受験生は必見の映画。有村架純主演/映画「ビリギャル」
成績というのは、なかなかよくならないものです。
あがるのも一朝一夕であれば、下がるのもまた一朝一夕です。
受験生にとっては、どうやって受験へのモチベーションを保つかというのが重要なところですし、受験生がいる親からしても、その姿勢というのは非常に重要となってきます。
今回は、学年でビリのギャルが、慶應義塾大学へ行った、という話題性と共にヒットした作品「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」という長いタイトルの作品について、多少日本映画的な過剰演技などはありますが、脚本のできもよく、主演である有村架純の演技も素晴らしいことから、原作のことは一旦置いておいて、映画「ビリギャル」の魅力について考えてみます。
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これを見れば、受験生の人も、受験が近い人、身近に受験生がいる人も、何をするべきかわかるかも、しれません。
ビリギャルの成長物語
映画版「ビリギャル」は、有村架純演じるさやかが、伊藤淳史演じる塾講師坪田によって、成績をあげて、見事慶応義塾大学に合格するまでを描く作品です。
さやかは、小学生の時にちょっとしたいじめにあって、転校し、その先でもうまくいかなかったために、お嬢様学校に入ることになります。
友達がいなかった彼女は、中学校で出合ったギャルな友達に感化されて、どんどんギャルを強めていき、進学校である名古屋のお嬢様学校に入学した実力をもちながら、結果として、頭が悪くなってしまい、学校の問題児のようになっていってしまいます。
ただし、有村架純演じるさやかという女の子は、非常に優しい心と、強い心をもっています。
理由はわかりませんが、カバンの中からタバコを見つけられ、先生に尋問されるシーンで、
「他にタバコを吸っていたやつを教えたら、停学にはしないでおいてやる」
という、教育者としてはあるまじき取引をもちかけられます。
ですが、彼女は最後までその相手のことはいわず、無期停学になってしまいます。
停学になったら、エスカレーター式の大学進学は難しくなってしまうため、母親は「塾にいったらどうかしら」と薦めてくるのです。
坪田先生の教育方針
伊藤淳史演じる坪田先生は、子別指導(個別ではなく)をうたっています。
坪田先生のエピソードは省きますが、子供はそれぞれ興味も学力も違うのだから、その子供に合わせた指導をしなければならない、という考えのもと運営されています。
先生も色々背負うものがあるというエピソードはありますが、そのことよりも、彼の教育は、漫画が好きなら漫画にたとえて話す、ゲームが好きならゲームにあわせる、その柔軟性にこそポイントがあります。
さやかと共に一緒に入ってくる男の子がいますが、これもまた、もう一人のビリギャル男として機能しています。
母親に無理やりつれてきたギャル男は、父親に反抗して勉強をしようとしませんでした。
ですが、坪田先生に「マリオがピーチ姫を助けにきたのに、目の前でマリオがそのまま帰っていってしまったら、ピーチ姫はどう思うだろうか。それって残酷じゃない?」といわれ、父親への復讐として勉強をはじめます。
彼が、もう一人の彼女でもあるというのがポイントです。
劇中の中では、恋愛関係になることはなく、きっぱりと受験に向き合う姿もまた教育的で素晴らしいです。
この映画は、恋愛映画全盛の邦画の中で、恋愛ではなく、知識によってどのようにして世の中と向き合っていくかを教えてくれるところがポイントなのです。
また、ギャルとして金髪にして、ヘソだしの格好、化粧もがっつり塗った有村架純が、先生との勉強を通して、やがて、派手な格好をやめていく、というのも象徴的です。
「罰として、右のつけマツゲも禁止」
「ファンデも禁止されたし、さやか、どんどんブサイクになってくんだけど」
うまく先生にのせられて、化粧とかまわりとかではなく、自分のために勉強をしていく姿は、大変胸にこみ上げてくるものがあります。
挫折を描く
受験勉強は、簡単ではありません。
小学4年生の実力しかなかったさやかが、どんどん学力を伸ばしていきますが、当然、壁にもぶちあたります。
「さやかがケーオーとかちょうウケル」
といっていたさやかが、勉強することで、自分が目指しているものがいかに大きな目標だったのかわかっていくところもよくできています。
知性がなかった彼女は、知性をもつことによって、物事の大変さがわかってくるのです。もし、勉強もしないままの彼女であったら、永遠に物事の大きさは把握できないまま受験に失敗していたことでしょう。
彼女が成長することで、元気がなくなっていくのが辛いところですが、でも、それが、たんなる子供だった彼女を大人にしていく、というところが素晴らしいのです。
ちゃんと彼女は挫折し、その中で、母親がどれだけの苦労をして塾にいかせてくれているか、その重みの中で成長していきます。
その一方で、彼女のがんばりによって、救われる人たちもまたいるのです。
孟母三遷の教え
この映画の母親である、ああちゃんは、正直いい母親かどうかというのは疑問です。
主人公の母親は、過保護なところがあります。
小学生のさやかが、同級生のボールか何かを投げられて、ケガをします。
たしかにそのようなことは問題ですが、母親は「さやちゃん、転校しましょう」といってくるのです。
いじめはたしかに問題ですが、少なくとも映画の冒頭の段階では、いじめが深刻なレベルではないと思われます。にも関わらず、母親はさやかを転校させ、当然のごとく、さやかは友達ができません。
「あの制服かわいいね」
と言ったさやかの言葉をきいて、「ねぇ。じゃあ受けてみる?明蘭女子中。さやかがわくわくすることだけしていればいいの」といって、子供をお嬢様学校にいれてしまうところなども、さすがです。
「子供には、わくわくして欲しいんです」
