シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

類似映画も紹介。殺人者の記憶法。新しい記憶も。

殺人者の記憶法 新しい記憶(字幕版)

 

アルツハイマーににして、元連続殺人鬼という経歴をもつ主人公が、愛する娘のために、若い連続殺人鬼と対決する「殺人者の記憶法」。

この一文だけでも、設定に驚いてしまうところだと思いますが、特殊な設定をいかしながら描かれる本作品について、類似する映画も紹介しながら、感想を述べてみたいと思います。

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時系列

本作品のあらすじは前述したとおり、17年前にとある人物を殺した後、ぱったりと殺人をやめてしまった主人公ビョンスが、死体を運んでいた殺人鬼の車に激突することで動き出します。

主人公は、事故の後遺症によるアルツハイマーとなっており、記憶が抜け落ちてしまいます。

妄想も織り交ぜられてしまっており、視聴者からすると、何がなんだかわからなくなってくる面白さがあります。

記憶が保持できない主人公で有名な作品といえば、クリストファー・ノーラン監督による「メメント」は、「殺人者の記憶法」を気に入った方であればオススメできる作品です。

妻を殺されてしまったことと、頭部にダメージを受けたことで10分間しか記憶を保持できなくなってしまった主人公の物語となっており、記憶を失いながらも自分の妻を殺した犯人を追っていきます。

物語が終わりから、始まりに向かっていくという特殊なつくりも面白く、DVD版の特典には、時系列でみることができる特典もあります。


殺人者の記憶法」は、「メメント」よりは見やすいつくりとなっており、自分の記憶が失われながらも、娘を守ろうとする父親の姿を描きます。

殺人の習慣

ビョンスは、動物病院の医者だったりします。

アルツハイマーではあるものの、技術はしっかりと身についていると劇中で語っていますが、すでに投与を終えている猫に再度薬を注射してしまい、薬物過剰により殺してしまいます。

習慣は残るけれど、やがて、殺人者だったときの記憶だけが残ってしまったとき、娘を自分で殺してしまうかもしれない、という恐怖の中で、彼は動き出します。


ミステリーものとかで、追いつめられた人間が、「もしかしたら、自分が無意識で殺人をしてしまったのかもしれない」

といった恐怖を抱くときがありますが、本作品は、記憶を失っている人間の、本当に知らないところで犯罪を犯してしまっているかもしれない、という恐怖も描かれているのがポイントです。

面白さ

「アニキ、俺の名前は」

といって、ビョンスに話しかけるのが、警察署の所長です。

17年前から禁煙をしており、通っていたタバコ屋の娘が殺されたことをきっかけに、犯人を逮捕するまでは煙草を吸わないという人物です。

死亡フラグたっぷりではありますが、そういった演出は万国共通なんだと思わされます。


若い連続殺人鬼であるテジュという男を殺すため、ビョンスが握力を鍛えるけれど、相手は若くて体力があるから道具に頼ろうとするところは、泣けます。


記憶は保持できず、現役の殺人鬼だったときのように体力があるわけでもない。

そんな、限定された状況の中で、警察官であるデジュをどうやって倒していくのかが見どころです。

 

時々主人公は、妄想にとらわれることがあります。

その結果、自分で、自分の娘を危険にさらすことになってしまうのですが、アルツハイマーである主人公の気持ちに寄り添える内容となっています。

類似映画

メメント」もそうですが、その妄想と現実の区別がつかなかったりする中で、大変なことになっていく、という映画の代表としては、「ファイトクラブ」をおいてほかにないでしょう。

ネタバレになってしまいますが、本作品はネタバレしたところで色あせないので、気になる方はお気をつけください。


ファイトクラブ」は、デヴィット・フィンチャー監督による傑作映画です。

不眠症に悩み、IKEAのおしゃれな家具を集めるぐらいしか趣味のない男が、たまたま偶然飛行機で乗り合わせた男と出会い、殴り合いによって生きている実感をもつようになっていく物語です。

自分が見たり聞いたりしていることが、他人からは、実はどうみえているのかというネタ晴らしであるとかは、驚いてしまうところです。


殺人者の記憶法」も、重要なポイントではないにしても、妄想とあいまった中で驚かせてくれるところです。

 

新しい記憶について

認知症だとパズルのように記憶を組み替える」

「新しい記憶」のほうで語られる言葉ですが、「殺人者の記憶法 新しい記憶」は、オリジナル版の再編集ダイジェスト版だと思ってみたほうがいいと思われます。

いきなり見てしまうと、ちょっと物足りなくなってしまうと思いますので、あくまで、オリジナル版が気に入った方が補完的にみるのがオススメです。


「記憶を信じるな」

 

最終的には、誰かの記憶として記録されている本作品は、どれが本当なのかはわかりません。

ビョンスが殺人をしていたのか、誰が生きていたかさえわかりません。

オリジナル版では、見事に娘を助け出す父親にビョンスはなりますが、「新しい記憶」では、主人公が都合よく記憶を改ざんしたにすぎない、ということを示唆しています。

人は、自分のみたいものしかみないようにできています。


アルツハイマーであるという設定そのものが、信用できない語りてとしての効果を発揮しつつ、物語の時系列を入れ替えることで物語そのものもかえていく、という面白い効果の作品となっています。


ちなみに、アカデミー賞もとった「アメリカン・ビューティー」は、もともと裁判ものだったそうです。

それを、編集をすることによってまったく別の物語にしてしまったとのこと。

映画にしても、人間の記憶にしても、どのように入れ替えるかで印象が変わる。

そんな映画が根源的に持つ魅力を作品としてみせてくれているのが「殺人者の記憶法」と「殺人者の記憶法 新しい記憶」となっております。


以上、類似映画も紹介。殺人者の記憶法でした!

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