シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ダメ男、立ち上がる。感想「アイアンマン」

アイアンマン(字幕版)

 
「アイアンマン」は、「マーベル・シネマティック・ユニバース」と呼ばれる、マーベル・コミックにでてくるヒーローたちを一つの世界の中で登場させるシリーズの第一作目となっています。
 
MCUと呼ばれる世界観を楽しむために、絶対に見なければいけないものの一つが「アイアンマン」となっていますが、作品単体としての面白さや、どういった作品による影響が考えられるかを含めて感想を述べてみたいと思います。
 

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トニー・スターク

「アイアンマン」は、トニー・スタークという一人のダメ男の再生物語から始まります。

ロバート・ダウニーJr演じるトニー・スタークは、軍需複合産業の社長であり、開発者です。
 
その天才性と成功した結果もあり、自信過剰な男であり、女好きであり、とんでもない主人公となっています。
 
そんな主人公が、テロリストに拉致をされて、しかも、そのテロリストたちがつかっている武器が、自分の会社の武器であったりしたことに衝撃を受けます。
 
誰かを守るために作っていた兵器が、一番使ってはいけない人間たちにわたっている。
 
よくある話といえなくもありませんが、「アイアンマン」は典型的なヒーロー誕生ものとして描かれているところが好感のもてる点となっています。
 
ジョーゼフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」をひもとくまでもなく、ヒーローがヒーローになるためには、一度どん底に落ちて復活する必要があるのです。
 
その定型をきっちり行っているからこそ、トニー・スタークが今までの自分を反省し、ストイックに開発や正義の行動を行っていることにも納得できるのです。
 
千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

「アイアンマン」は、自分自身のちゃらんぽらんさを担保していたトニー・スタークの信念が、結果として間違っており、自分自身もまた命の危機にさらされ、しかも、他人によって命を助けられてしまう、という困難や悲劇によって彩られることとなるのです。

潮騒のいたずら

嫌みな金持ちの典型としてでてくるトニー・スタークですが、そのキャラクターから連想してしまう映画として「オーバーボード」があります。

「オーバーボード」は、「潮騒のいたずら」という映画のリメイクとなっており、超富豪の男が記憶をなくして、貧乏な女性とその子供たちと暮らすことで、甘ったれた精神が叩き直されたり、男としての責任に目覚めていく、というコメディになっています。
「オーバーボード」の主人公もまた、大企業の社長の息子ですが、記憶をなくしている間に土木の仕事をして苦労します。
しかも、自分の会社がつかっている資材をつかって苦労をしたりしますが、記憶が戻った後は、それを改善していこうと意気込んだりします。
 
トニー・スタークもまた、ダメなセレブ野郎が一念発起し、ヒーローになるまでが前半部として描かれています。
 
基本的には、子供から大人まで幅広く見ることができるのが本作となっており、女好きなトニー・スタークは、グゥイネス・バルトロー演じる秘書のことを愛しているのですが、素直になれないでいるというキャラクターになっており、ヤキモキさせられるところです。
 
このあたりは、高橋留美子うる星やつら」における諸星あたるのような心理だと思ってもらえれば、わかりやすいのではないでしょうか。
 
ちょっと、たとえが古かったかもしれません。
 
諸星あたるは、ラムちゃんのことが本当は好きなのに、元来の女好きもあって、そんな自分が素直にラムちゃんを好きになってはいけない、という矛盾の中でいきている男なのです。
 
本当は好きなのに、好きとはいえない。
自分にはその資格がない、と思っている男の側面を、トニー・スタークはもっているのです。

アイアンマンは何者か。

「アイアンマン」の構造をみたときに面白いのは、トニー・スタークの在り方です。
 
たとえば、バッドマンは、自分で装備を作ることはありません。
 
スーツに着替えて出動しますが、その開発は別で行わせています。たしかに彼は天才的な科学者であり、様々な知識をもちますが、少なくとも開発する場面はありません。
 
トニー・スタークは、開発の天才という設定を生かし、自分で武器を作り、自ら改良することができるヒーローとして面白さをもっています。
 
それと同時に、「ロボコップ」のような鉄の塊に、自ら身を包むことによって戦うという特殊能力をあとから付与し、それを自ら試行して作っていくのが魅力のヒーローです。
 
物語の中でも、改良する前の機体が敵に使われていたものの、自分で発見した欠点をつかって敵を倒すという演出は、キャラクターの設定ならではで面白かったです。

開発の面白さ

「アイアンマン」の面白さとして、圧倒的な強さのアイアンマン・スーツの魅力もありますが、それを納得させてくれる制作過程の面白さにあると思います。

アーク・リアクターと呼ばれるエネルギーの塊のようなものをトニー・スタークは胸につけているのですが、そのエネルギーをつかって、アイアンマンは、空を飛ぶための推進力を得たりしています。

空を飛んだりするための装置一つとっても、トニー・スタークが怪我をしながら改良していく姿や、カラーリングやデザインも含めて変えていく姿を描く、というのはほかにはない面白さです。
 
本来であれば、ヒーローだから、というだけで片付けられててしまう彼の能力を、努力によって積み重ねた結果ヒーローになった、というところもまた、偶然で手に入れたわけではなく、正しい努力をすることによって誰でもヒーローになれる、という余地をみせています。

何も考えずに見ても面白い「アイアンマン」ですが、彼自身の悩みや、葛藤も含めて様々な観点からみることができるのが「アイアンマン」となっていますので、MCUの一作目として見返してみても、面白いのではないでしょうか。

以上、ダメ男、立ち上がる。感想「アイアンマン」でした!
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