シネマトブログ

映画の評論・感想を紹介するサークル「ブヴァールとペキュシェ」によるブログです。不定期ですが必ず20:00に更新します

ロビン・ウィリアムズの代表作/ミセス・ダウト

 ミセス・ダウト (字幕版)

ロビン・ウィリアムズといえは、若くして亡くなってしまいましたが、その俳優としての存在感や、演技力についてはずば抜けたものがある個性派俳優です。


ガープの世界」「今を生きる」「フィッシャーキング」など、名だたる名作に出演した彼ですが、とりわけ有名であるのがクリス・コロンバス監督「ミセス・ダウト」です。

テレビのロードショー等でも何度も放送されており、見たことのある人も多いかと思われます。

ロビン・ウィリアムズ演技力と、当時の特殊メイクのすごさ、そして一人の男の成長を存分に味わうことができる作品である本作品の魅力について、語ってみたいと思います。

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ダメなオトコ

ロビン・ウィリアムズ演じる主人公は、父親としては最高の男ですが、夫としてはいまひとつな男です。

愛情に溢れていますし、声の演技力にかけてはずば抜けたものがあり、非常に魅力的な人物ですが、現代社会においては生きずらい人でもあります。


子供ができて大人になるにつれて、妻のほうは定職につき、お金を稼がなければならないという現実に向き合い、一方で、夫である主人公は、愛情はあるけれどいつまでも子供のまま、という状態ですれ違っていったことが冒頭でわかります。


ちなみに、愛があれば大丈夫という男と、現実を知って夫を蔑んでいく映画の中では、ライアンゴズリングが主演の「ブルーバレインタイン」などが思い出されるところです。

若くてかっこよかった愛情溢れる旦那も、禿げ、自分のことをあまり女性として扱わなくなっていくにつれて、心が離れていく。

 

Blue Valentine

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ミセス・ダウト」もまた、子供への愛情は溢れていても、奥さんをないがしろにしてしまう男の悲しい性をもあらわした作品ともいえます。


愛だけでは生きていけない現実によって、ロビン・ウィリアムズ演じる主人公は奥さんに離婚されてしまい、なんとか子供達に会うために、家政婦に変装して乗り込むことになるのです。

ロビン・ウィリアムズ

ロビン・ウィリアムズといえば64歳に亡くなってしまいましたが、演技力とその特殊能力が面白い役者さんでした。

特に、初期の代表作の一つ「グットモーニング・ベトナム」では、冒頭のほうでものすごいマシンガントークでラジオのDJを務め、ジングルまで口で再現してしまう芸達者っぷりはそれだけで映画を見た甲斐があると思わせてくれます。

 

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ミセス・ダウト」でもその芸達者っぷりは発揮されており、冒頭で、いかにもなカートゥーンアニメの声をあてており、しかも、登場人物全員の声を使い分けています。


また、妻に変装した自分を最大限によく見せるために、非常に悪い家政婦として連絡するシーンがあります。

子供を虐待するのが当然だと思っている人、明らかに家庭環境が危険そうな人、英語すらできない人。

ろくでもない人しか家政婦の応募の電話をかけてこないということにうんざりしていたところに、非常に上品で優しげな、しかも、まともそうな英国夫人が家政婦になりたいと言ってきたら、もう、それに決めるしかないと思うのが人間心理でしょう。

そのあたりの、声の使い方も見事です。


さて、映画の内容に戻ってみたいと思います。

自分以外の人物になることで、成長する

主人公のダニエルは、先ほども書いた通り愛情に溢れた人物です。

人を楽しませることが好きですし、ユーモアたっぷりな人物ですが、一方で、非常に子供っぽい人でもあります。

そのため、子供の父親としてはいい部分もありますが、一緒になって遊ぶ悪がきのような感じになってしまっているのです。

奥さんと別れた原因の一つもそのあたりにあるのですが、彼はダウトファイア夫人として、友人の力によって変装します。


ミセス・ダウト」で面白いのは、父親として子供と接していた彼はダメな人間でしたが、家政婦として子供と接することで、遊ばせるだけではなく、勉強もしっかりさせ、怒るべきときは怒る、ということをやらざるえない、というところです。

英国の厳しさとやさしさを兼ね備えた家政婦を演じているうちに、彼は子供にとってどういうことが必要なのかを学んでいきます。

そして、

お茶をいれるときに、きちんとラベルを貼ってあったりと整理してあるのを見て、

「几帳面なのね。感心だわ」
と、お世辞を言うと

「主人は気づいてくれなかった」

と奥さんは嘆きます。

小さなことですが、彼は妻がどんな風に苦労していたのか。夫として何が足りなかったのかを、家政婦であるミセス・ダウトを通じて知り、そして成長していく、というところが本作品の面白いところとなっていきます。


そう、料理の一つもできなかった彼が、ミセスダウトという理想の家政婦になるために勉強し、家事をして、人間として成長していきます。

秘密がバレたあとは。

子供達との関係ははじめから良好です。

そのため、この映画は、子供達との関係ではなく、一人の男が、夫として、一人前の男としても成長することが本当の主題となっているのです。

はじめは、ミセスダウトとしての地位を確立するところに冒頭から1時間ほどを費やしますが、続いては、彼がミセスダウトとしてではなく、一人の人間として成長するパートに入っていきます。


妻とも非常に仲良くなり、自分達がどうしてダメになってしまったのか、その理由もわかります。

「ロマンティックで情熱的な旦那。でも、夫は一つの職に長くつけない。私はいつも怒ってばかりいて、そんな自分が嫌になるの」

妻に新しく出来たボーイフレンドとの仲をなんとかやめさせようとすることと、自分が勤めているテレビ会社の社長に気に入られて、食事を一緒にする機会を得ますが、ミセス・ダウトとしての用事とも一致してしまい、とここからは、よくあるコメディ展開となっていきます。


そして、最悪なタイミングで、自分が変装していることに気づかれてしまうのです。


結局、裁判によって子供達と会うこともできなくなり、最悪の状態になってしまいます。


彼は、再び子供達の前に立つことができるのか。


「でも、愛があればみんな結ばれているの」

この物語は、単なるコメディというだけではなく、その中にある夫婦のあり方、家族の在り方も含めた中で伝えており、変装した家政婦のドタバタコメディでありながら深い愛の物語となっている傑作です。

何度みても気づきのある作品ですので、コメディ映画の中でも特にオススメの作品です。

 

以上、ロビン・ウィリアムズの代表作/ミセス・ダウトでした!

 

 

 

 

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