シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

GAFAの勢いは止まらない。グーグルに入りたい人は必見 映画「インターンシップ」

インターンシップ (字幕版)

もはや、グーグルという企業を知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。
 
検索エンジンから始まった会社は、いまや世界中で使われ、我々にとっては必要不可欠な存在になっています。
インフラといっても過言ではないグーグルという会社についての紹介映画であり、コメディ映画としても面白い本作品について、感想と解説をしてみたいと思います。
 

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おっさんの逆転劇

主人公であるビリーとニックは、高級時計の営業マンとして働いていた男たちです。
しかし、多くの人が時間を腕時計ではなくスマホでみるようになってしまったために会社が倒産。
失業した彼らは、次の職にgoogleを定めて、インターンシップを利用することを思いつきます。

物語の構造そのものは、コンピューターよりも自分の言葉や人間力を信じるおっさん二人が、コミュニケーションが苦手な若者とチームを組んで、見事にグーグルへの入社を果たすというサクセスストーリーとなっています。
 
内容自体は奇抜ではありませんが、「インターンシップ」は、googleによる全面協力によってつくられている映画という点が、よくあるおっさんによる若者教育映画とは一線を画しているところです。

さて、googleに入社するための問題というのがあるのですが、ざっくりと解説してみたいと思います。
 

面接のやり取り

ビリーとニックは面接で、自分がミキサーに入るぐらい小さくなってしまったとして、どうする?という質問をされます。
 
この手の問題は、色々な企業ではやった入社試験の一例です。
一見、荒唐無稽な質問をすることによって、それをどのように論理的に解決するか、というところを見極める試験になっています。
近年は、このような試験はもうされていないようではありますが、2013年公開当時は、驚くべきテスト内容だったといえましょう。

ちなみに、正解の一例としては、ただ小さくなるだけであれば体重がかわらないということになるため、何もせずにいるのが正解といったもの。
または、小さくなっているだけなのでジャンプ力はそのままであることから、ジャンプしてミキサーから抜け出す、といったものがあるそうです。
あくまで、どんな受け答えをして、論理的に不可能を可能にするか、ということが求められている試験になっています。

ビリーとニックは、営業で培ったトーク力でうやむやにしてしまいます。
論理というよりは、勢いですね。
実は、グーグル社員が、この圧倒的なおっさんたちに気おされてしまった、ということもであるとは思います。
 
さて、「インターンシップ」では、乗り継ぎテストがメインの話となっていきます。
 

乗り継ぎテストとは

グーグルという会社で面白いのは、嫌な奴は入社させない、という考えです。
「グーグルは、多様性が大事」
ということが劇中でも言われていますが、多様性よりも大事なのは、乗り継ぎテストの結果です。
乗り継ぎテストは、平たく言いますと、飛行機の乗り継ぎのときに、隣にいてほしいやつを選ぶ、というものです。
どんなに仕事ができるやつだとしても、嫌みなやつと飛行機を一緒に待つのは嫌ですよね。

インターンシップの中で試験されているのは、大前提として能力も大事ですが、一緒にいてもいいやつ、というが大事な基準となっているため、物語にでてくるやつの大半はその時点でアウトといえるところが皮肉です。


おっさんと若者

内容そのものはよくできたコメディとなっています。

世代間のギャップをつかった演出がされており、特に、ITの知識があまりないビリーとニックは、ノリとトーク力で乗り越えようとするのが痛々しくも面白いです。

若者たちは、実は主人公たちよりも能力はあるのですが、いろいろと問題をかかえています。

ザコンだったり、目の前の現実ではなくスマホばかりをみていたり、耳年増で背伸びをしてみたりしながら、主人公たちをバカにしています。

ですが、主人公たちの熱い想いによって変わっていきます。

ちょっと、説教臭い部分もありますが、基本的には面白い映画になっています。

その団結のときに、古いネタをふってくるのも、面白いところです。

映画ネタ

インターンシップ」は映画ネタをちょこちょことかましてきます。
コンピューターなどの時代になっていることに対して、ターミネーターのことをもちだしてきたりしますし、車いすの教授がXメンネタをだしてきたりします。

 

X-MEN (吹替版)

X-MEN (吹替版)

 

 

チームに一体感が生まれることになったきっかけとして、ハリーポッターにでてくるクィディッチが行われてみたりもします。
クィディッチについては、実際に競技として行っているという実態があるので、映画ならでわのネタというわけではありませんが、それを全力でやりながら、ビリーとニックは、フラッシュダンスについて語りだすのです。

