シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ミニオンはついていく/怪盗グルーの月泥棒

怪盗グルーの月泥棒 (吹替版)

 

「怪盗グルーの月泥棒」は、ユニバーサル・ピクチャーズ初の配給となる3Dアニメ作品です。

何はなくとも注目されるのは、主人公である怪盗グルーよりも、黄色くて愛らしいキャラクターであるミニオン達ではないでしょうか。

映画館のCM中にも時々出演してきて気になる彼らですが、その初登場となる「怪盗グルーと月泥棒」について、どんな内容のものだったのかを、解説してみたいと思います。

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悪い僕

主人公は、悪党の中の悪党、悪党エリートのグルーです。

オープニングから、泣いている子供がいればわざと希望を与えた上で、その希望を奪ってみせたり、自分勝手な振る舞いをしたりしており、決して、性格がいい主人公とはいえません。

ある日、ピラミッドが盗まれていたことがニュースで報道され、なぜか、周りの人間は「あんたが盗んだんだろ」といってきますが、彼がやったのではありません。

そのせいもあって、彼は「俺はもっとデカイことやるんだ」といって別の計画を立てようとします。


ここから判るのは、主人公は少なくともかつては、大きなことを成し遂げたことのある大泥棒?なのでしょうが、現在は、下り坂にきていることが徐々に明らかになっていきます。


そして、「怪盗グルーの月泥棒」は、悪党を気取っている主人公が、徐々に自分の中にあるやさしさに気づいていく物語となっています。

 

世代交代


主人公は、ピラミッドより大きなものを盗もうとして、月を盗むことを宣言します。


この世界はなぜかよくわかりませんが、悪事をすると儲けることができるようで、グルーは、悪の銀行に融資を受けにいきます。


月に行くためにはロケットが必要で、そのロケットを作るにはお金がいるから融資を受けようとするのですが、計画の実効性を疑われてしまいます。


「縮ませ光線銃」なるものがあれば、あらゆるものを縮ませることができるため、彼はそれを盗みだそうとしますが、ベクターという若い悪党に奪われてしまいます。


融資を受けようとする際にも「近頃の新しい悪党は、君よりも若く貪欲だ。ピラミッドも盗んだ」と言われ、グルーも意気消沈してしまうのです。


盛りを過ぎた泥棒VS若き泥棒の戦いというところも匂わせています。

使っている機械一つとっても、グルーの乗り物は昔の戦闘機のような形や色をしていますが、若き泥棒のベクターは未来ちっくなおしゃれな飛行機に乗っています。 

 「我々は、若い悪党に融資することにした」

ミニオン

さて、この作品を気になってみたという方の動機のひとつとして、黄色くてかわいらしいミニオンズたちの存在が大きいのではないでしょうか。


グルーの屋敷の地下でほそぼそとメカを作ったりしている謎の生物です。


彼らは、それぞれに個性があり、決して死なず、ボスのために尽くす存在です。

底抜けに明るく前向きで、ちょっと、おっちょこちょいなところもありますが決して憎めません。


ミニオンたちを主人公にしたスピンオフ作品「ミニオンズ」も、気になった方はみていただきたいと思いますが、本作品でミニオンたちは登場します。

 

cinematoblog.hatenablog.com

 

劇中では、一切説明されません。

「彼らは何者?」

「俺のいとこだ」


と、適当に説明をされてしまって終わりです。


この黄色くて可愛らしいミニオンたちの明るさが、物語全体の不思議な面白さにつながっていることは間違いありません。

とにかく彼らは明るく、楽しいものが大好きです。

 

3人の養女

「怪盗グルーの月泥棒」は、複雑な物語ではありません。


正直、よくある話を繋げただけの話しであり、話しそのものにも決して整合性があるようにはみえません。

ですが、ミニオンズたちの活躍と、グルーという悪党にもかかわらず、子供達の父親になっていく、純粋な主人公の成長物語と見ることで、王道の物語として楽しむことができます。


グルーは、ベクターという若い泥棒から、自分が盗もうとしていた「縮ませ銃」を奪うため、孤児院の仕事としてクッキーを売って歩いていた3人の女の子を養女にします。


ここで重要なのは、グルーという男は自分のことしか考えていないということです。

ずっと養父母を待っている子供達の気持ちなど考えていないのです。

とにかくクッキー形のロボットをベクターの家に潜入させるために、子供達を使おうとしているだけです。

なんで、そこでクッキーをすりかえたりするだけにしないで、彼女達を養女にする必要まであったのかは甚だ謎なところです。

 

ですが、主人公は正当な手続きを踏んで養女として迎え入れます。

養女たちは、もちまえの明るさで主人公をふりまわし、もともと愛情に飢えていたグルーは、次第に彼女達に心を開いていってしまうのです。


特に一番小さなマーゴは、彼に「ベッドサイドストーリーを読んでくれないと眠れないわ」と言ってグルーを困らせます。

「物語を読んで」

「ノー!」

といいながらも、グルーは、彼女達の要求を飲み、家の中はむちゃくちゃになっていきます。

彼女達もまた、はじめこそ気味悪がっていましたが、グルーの心の優しさに心を開いていくのです。

 

王道のピカレスクロマン

主人公が月を盗もうとする理由も、それを実現するための手段も、なぜそれをたまたま若き泥棒が盗んだのかも(父親に情報をリークされていたのかもしれませんが)、正直あまり意味がないように思えます。

ただ、この作品を楽しくみていられる理由は、怪盗グルーという主人公の心優しさにだんだんと気づいていけるからだと思われます。

実の母親ですら「ピラミッド泥棒おめでとう。ピラミッドを盗んだのは、あんただろ」という始末。

彼らの世界では、大きなものを盗んだり悪事を働くのはいいことなのです。

3人の養女を通して、だんだんとそのやさしさに気づき、やがて、彼女達のバレエの発表会にいくべきか、月を盗みに行くのを延期するべきかで悩んでしまうほどです。

 

グルーは純粋な心を持った人です。

遊園地で、決して景品が取れないようになっている的屋に対して、本物の武器をつかって的を丸こげにしてしまうあたりなどは、大人そのものへの反抗にもなっているように見えます。

 

そして、グルーという男が、自分のことだけではなく、自分以外のことを大事にしようとしたのであり、愛情というものがどういう風に生まれていくかがわかる、子供向けとはいえ、大人がみても楽しめる作品となっています。


CGのできも非常にいいため、2010年に公開された映画だとしても、そん色なく見ることができます。

物語として冷静に考えると不思議な話しではありますが、感情面で考えると非常にいい物語となっていますので、ミニオンズが気になった人たちは、是非とも一作目を見返してみるのも面白いかもしれません。 

 


以上、ミニオンはついていく/怪盗グルーと月泥棒でした!

 

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