シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

15分間の悲劇。感想。クライングフリーセックス

Climb

 世の中には、いろいろな映画が存在するわけですが、「クライングフリーセックス」は、15分という短編映画ながら、映画館で上映までされた、というかなり異色の作品となっています。
15分という短い作品ではありますが、続編が制作される(ただし、本当につくられるのかはわかりません)という話もありますので、簡単に紹介してみたいと思います。

 

 

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合体!

本作品は、組織に潜入中の男コブラが、相棒であるナオミと性行為をしている最中に、分離ができなくなってしまい、行為をしたまま戦いを続けるいわゆるコメディ映画となっています。

B級映画を超えるZ級といってもいい映画ではあるものの、監督がいうように「中学生や高校生のときに考えてきたアイデアをひっぱりだしてきた」というだけだって、思春期の中学生が考えた設定が大真面目に行われているところに面白さがあります。

この作品、設定だけで見る気をなくすかと思いますが、この映画の面白いところは、本編が15分に対して、インタビューが25分と、本編より長いところが特徴です。

本編とインタビューは別々になっていますが、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の常連である岩崎監督が、大真面目に本作品について語っているところがまたすごいです。
言い方を悪くすれば、バカバカしい映画にもかかわらず、監督が誰よりも真面目であることに心が打たれてしまうところです。

思い出す映画

15分の映画ですので、内容そのものは本編をみていただきたいと思いますが、本作品をみて思い出される映画としては、大林信彦監督の作品群ではないでしょうか。
「転校生」「時をかける少女」「野のなななのか」でお馴染みの大御所監督であります。

見たことある人ない人いるかとは思いますが、大林監督の演出で面白いのは、わざとらしいようなCG演出であったりするところです。
映画をあまり見たことがない人であれば、たんにへたくそだな、と思ってしまう演出ですが、ほかにはない味があります。

「クライングフリーセックス」は、ほぼ全裸で戦っていますので、日本の街中では撮影できません。
監督もそこは悔しかったとインタビューで語っていますが、その結果、必要のない場面まで合成した背景で戦いが繰り広げられることになってしまっています。
カーチェイスもCG。
銃撃戦もCG。
焚火の炎までCGになっていて、「その炎を超えてこい!」とコブラが、ギドラに言われるあたりは、失笑するしかないところです。

また、考えすぎかもしれませんが、ガンアクションでは、「マトリックス」であるとか、ガン=カタでお馴染み「リベリオン」だったりを思い出すところでしょうか。

たしかに、一見チープな画面に見えますが、想像の羽を広げることのできる味な演出に仕上がっているところは見逃せないポイントです。

これはコメディ。

第一前提としてですが、この映画はお色気コメディとしてみると拍子抜けします。
もちろん、そんな人はごく少数だとは思いますが、本作品は、大真面目につくっているのに、笑ってしまう、というところに稀少性があると思います。

出演している人たちも、この映画とまじめに向き合っており、出演者の誰しもが役作りで行ったことを「体を鍛えるために筋トレをした」とか「マイケルさんに録音してもらった英語を必死に覚えた」といったところになっているのが、役作りとはいったいどういうことなのか、根本を考えさせられるツッコミどころ満載の映画です。
 

低予算でも面白い。

低予算で、一見チープにもかかわらず、ヒットをとばした作品として「カメラを止めるな!」を思い出す人もいるのではないでしょうか。
カメラを止めるなについても、ほぼ無名の出演者たちが、映画をつくる、という一つの目標にむかってまじめに映画をつくっていく、という作品でした。
「クライングフリーセックス」は、誤解されやすいところではありますが、まじめに、そして、限られた状況の中で最大限努力をしようとした映画となっています。
続編の制作も進んでいる(クラウドファンディングでは目標額に届かなかったそうですが)、という話ですので、もしかしたら、15分の短編をパイロット版とした、本当の「クライングフリーセックス」がみられる日がくるかもしれません。

以上、「15分の悲劇。クライングフリーセックス」でした!

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