この世界の片隅に、を見たあとに/マイマイ新子と千年の魔法
圧倒的なクオリティと、積み上げてきた時代考証によって、日本アニメ映画の歴史に壮絶な存在感を示した「この世界の片隅に」。
その監督である片淵須直氏の前作品である「マイマイ新子と千年の魔法」について、「この世界の片隅に」と関連性を考えながら、なぜ、ここまで片淵監督の作品が愛されることになるのか、その理由について考えてみました。
当ブログでは、「この世界の片隅に」の感想&解説も記載しておりますので、是非ご覧いただきたいと思います。
想像力豊かな女の子
「マイマイ新子と千年の魔法」の主人公である新子(しんこ)は、山口県に住む女の子です。
麦畑が広がる村で、大好きなおじいちゃんに千年前の風景や人々について教えてもらうことで、彼女は、想像力を働かせながら日々を生活しています。
続きを読むこの世界の片隅に。ネタバレ必須の感想&解説。原作と映画の違いも含めて。
片淵須直「この世界の片隅に」は、こうの史代氏の漫画が原作の映画です。
各所で話題になっている本作品ですが、その圧倒的なまでに作りこまれた世界。アニメ映画ならではの表現。伝わってくる感情の分厚さ。いずれをとっても、とんでもない作品です。
「アニメ映画で、しかも、戦争ものだし」と思う人もいるかもしれませんが、見る前の人は、ネタバレなしの前半を、見た後の人は、ネタバレをしている後半部分もふくめて「この世界の片隅に」の魅力について、その圧倒的な情報量を紐解きながら語ってみたいと思います。
原作漫画も非常に面白いのですが、映画になるにあたって、カットされる部分もありますし、追加される部分もあります。
そのあたりから、映画でのねらいも含めた中で考えてみます。
続きを読む物語の意味は。/クラウドアトラス ウォシャウスキー姉弟
映画「マトリックス」シリーズで大ヒットを記録し、一躍有名監督になったウォシャウスキー兄弟ですが、そのウォシャウスキー兄弟が映像化不可能といわれていた作品を映画化した「クラウドアトラス」について、考えてみたいと思います。
「マトリックス」をつくったときはウォシャウスキー兄弟でしたが、クラウドアトラスのときは、兄が性転換して姉になり、そして、2016年現在では、弟まで性転換して妹になり、ウォシャウスキー姉妹になった、という変わった経歴の監督です。
映画との関連性は考える必要ありませんが、「クラウドアトラス」は3時間を越す時間であり、6つの物語が同時進行していく映画ともなっています。
監督の手腕により、6つの物語は混乱せずみることができますが、そもそもこの物語は何なのでしょうか。
6つの物語。
それぞれ物語のあらすじについては、wikipedia等を参考にしていただきたいと思いますが、この映画をみていて思うのは「一体誰が主人公なの?」といったところではないでしょうか。
生きている実感がない/アメリカン・サイコ
クリスチャン・ベールが主演し、アメリカ人だけではなく、全ての人間がもちうる問題を浮き彫りにした作品、「アメリカン・サイコ」について、解説してみたいと思います。
名刺バトル
さて、この映画は冒頭から問題を見せ付けてきます。
高級そうなレストランで次々とメニューの名前がでてきます。
「イカのラビオリレモングラスソース」
「ゴートチーズにシーザーサラダ」
「メカジキのオニオン・マーマレード」
そして、ブランド服に身を包んだ男たち。
彼らは、仲間うちで高級とされているブランド服を着て、傍からみても違いのよくわからない名刺の意匠にこだわっています。
「オフホワイトの紙に、箔押し…。高級な厚み…」
といって、大変悔しがるのです。
続きを読む正しいアメ車の譲り方/クリント・イーストウッド「グラン・トリノ」
クリント・イーストウッド監督といえば、俳優としても監督しても抜群の存在感と才能を発揮する人物です。
そのクリント・イーストウッドの最高傑作と呼び声の高い「グラン・トリノ」について、その魅力を語ってみたいと思います。
頑固ジジィ
物語は奥さんの葬儀から物語ははじまります。
そこのシーンだけで、主人公であるウォルト・コワルスキーが子供や孫たちから嫌われていることがわかります。