フラッシュダンスといえば、ミュージックビデオ風の映画が作成されるようになったきっかけの一つともいえる作品であり、女性の力強くいきる姿が多くの人に共感された作品でもあります。

製鉄所で働きながら、プロのダンサーを目指すアレックスが、自分の生活や苦労したことをダンスに取入れながら成功していくまでの姿を描きます。
インターンシップ」の主人公であるビリーとニックは、学のある人物ではありません。
インターンシップでグーグルにきたものの、まわりの学生たちは優秀な大学に在籍している人たちばかりです。

フラッシュダンス」のアレックスもまた、有名なバレエ学校に通っているようなエリートな人たちを後目に、泥臭いながらも水しぶきをうまくつかったりしながら、ダンスを編み出していく姿は、本作品とも重なるところです。
音楽も聞いたことのある人が多いと思いますので、本作品で気になった方はぜひおすすめしたいところです。

 

フラッシュダンス (字幕版)

フラッシュダンス (字幕版)

 

 

グーグル紹介

あと、何より本作品で見るべきところは、グーグル社内でしょう。

実際の本社がつかわれているだけあって、そのグーグルの特異性がよくわかります。

食堂は何もかもが無料になっていたり、中には滑り台があったりします。
遊び心を大切にする会社でもありますし、20パーセントは本業以外のことに費やすといったルールがあったりと、何か新しいことをやろうとしている会社であるということがわかります。

ただ、本作品でちょっとだけ嘘がある点があるとすれば、それは、グーグルの外に飲みに行くところぐらいでしょうか。

グーグルは、自分のところですべてのことが完結することが望ましいと考えているのです。
もし、会社の外で飲んでいて、ほかの人にヘッドハンティングされてしまったらどうなるでしょうか。
あるいは、アイデアが盗まれてしまったら危険じゃないでしょうか。

つまり、あらゆる危険を排除するために、グーグルで遊んでいてもらったほうがいいのです。

「会社にいるから、いい店とかわからないわ」
と、ダナという女性はいいますが、ある意味においては彼女の生き方は正解です。

ちょっと、堅苦しい部分については、ビリーとニックがぼかしてくれるのが、ちょうどいいところといえるでしょう。
 

アナログとデジタル

映画「インターンシップ」のよいところは、おっさんだからいい、とか若者だからダメ、といっているわけでもなく、新しいからいい、古いからダメ、といっているわけでもないところです。

GAFAとよばれる、巨大企業の台頭によってたしかに便利な世の中になっています。

ですが、それが絶対である、という風にしていない点はよい映画の匙加減となっています。
 
空を見上げて
「星座を指したり、あれが満月だよってね。冥王星だよとか。でも、今はネットで事実確認、グーグルのおかげで嘘がつけなくなった」

たしかに、便利な世の中にはなりましたが、便利すぎることによる弊害もにおわせているのです。
 

グーグルに入るために大切なこと

インターンシップ」は、グーグルという会社を知ることにうってつけの作品となっています。

乗り継ぎテストもそうです。
話しよると、グーグルの人たちは、本当にいい人ばかりだそうです。まぁ、一緒にいて嫌な人がいないんですから、基本的にいい人しか残らないのは当然と言えなくもありません。

劇中で重要な言葉が言われます。

それは、「グーグリネス」  という言葉です。
いわば、グーグル的とでもいいましょうか。
グーグルは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を経営理念に掲げています。

グーグルがグーグル足りえたのも、グーグリネスという言葉に沿うのであれば、あらゆるものを実践してきたからといえるでしょう。
 
経営理念のことをグーグリネスといっているのではなく、社員が共通意識ともっているグーグリネスという概念を共有できているか、といったところでしょうか。

インターンシップ」は、ITによって職を奪われた主人公たちが、新たな場所をグーグルに見つけるという作品になっている点になっているだけではなく、グーグルが求めるものを提示している作品にもなっています。

ただ、同時に、グーグルが拡大することによって失われていくものもある、という現実も暗に描いてしまっているのもまた皮肉な作品となっているところです。
 
地元でしか展開していなかったピザ屋が、ビリーとニックによって広告許可をだす、という感動的な場面があります。
 
でも、考えてみればこれもまたグーグルによって破壊される物事でもあるのです。
この店が繁栄するかもしれませんが、一方でどこかのピザ屋がつぶれるかもしれないのですから。

以上、GAFAの勢いは止まらない。グーグルに入りたい人は必見 映画「インターンシップ」でした!
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