わくわくさせた結果、さやかの頭は悪くなってしまうのが残念なところですが、結果として、彼女は小学生時代の暗いさやかから、不安などを押し隠しながらも、友達がいて明るいさやかになったのです。
そして、学校から「人間のくずだ」といわれ、娘を塾へと通わせるのです。
「受験して、他の大学に入ろうよ」
突然ですが、中国の思想家、孟子の母親は教育熱心で有名です。
息子の教育環境が悪いといって、住む家を三度変えたことから、「孟母三遷の教え」という故事は聞いたことがあると思われます。
ビリギャルの母もまた、娘に勉強する環境を3度もかえ、結果として成功するのです。
ですが、彼女自身もまた完全ではありません。
彼女は、自分の夫に対して頭があがりません。
さやか以外にも息子と娘がいますが、息子については父親にとられてしまい、「息子をプロ野球選手にするんだ」という夫にさからうことができません。
彼女は、夫に支配されている自分や、まわりに流される自分がいやで、さやかのために一生懸命になります。
ですが、彼女は娘のために頑張り、やがて、娘が頑張る姿を見ることで、自分自身を見つめなおし、夫に対してもものを言えるように、かわっていくのです。
さやかが通う青峰塾は、すごく高いです。
ですが、母は、パートを増やし、SAGAWAでバイトをしてお金を稼ぎます。
それを全て娘のために費やすという点で、母親というのは業の強い存在なのだということもわかります。

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親の期待で潰れるもの
さて、この映画は、親が一生懸命愛情をかければ、子供は成長できるのだ、という話、だけではありません。
母親と娘で頑張っていた家庭の中で、父と息子でねじまがってしまった例も描かれます。
慶應義塾大学にはいって、プロ野球選手にもなることが夢だった、さやかの父親は、息子に夢を託します。
自動車の販売・整備の工場を運営し、忙しい毎日の中で息子をプロ野球選手にするために頑張るのです。
ですが、プロの世界は厳しい。
結果が伴わないことが当たり前の世界です。
息子はやがて、練習についていけなくなり、親の期待にこたえることができなくなります。
ギャル男が塾にはいる際のやり取りがわかりやすいのですが、
「やればできる子なんです」
「お母さん、やればできるというのもよくないんですよ。やってもできなかったら、自分の無能を証明することになっちゃいますから。ますますやらなくなってしまいます」
と、注意する場面がありますが、父親は、まさにこの悪い例を実践しています。
やがて、やってもできなかった息子は、挫折するのです。
「俺、野球部やめたんだ」
「おま、何をバカなことを」
ぐれてしまう息子にどうしようもなくなってしまいます。
千日行
話しは大きく脱線しますが、比叡山で行われる千日回峰行というものがあります。これは、奈良県・大峯山の48kmの山道を1日48km、16時間かけて1,000日間毎日歩き続け、それが終わると9日間、飲まない、食べない、寝ない、横にならないという苦行です。
どうして、そんなことをやるのか。
細かいことは別途調べていただくとして、そのとんでもないことをやることで、その姿によって希望を持つ人がいるからです。
すごいことをやっている人を知ることで、勇気付けられる人がいる。
誰かが頑張る姿は、必ず誰かの胸をうちます。
さやかもまた、絶対に不可能とまわりが言っている中、安田顕演じる教師は「お前が慶應に合格したらどうすんの」と言われて「全裸になって、校内一周してやる」とまで言うのです。
ですが、その行動は、母親をかえ、母親の熱意や彼女の自身の頑張りによって教師をかえ、ファッションにしか興味がなかった学友たちをかえ、父親の心もかえていきます。
何かを頑張ることがいかに大切であるか、ということを映画の中でしっかり伝えられているという点においても、非常に素晴らしい作品です。
学問のススメ
「諭吉くんはさ、生きるために学問をすすめたんだよね。人生にはいろんな困難が必ずあるし、それをなんとかするには、逃げずに立ち向かうしかないんだよね」
何も知らなかったさやかが、蟹工船を読んで、プロレタリアートについて語り、ニュースを自発的にみてブラック企業による労働問題について語ります。
化粧と服にしか興味がなかったさやかが大きく変わります。
慶應義塾大学には、坪田先生が勝手に決めた目標でしたが、福沢諭吉という人物がどうして慶応義塾をつくったのか、何のために勉強をするのか、ということに対して、ちゃんと答えを提示しているところが素晴らしいです。
映画「ビリギャル」は、出来損ないの人物が、努力によって成功をつかむ、というよくある物語の構図ではあるのですが、現代社会における家族の問題や、何かに挑戦することの大変さ、この世の中の中で、何をすることが自分にとって大切なことなのかを教えてくれる、非常に優れた映画となっています。
「へぇ。知識って魔法みたいだね」
「知れば知るほど、発想もひろがるんだ。慶應にいけばもっと発想も広がって、可能性も広がるぞ」
一応、原作と同じく主人公は慶応義塾大学に合格します。
ですが、別の部分で失敗し一度は、ダメだと覚悟するのです。まわりの人間もそれに対して、どうしたらいいかと思うのですが、夢が破れたとしても、どうしていくべきか、ということも物語の中で提示されています。
前半部分は、何も知らないコメディな物語を楽しみ、後半は、挫折と努力の中で成長する人たちを見ることができる良質の作品ですので、どうして勉強しているのかわからなくなりそうな人、自分が何をするべきか迷っている人などは、映画「ビリギャル」をみることで、学ぶことができるかもしれません。
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以上、受験生は必見の映画。有村架純主演/映画「ビリギャル」でした!