズをつくるのです。
ビル・マーレイ演じるピーター・ヴェイクマン博士は、物語冒頭で、インチキな超能力実験を行って、被験者の女の子を口説いてしまうようなチャラいおじさんです。
ゴーストバスターズの脚本も書いているハロルド・ライミスが監督する映画「恋はデジャブ」でも、ビル・マーレイは主役を演じますが、そこでも似たような役柄で登場します。
恋はデジャブは、邦題はふざけた名前ですが、人をバカにしている男が、とある一日を無限に繰り返すことで人間として成長し、やがて、町中の人から好かれる存在になっていくという、SFロマンチックコメディといった作品です。
ビル・マーレイは、その表情や演技などから、意地悪で女好きなキャラクターとして、ハロルド・ライミスはつかっているのです。
ゴースト・バスターズでは、そんなビル・マーレイが、ゴースト退治をする中で、一人の女性のために命をかける男に成長していく姿も描かれているのがポイントです。
終末の過ごし方
「ゴーストバスターズ」は、ある日突然ニューヨークにゴーストが現れて、それを退治するけれど、最後には大ボスがでてきて、最後の手段をつかって倒す、という話です。
話だけまとめてしまうとみもふたもない話ですが、この物語は、その単純な物語の中に、人間の差別や宗教観も盛り込まれているところが面白いところです。
我々が住む現実の世界にゴーストはいません。
ですが、もし、ゴーストがでてきてしまったら。
カトリック教会の枢機卿と思われる人が、ニューヨーク市長に会いにくるくだりがあります。
その中で、「今回の件について、教会は関与しない」
というのです。
これは、どういうことかといいますと、幽霊がでてくるということ自体が、あらゆる宗教において是認できないということです。
映画「エクソシスト」を見ていただければわかりますが、キリスト教の中には悪魔払いというのが存在してはいます。ですが、すべての宗派で存在するわけでもなく、また、それを認めることは、宗教を考える上で様々な問題がでてくる可能性があるのです。
そのため、司教と思われる人は、
「個人的には、神の裁きがきたのだと思っている」
とはしゃいだ様子です。
キリスト教においては、終末になれば、良い行いをした人間は墓から甦り、天国にいくことができるという思想が存在するのです。
ゴーストがでてきたからには終末が近い。
語弊があるかもしれませんが、神を信仰するものだけが天国にいくことができるという考え方をすれば、我々だけが天国へいくことができる、と思ってはしゃぐのは、無理らしからぬことなのです。
とはいえ、それを公の見解として言ってしまえば、混乱がおき、暴動が起きることはあきらかだったりするのです。ゴーストという存在が当たり前になった時点で、かならず発生してしまうだろう問題の一つです。
ゴーストが現れることで、ニューヨークの町は人間の精神すらもゆるがしてしまっているのです。
全ては人災
自分のメンツがつぶされたと思った環境保護局の人間が、ゴーストが捕まえられている装置の電源を無理やりきってしまいます。
まるで、パンドラのハコをあけたかのような状況になり、物語は急転直下を迎えます。
ニューヨークの町をとんでもない目にあわせたのは、人間自身の手によるもの、というのが皮肉です。
ちなみに、ゴーストバスターズが背中に背負って使う武器は、小型の原子炉をつかっているという設定になっています。
今の世の中では正直、危険すぎて使えない設定となっていますので、リメイク版の「ゴーストバスターズ」はどうなっているのか、興味が沸くところです
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人間を助けるのも、厄災をもたらすのも、同じく人間であるのです。
ニューヨークが一つになる。
ゴーストバスターズがなぜヒットしたのか、その理由の一つは、当時のニューヨークの事情を考えるとわかりやすくなるかもしれません。
1980年代のニューヨークは、はっきり言って治安が非常に悪く、失業率も回復してきたとはいえ、良いとはいえない状況でした。
宗教もバラバラであり、無心論者もいれば神にすがる人間もおり、人種差別も含めてニューヨークという街がつくられていたのです。
その治安が悪い町の中で、ゴーストバスターズの存在が、ニューヨークの町の人たちの心を一つにしていったのが、重要なポイントだと思われます。
ニューヨークの失業率については、映画の中でも名言はされませんが、非常に厳しい状態であることは示されています。
三人のおじさんたちが、再就職が無理だから起業しようとしたということはまず一つ。
これだけであれば、あまり気にならないところでしょう。
ですが、さらに状況を裏付けるシーンがあります。
受付に雇った優秀な受付嬢ジャニーン。
「もう2週間も休みがないんですよ」
といって現状をビル・マーレイに訴えますが、「君ほどの優秀な人間ならば引く手あまただろうから、すぐやめてもらってかまわない」とバッサリ。
優秀な受付嬢になんてことを言うんだろうと思いましたが、それはニューヨークの職業事情を考えれば、納得できます。
そんな状態であっても、仕事があるだけマシだからやめられないのです。
おそらく、ゴーストバスターズ唯一の黒人であるウィストンが入ってきて、あっさりメンバーになることを認められたという事情もそのあたりにあると思われます。
暗に、ゴーストバスターズは、儲かっていたとしても誰もあまりやりたがらない仕事ということが考えられるのです。
でも、ウィストンは、給料がもらえるなら、ということで在籍します。
こういったところも、結果としてゴーストバスターズは、人種差別もしないグループだということが示されるのです。
人種も宗教も違うニューヨークの町に、ゴーストを退治するゴキゲンなやつらがやってきた。
人々を一つにする象徴となったのが、ゴーストバスターズだったのではないでしょうか。
だからこそ、映画をみているときの爽快感が加速されるのです。
音楽も、ゴーストバスターズ
決してかかせないのが、一度聞けばいやでも覚えてしまう「ゴーストバスターズのテーマソング」です。
ビルボードにおいても3週連続一位に輝いたとされ、当時、いかにが売れたかがわかります。
これはうがった考え方になりますが、日本でもアナと雪の女王が劇的にヒットしましたが、それもまた音楽の力が非常に大きかったと思われます。
映画そのものの面白さももちろんありますが、テーマソングがよければ、その人気はさらに大きくなる、といったものの典型といえるでしょう。
ビル・マーレイはチャラくない
最後に、ネタバレというほどではないですが、ビル・マーレイ演じるピーター・ヴェイクマン博士についてです。
物語冒頭では女子学生を口説こうとした彼ですが、物語の中で、ゴーストバスターズは、一躍時の人となります。。
TIME誌にも取り上げられるなど、彼らは一種のスターのようになっていきます。
ですが、ビル・マーレイは、はじめに好きになった女性だけしか口説きません。
門の神(ゲート・マスター)に取り付かれた彼女が誘惑してきても、まったく興味がないのです。
有名になっても、彼女のもとにやってくる。
本来であれば、自分につれない人間ではなく、もっと楽な方法がいくらでもあったはずなのです。
そのことからも、実は、ビル・マーレイは最初から最後まで一途な人間であり、人間を肉体ではなく心を含めてちゃんと見ている人間であることがわかるのです。
ハロルド・ライミスが脚本を描く作品は、普通に見ても楽しめますが、人間の本質的な部分がみてとれる作品にもなっていますので、ハロルド・ライミスは亡くなってしまいましたが、作品は今もなお見ることができますので、これを機会にみてみるのもいいかもしれません。
また、差別や宗教、生きているとか死んでいるとか関係なく、ゴーストバスターズはみんなの心を一つにしてくれる映画ですので、気になった方は、リメイク版との違いを比較しながら是非ご覧いただければと思います。
以上、「リメイク版を見る前に。ゴーストはいます!/1984年 ゴーストバスターズ」でした!