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シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

カイカンは二度ある/橋本環奈主演「セーラー服と機関銃-卒業-」

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2016年3月5日から絶賛公開の映画「セーラー服と機関銃-卒業-」ですが、想像以上にお客の入りが悪いという話が続出していますが、角川映画40周年記念作品というだけあって、非常に力が入った作品でもあります。

 

公開真っ只中ではありますが、ネタバレをしない程度に、新作映画「セーラー服と機関銃」の魅力と見所について、紹介してみたいと思います。

 

 

改めて、セーラー服と機関銃

 一応、おさらいをしておきます。

この記事を見ている人には今更かもしれませんが、「セーラー服と機関銃」は、「三毛猫ホームズ」シリーズや「三姉妹探偵」シリーズなど、ものすごい量の作品を作り、「探偵物語」「早春物語」「晴れときどき、殺人」などなど、角川映画と呼ばれるジャンルにおいて多数の原作を送り続けた赤川次郎の作品です。


角川映画については、本記事では言及しませんが、ざっくり言えば、アイドル映画の元祖とも呼べるものであり、1981年に作られた「セーラー服と機関銃」は、当時の映画状況を大きく変える作品ともなった重要な作品なのです。


角川映画40周年記念と題して作られたことからも、「セーラー服と機関銃 -卒業-」がいかに力を入れているかがわかるというものです。


そして、「セーラー服と機関銃」といえば、1981年に公開された相米慎二監督によるものを無視することはできません。


相米慎二監督は、長まわしを多用し、一種異様な雰囲気をつくりだす手腕は、カルト的な人気を誇った監督です。

 

本ブログの中でも、相方のニャロ目が紹介しているところです。

台風クラブは、台風が来ることで、子供達がおかしくなっていく姿を描いた作品です。雨が降る中、子供達が歌を歌いながら踊り狂うシーンは、今のテレビでは到底放送できないものとなっています。

 


さて、そんなカルトな人気を誇る相米慎二監督の代表作の一つである「セーラー服と機関銃」を、「1000年に一人の逸材」といわれて、インターネット上で話題になった橋本環奈が主演。

監督は、吉高由里子主演「婚前特急」などで有名な前田弘二がつくるということから、話題自体は非常にあった作品です。

 

橋本環奈版

 さて、満を持して公開された「セーラー服と機関銃ー卒業ー」の内容ですが、あくまで、原作小説の2作目といったところが強いつくりとなっています。

 

続編として宣伝されていますが、故相米慎二による監督作品の、続編ではありません。

相米慎二監督の「セーラー服と機関銃」とは、まったく別物として考えないと違和感で混乱することになりますので注意してください。

 

あくまで、赤川次郎原作の「セーラー服と機関銃・その後 -卒業ー」をメインにつくられた作品です。

 

セーラー服と機関銃・その後――卒業―― (角川文庫)

セーラー服と機関銃・その後――卒業―― (角川文庫)

 

  

目高組を解散させた橋本環奈演じる星泉は、メダカカフェという喫茶店を経営し、三人のヤクザと共に店をしていたところ、いんちきモデル事務所に騙された女の子が依頼をもってきて・・・、というのがざっくりした物語の冒頭になります。

 

相米慎二監督版では、主人公の星泉は、父親が死んだことで目高組の組長になります。そこには、娘でありながら、時には妻であり、母親ですらあったという母性の塊としての星泉が描かれます。

一方で、橋本環奈版は、叔父が死んだことで組長の座がやってきます。

叔父に対して男性的な魅力を感じていたかはわかりませんでしたが、町を守る人間に対して魅力を感じる女の子という側面が強くなっていたように感じます。

 

2016年版は、既に、星泉は組長になり、とある事件を解決させ、組を解散させたあとの物語が、本作品となります。


角川映画の一つの側面として、主演のアイドル以外はベテラン俳優をつかうっていうことが非常に多いです。

本作品でも、長谷川博己や、武田鉄也、伊武雅刀、いずれも脇を固める俳優陣はベテランぞろいです。

 

