シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

秀でた美しさでございます/パク・チャヌク「お嬢さん」

荊の城 上 (創元推理文庫)

  

オールドボーイ」などで有名なパク・チャヌク監督が誇るエロティック・サスペンス。

話題となっている「アガシ」こと「お嬢さん(hand maiden)」について、どのような映画なのか、ミステリー仕立てということもあって、面白さの一旦を伝えづらいところではありますが、その見所も含めて感想を語ってみたいと思います。


舞台は日本統治下の朝鮮

原作小説はサラ・ウォーターズの「茨の城」です。

ビクトリア王朝のイギリスが舞台になっているのですが、「お嬢さん」では、1939年の日本の統治下にあった朝鮮半島が舞台となっています。

パク・チャヌク監督もパンフレット内で言っておりますが、この作品は、この時代に設定したことで、非常に豪華なセットを楽しむことができるようになっているのが特徴です。

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狂犬・渡瀬恒彦のたたずまい 完結編

松方弘樹に続き、渡瀬恒彦もこの世を去りました。

作監督や脚本家の笠原和夫はあの世で何を思うでしょう。

次々やってくる『仁義なき戦い』のキャスト陣をみて、新しい映画製作に燃えているのかもしれません。

 

本稿では、名優・渡瀬恒彦が最も輝いていたと思われる東映/ヤクザ映画を取り上げて、彼の魅力に改めて迫りたいと思います。

 

渡瀬恒彦の主演映画

 

渡瀬アニキの主演映画は意外と多くありません。

その中で自分が最も好きなのは『鉄砲玉の美学』。

カルトなヤクザ映画として知られ、現時点ではDVD化されておりませんがGYAOストアで視聴することが出来ます。たぶんDVDになることはこの先もなさそうなので(とはいえ、ここ最近レアで未ソフト化だったヤクザ映画がDVD化されることも多く期待がないわけではないですが・・・・・・)、見られる時に見ておきましょう。

無軌道なテンピラの無残の散り様、それをみごとに演じきった渡瀬アニキ。

ヤクザ映画好きなら決して外すことの出来ない一本です。

詳しいレビューはこちら↓

cinematoblog.hatenablog.com

主演作でファンも多いのが、深作欣二監督『暴走パニック 大激突』(1976年)と中島貞夫監督『狂った野獣』(1976年)。

東映を代表する両監督が渡瀬アニキを主演に迎え、カーアクションを題材に映画を撮りました。

ヤクザ映画とはひと味違うテイストですが世相を反映した熱い作品です。

 

 自分としては『狂った野獣』のほうがより印象に残ってます。どちらも好きですけど。

 

狂犬、渡瀬恒彦

実をいうと渡瀬アニキは主演よりも脇役でこそその独特の輝きを発揮するのではないかと思います。

数ある参加作品の中から幾つかピックアップしてみます。

仁義なき戦い』有田役でキレキレの演技を見せた若かりし頃の渡瀬アニキ。

このまとめ映像が作られるほど観客に強烈な印象を与えました。

検問中の警官の土手っ腹を撃ち抜いて逃亡する無謀さ、プライスレスであります。

仁義なき戦い 代理戦争』ではヤクザ志願の若者タケシ役を好演。工事作業をする母親にタバコを渡す照れくさそうなタケシ・・・・・・。しかし、そんなタケシも抗争の犠牲となります。いつの時代も犠牲になるのは若者なのです・・・・・・。

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ジーン・ハックマンは容赦しない/フレンチ・コネクション

フレンチ・コネクション (字幕版)


アカデミー賞を5部門も受賞し、アメリカンニューシネマを代表する作品の一つでもある「フレンチ・コネクション」。

1971年に公開された映画ということもあって、一体何がそんなに面白いのか。どうしても古い映画は、後発の映画に影響を与えてしまって、さらに洗練された技術力の前に、古臭さを感じてしまうことと思います。

そんな「フレンチ・コネクション」の見所を含めて考えてみたいと思います。

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放課後を待ちながら/内田けんじ「アフタースクール」

アフタースクール [DVD]

 

内田けんじ監督といえば「鍵泥棒のメソッド」で日本アカデミー賞で最優秀脚本賞も受賞し、そのストーリーづくりに定評のある監督です。

パズルのようにくみ上げられたシナリオ術は、物語を書く人間は一度はみておいて損はないものとなっています。


見ている人は誰しもが騙される、といわれたこの作品。
(キャッチコピーは、甘くみてるとダマされちゃいますよ

表のスジと、裏のスジにわけつつ、内田けんじ監督の「アフタースクール」について、ネタバレを多分にいれながら解説していきたいと思います。

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アカデミー賞を総なめか。感想&解説/ラ・ラ・ランド

Ost: La La Land


ミュージカル映画でありながら、圧倒的な人気を誇る「ラ・ラ・ランド」

いきなり踊ったり歌ったりする映画というのは、なじみがある人と無い人とでは大きく印象が異なるものと思います。

英国アカデミー賞も受賞し、その後も次々と受賞していくであろう「ラ・ラ・ランド」について、その魅力や見所に迫ってみたいと思います。

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貴方は踏み絵を踏みますか?/沈黙ーサイレンスーマーティン・スコセッシ

沈黙 (新潮文庫)

 


マーティン・スコセッシ監督が、28年の歳月を経て完成させた大作。

遠藤周作がつくりあげた宗教と人間について語られた「沈黙」を、圧倒的なスケールで映画化した傑作です。

本作品は、江戸時代初期のおけるキリスト教の弾圧を受けながらも、信仰を続ける人々を描いた作品であり、宗教が題材として強い印象をもつことから、敬遠する人も多いかと思いますが、この作品がもっている普遍的な問題は、どんな世の中でも共通するものだと思います。

多少難解と感じられる部分もありますが、「沈黙ーサイレントー」がどんな物語なのか。

踏み絵を踏むことができずに、死んでいった人たちとはどのような人たちなのかを考えつつ、解説してみたいと思います。

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人間どこで頑張るのか/内田けんじ「鍵泥棒のメソッド」

鍵泥棒のメソッド

 

邦画のオススメを紹介するブログなどの中でも、高確率で選ばれる作品の一つとしてあげられるのが、内田けんじ監督「鍵泥棒のメソッド」です。

鍵、泥棒、メソッド。

という、まとまりそうでなんだかよくわからなそうなタイトルに惹かれる人もいれば、なんとなく敬遠してしまう人もいると思いますが、練られた脚本と、コメディタッチで明るく語られる物語は、非常に後味もすっきりした作品となっています。

そんな「鍵泥棒のメソッド」について、どのような魅力があるのか解説してみたいと思います。

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