映画的表現のカイカン

 

相米慎二監督といえば長まわしが特徴と書きましたが、本作品でも長まわしは意識的に使われています。

メダカカフェで、落ち込む星泉を二人のヤクザが元気づけるシーンなどは、非常によいシーンです。


自分がなぜヤクザになったかを二人の男が語った後、組長(橋本環奈)の器が小さい、ということをだしにからかわれるところから、カメラが店の外まででていきます。

 

たんにふざけあっているシーンなので、人によっては冗長的に感じるかもしれませんが、このシーンは、普段のメダカカフェの様子がありありと見て取れる素晴らしいシーンになっています。

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星泉は、自分のせいでまわりが迷惑することにショックを受け心を閉ざしてしまうのですが、二人のヤクザは、少しずつ主人公を笑顔にしていきます。

店は大変なことになっているにもかかわらず、彼らの何気ない会話によって、日常での関係がわかります。

そして、長まわしで撮影することによって、普段の彼らの日常に入り込めるような感覚を味わうことができるのです。

時々素に戻ったような橋本環奈も声や表情にも注目です。

 

ここのシーンは、パンフレット上でも書かれていて

三人で話しているシーンは、アドリブだったんですよ!「カットと言うまで続けてください」と監督に言われて。落ち込んでいる泉が笑顔になっていく。やっていてすごく面白かったし、キャストとの皆さんとも現場で沢山話をしていたからこそ、絆が生まれて出来上がったシーンだと思います。


セーラー服と機関銃 -卒業-」パンフレットより 

 

長回しのシーンは、台詞を一言一句コントロールすることは難しいです。

そのため、状況や最低限の行動を俳優に伝えることでより、自然で、そして、ワンカットを長くとることで、そこの場面に没入していくことができる効果があるのです。


また、分割画面などをつかっての演出も面白いです。


軽トラックで逃げるシーンで、一番ひょうきんだったヤクザの春雄が運転をしているのですが、画面の右半分は春雄の無表情が映り、左半分ではトラックの後ろ側の遠ざかる光景がみえます。

このシーンは星泉にとって非常に残酷なシーンになっており、圧倒的な無力感を、一つの画面で、一発で見せてしまう優れた場面です。


カメラワークも非常に凝っています。

はじめのほうは、手持ちカメラ風のぶれた映像で酔いそうになるところもありますが、上から撮影する場面もあれば、正面から撮る場面など、飽きない画面作りがされていて、非常に面白くみることができます。

 

 

映画的心情表現

 

長谷川博己と、橋本環奈演じる星泉が、死体を埋めるシーンがあります。


夜中に埋めているのですが、時間がかかりすぎて「夜が明けるぞ」と長谷川博己に言われるのですが、本当に、嘘のようにぱっと林が明るくなります。

 

普通ではありえない唐突な明るさです。

ですが、このあと、星泉は、とある重大な事柄に対して覚悟を決め、拳銃をぶっ放すという重要な場面の前触れとなります。

急に明るくなるシーンが、星泉という、組長でありながらも、決心できない女の子が、覚悟を決めていくことを予感させる場面になっていることが、唐突な明るさによって表現されているのは秀逸です。


こういった場面でキャラクターの心情を表現するというのは、映画では意識的に使われています。


雨が唐突にふる場合は、キャラクターの悲しみを表しているというのが映画のお約束でもあります。

ただ、この作品では、長谷川博己に手を握られて走っていく星泉が、雨にうたれながら、微笑んでいるという逆説的な使われ方をしているところもまた面白いです。

本来であれば雨は悲しみを意味するはずなのに、星泉はウキウキと楽しそう。

(その場面は、正直、笑顔になっていいような場面ではありません。でも、それでもその状況が嬉しくなってしまう少女の心の動きがよくわかります)

それは、自分の叔父に似た背中をもつ男に対して、恋心のようなものを抱く瞬間としてみることができるのです。

物語的には

 

物語的には、一人の組長だった女の子が、自分の身近に起こっている野望に対して立ち向かい、恋を知り、大人になっていく姿を描いたものです。


脚本的につっこみどころがないわけではありません。

商店街の人たちは、目高組に対して酷いことをしますが、ラストシーン近くでは、それが何もなかったかのように普段通りに話しかけてくるなど、和解する場面などはありませんし、星泉の学校での仲良し三人組みの男の子もまた、妙な雰囲気になってしまうのに、特別解決した感じはありません。

気になるところはありますが、それを超える演出や、出演者の面白さがあります。


ちなみに、アイドルである橋本環奈の演技についてですが、非常に自然です。

写真等でしかあまりみたことがなかったのですが、動きのある演技に適しているように思います。

物語の最後には、主題歌である「セーラー服と機関銃」を熱唱するあたり、伝統的なアイドル映画をしっかりと引き継いでいるといえるでしょう。

 

原田知世主演「時をかける少女」などでも、エンディングでひたすら原田知世が画面にむかって歌い続けるシーンがあり、そのあたりをインスパイアしているのかもしれません。

 

冒頭でも書いたように、アイドル映画はまわりの俳優陣がしっかりしていることで、逆に主人公を演じるアイドルが輝くことにこそ大きな特徴がありますので、そういった点では、非常に成功している作品と思われます。

カイカン?は2度ある。


セーラー服と機関銃といえば、流行語にもなったという「カ・イ・カ・ン」です。

なんと、物語がはじまって3分ぐらいであっという間に名台詞が言われてしまいます。

また、機関銃をぶっぱなすというシーンも同じく開始3分で見せられてしまうので、どうなっているんだと思ってしまいます。

ですが、本作品でも機関銃を撃つというのは非常に重要な意味付けが行われています。


星泉が、巨悪に対して、「こんなの気に入らない。絶対気に入らないっ!」といって、自らの信念をぶちまけるシーンで使われ、機関銃というものが大人たちによるくだらないものを破壊するための象徴としてつかわれています。

 

 

そこには、18歳という設定の星泉ではわかりたくない、でも、見なければならない現実があるところがあるのです。

 

セーラー服と機関銃」では、さらに重要な場面があります。

相米慎二監督の「セーラー服と機関銃」でも重要だった場面ですが、大人の男にキスをするというシーンがあります。

薬師丸ひろ子演じる星泉が、渡瀬 恒彦にキスをするシーンは、星泉が大人の世界を知り、そのセカイを知ったがゆえに「おろかな女に、なりそうです」という非常に妖艶な台詞と対応して、印象に残ります。


本作品でも、大人に近づいた星泉がキスをするシーンがでてきます。どのようなキスになるかは是非橋本環奈ファンにみてもらいたいところです。

 

amazonプライムビデオでは、amazon限定のメイキングをみることもできます。

基本的には、撮影場面をひたすら撮っていたりするだけではありますが、作品を見てからみると、カメラワークによってどれだけ雰囲気がかわるのかをみてとることができて面白いです。

 

 

セーラー服と機関銃ー卒業ー」は、たしかに賛否両論はあります。

 

予告編はちょっとコメディ色が強めにつくられていますが、地方都市における問題や高齢化社会が生み出してしまった悪、ヤクザたちが置かれている状況など、厳しい状態の中にある笑顔が映える作品となっています。

 

角川映画40周年記念作品というだけあって、一見の価値は十分にあると思います。

 

ただ、自分が見た回は、映画館に自分を含めて4人しかいなかったことは、内緒です。


以上、『カイカンは二度ある/橋本環奈主演「セーラー服と機関銃-卒業-」』でした!

 

相米慎二監督による「セーラー服と機関銃」の記事は以下です。

 

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長谷川博己が出演している映画の記事は以下です。

 

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